9月16日、The Next Webが「UK workers spend nearly £1bn a year of their own money on AI tools for work, Deloitte finds」と題した記事を公開した。英国の労働者が年間約9億5800万ポンド(約1800億円)を自腹でAIツールに費やしているというDeloitteの調査結果を報じたもので、約3人に1人が職場に知らせないまま使っている実態が明らかになっている。
3人に1人が「会社に隠れて」使っている
この調査でまず目を引くのが、いわゆる「シャドーAI」の実態だ。シャドーAIとは、IT部門や経営層の承認を経ずに従業員が独自に導入・使用するAIツールを指す概念で、企業のIT管理外で普及するソフトウェア全般を指す「シャドーIT」から派生した言葉だ。
Deloitte UKが18〜70歳の就労成人2万5000人を対象に実施した調査によると、63%が業務で生成AIを意識的に使っており、約4分の1が毎日利用している。しかしそのうち31%が会社に知られずに使っていると回答した。
さらに深刻なのが心理的な障壁だ。23%がAI利用に職場での「スティグマ(偏見)」を感じている。週次利用者に限ると、64%が「マネージャーにAIで仕事を代替されると思われるかもしれない」と心配している。使うことを隠す動機が、まさにここにある。
Deloitte UKのチーフAIオフィサーであるHayley McKelvey氏は、スティグマを感じている人ほど利用を隠す傾向があるとし、リーダーは明確な目標と責任ある利用方針を示すべきだと指摘している。
自腹でAIを買う労働者たち
隠れて使うだけでなく、自ら費用を負担するケースも多い。AIツールを使っている人のうち、17%が少なくとも1つのツールを自分で購入しており、その総額が年間約9億5800万ポンドに達している。
内訳を見ると、無料ツールを使う人が46%、会社が費用を負担しているツールを使う人が34%、社内開発ツールを使う人が17%だ。
なぜ自腹を切るのか。McKelvey氏はその理由を端的に述べている。労働者は「許可を待ちたくない」のだ。会社の承認プロセスを待つより、自分でサブスクを契約した方が早い、という判断が働いている。
企業側のサポートは不十分
調査はもう一つの問題を浮き彫りにしている。企業のAIリテラシー教育が追いついていないことだ。
- 生成AIを使う労働者の約半数が、安全な利用に関する正式なトレーニングを受けていない
- 65%が「経営層からのガイダンスがほとんどない」と回答
Deloitte UKのインダストリーインサイト責任者であるPaul Lee氏はこう述べている。
「ここで語られるべきことは、労働者が生成AIを使っているという事実ではない。限られたトレーニング、不十分なガイダンス、そして場合によっては会社に無断で使っているという実態だ」
Lee氏は、企業がアクセスを提供するだけでなく、明確なルールと目的のもとで使い方を教えることで初めて恩恵を得られると主張している。
使われ方は「地味」だが時間節約効果はある
実際の用途は派手なものではない。最も多い用途は情報検索とメール下書きがそれぞれ43%、次いで文書要約が31%だ。ユーザーの自己申告によれば、これらのツールで週平均約70分の時間を節約できているという(ただし調査で直接計測したわけではない)。
一方、米国のフィンテック企業Rampのデータによると、米国の雇用主がAIに費やすコストの中央値は従業員1人あたり月約11ドルにとどまっているという(※元記事が引用している比較データ)。労働者が自腹で払っている額と、企業が正式に投資している額のギャップは大きい。
なお、本調査はIpsos UKが2025年5月7日から6月10日にかけてオンラインで実施し、年齢・性別・就労状況・業種・地域で割り当てを設定、オフライン人口に合わせて結果を調整している。
詳細はUK workers spend nearly £1bn a year of their own money on AI tools for work, Deloitte findsを参照していただきたい。




