9月16日、Los Angeles Timesが「Inside Meta's custom AI chips slashing energy bills in data centers」と題した記事を公開した。Metaが独自開発したAI推論チップ「MTIA」をデータセンターへ大規模展開し、エネルギーコストと調達費用を抜本的に削減しようとする取り組みの詳細が明らかになった。Nvidiaへの依存を断ち切ることを明確な目標に掲げ、12ヶ月で1ギガワット超の展開にコミットするという、業界でも突出したスケールの内製化戦略だ。
NvidiaへのコストがGW規模になると「完全に許容できない」水準になる
Metaが独自AIチップを本格展開する最大の動機は、コスト構造の変化だ。同社のカスタムシリコンプログラムを統括するエンジニアリング担当VP・Yee Jiun Song氏は取材に対し、ギガワット単位の処理能力を積み上げていくと、チップのコストが決定的に重要になると語っている。
「トレーニングと推論の両方をこなすチップが30%高価になるなら、それは突然『完全に許容できない』水準になる」とSong氏は述べた。
この発言の背景として、Metaはかつて「Olympus」というコード名のチップを開発していた。トレーニング(AIモデルの学習フェーズ)と推論(モデルを実際に動かすフェーズ)の両方に対応する設計で、2028〜2029年の投入を目指していたが、コスト上の理由でプロジェクトをキャンセルした。現在は推論専用に絞っている。
注目すべき数字として、エネルギー消費量ベースで12ヶ月間に1ギガワット超のチップ展開をMetaはコミットしており、「その後は加速すると見込んでいる」とSong氏は語っている。
チップの製造はTSMC(台湾積体電路製造)、設計はBroadcomと協業しており、NvidiaのGPUへの依存を下げることが明確な狙いだ。
チップの世代と展開スケジュール
現在Metaが展開しているのは**MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)と呼ばれるチップファミリーの第3世代、MTIA 450(コード名:Arke)**だ。2023年に自社チップ開発を発表してから着実に世代を重ねてきた。
次世代のMTIA 500(コード名:Astrid)は約1ヶ月で設計を完了し、2027年末にデータセンターへの投入を予定している。MetaはAstridをさらに広く活用する計画だ。
初回の12枚が9月1日に到着、初日にDeepSeekモデルも動作
Arkeチップの最初のサンプル12枚が9月1日にTSMCからMetaに納品され、シミュレーション値との誤差は2〜3%以内という良好な結果を示した。
初日にはMetaの自社モデルに加え、**DeepSeekおよびAlibaba(阿里巴巴)のモデルも動作させることに成功**している。設計上の重大な問題(design snag)がないことを示す結果だが、量産に向けてまだ数ヶ月の調整作業が残っている。
このチップファミリー全体の特徴として、高帯域幅メモリ(HBM)への依存が高く、超低レイテンシの推論市場は対象外だ。
Song氏はこう表現している。「これは汎用推論に使うワークホースチップだ」
「Nvidiaが現在出荷しているものより効率がいい」
Song氏はAIモデルを動かす場面(推論フェーズ)において、MetaのカスタムチップはNvidiaの現行製品よりエネルギー効率とコスト効率の両面で優れていると主張する。その理由として「エンジニアリングの多くを自分たちで手がけているから」と述べた。
Astridの設計完了後、次の世代では速度とスループット(単位時間あたりの処理量)の向上を狙う。光ファイバー技術の活用もパフォーマンス改善に寄与する見通しだという。
また、Meta Superintelligence Labs(旧FAIR系列の社内AI部門)が将来のAIモデルの要件をチップチームにフィードバックすることで、ハードウェアの最適化を進めている。
業界全体に広がる内製チップシフトの文脈
MetaのMTIA戦略は、AIインフラ内製化という業界横断的な潮流の中に位置づけられる。AWSは機械学習向け独自チップAWS Trainiumを展開し、GoogleはTPU(Tensor Processing Unit)を第5世代まで進化させている。MicrosoftもAzure Maiaを投入するなど、大手クラウド・プラットフォーマー各社がNvidiaへの依存低減を競っている。
NvidiaはBlackwellアーキテクチャを中心に依然として圧倒的なシェアを持つが、推論フェーズに特化した内製チップは汎用GPUに対してコスト競争力を持ちやすい。Metaのケースはその構造的優位を大規模に実証しようとする試みとして注目される。
詳細はInside Meta's custom AI chips slashing energy bills in data centersを参照していただきたい。




