9月16日、Radhika Rajkumarが「What workers are really using AI for in 2026」と題した記事を公開した。職場でのAI利用率が**51%に達した一方、97%が「重要な判断は人間に委ねる」と答え、AIへの信頼度は28%**まで低下している——この数字が、2026年時点における「AIと働く現実」を端的に示している。
AIは「調べ物ツール」止まり——戦略判断は人間が握る
Resume Nowが実施した調査によれば、**97%の回答者が「意思決定では自分または他の人間の判断に頼る」と答えた。さらに72%**が、AIと同僚の意見が食い違った場合、同僚を信頼すると回答している。
具体的なAI活用用途の内訳は以下の通りだ。
- リサーチ・情報収集:約24%
- メール・メッセージ作成:14%
- 情報の要約:13%
- データ分析:9%
- 戦略立案・計画へのアドバイス:3%
ルーティンの情報収集では活用されているが、「戦略的思考や判断」が求められる局面になった途端、利用率は急落する。また、**93%**が「重要かつ時間的制約のある意思決定では、自分・同僚・上司に頼る」と答えており、業務上のプレッシャーがAI依存を強制しているわけでもないことがわかる。
この構図は単なる「使いこなせていない」問題ではない。AIが情報収集・文書作成といった補助業務に限定され、組織の意思決定ループに組み込まれていないという現実は、AI導入の効果測定や経営判断にも直結する。「ツールとして便利」と「信頼して任せられる」の間には、依然として大きな溝がある。
AIの実力は「B-」——ベンチマークと現実の乖離
「AIは人間専門家に匹敵する」という主張の根拠とされる公開ベンチマークについて、プロフェッショナルサービス企業のPearlが独自の検証結果を示している。Pearlはフロンティアモデル(※現時点で最高水準とされる大規模AIモデルの総称)を人間の専門家と比較するリーダーボードを運営しており、次のように述べている。
「公開ベンチマークは人間専門家との80〜95%のパリティ(※性能の一致度・同等性を指す)を報告しているが、それらのデータセットはトレーニングパイプラインに組み込まれている。私たちはモデルが見たことのない非公開の専門家作成データセットでスコアを測定した。ベンチマークのマーケティングと実世界での専門家整合性との乖離は大きく、新しいモデルが出ても埋まらない。」
つまり、公開ベンチマークで高スコアを叩き出すモデルであっても、実務で求められる未知の問題に対しては性能が大きく落ちる可能性があるということだ。カタログスペックと実運用性能のギャップは、AIへの信頼が伸び悩む背景の一つとして捉えられる。
9月時点のリーダーボード首位はAnthropicのClaude Fable 5で、ビジネス・テクノロジー・法律・医療など複数分野を通じたスコアは**80%**。Pearlはこれを「B-」相当と位置づける。Opus 5、Fable 5.1、PerplexityのSonar Deep Researchが80%弱で続く。
MITが2026年4月に発表した予測では、AIが経済的に意味のある一部タスクで「最低限使えるレベル」に達するのは2029年とされており、現時点の80%はその流れに沿ったペースと見られる。
使うほど信頼が増す——ただし全体の信頼は低下中
Gallupが9月時点で公開した調査では、AIへの信頼度は昨年の32%から**28%に低下した。一方でAIの利用率は昨年の39%から51%**へと増加しており、「使われているが信頼されていない」という傾向が続いている。
この信頼低下は、AI技術そのものへの幻滅とも読み取れるが、Gallupはより細かな逆説も示している。
「AIをある程度以上使っているアメリカ人の43%がAIを信頼しており、これはほとんど・まったく使わない層(12%)の3倍以上だ」
つまり使用経験そのものが信頼を生む。全体の信頼が下がっているのは、利用未経験層や浅い経験層が母数の大半を占めているためと考えられる。Resume Nowの調査でも、**64%**が「職場でのAI信頼度は過去1年で変わらないか増加した」と回答しており、Gallupの結果と整合する。
「使えば信頼が育つが、使い始めるまでの壁が高い」という構造は、企業がAI導入を進める際にオンボーディングや実務トレーニングをどう設計するかという問いに直結する。採用率が今の勢いを維持し、かつAIの性能が上がり続けるなら、職場における信頼が徐々に積み上がっていく可能性はある——ただし現時点では、AIは人間の補助役にとどまっている。
詳細はWhat workers are really using AI for in 2026を参照していただきたい。




