9月18日、RuntimeWireが「Anthropic and OpenAI seek smaller data centers while gigawatt sites wait」と題した記事を公開した。ギガワット級の大型データセンターを計画しながら、なぜAnthropicとOpenAIは20〜30MWの小規模施設の確保を急ぐのか。その答えは「コンピュートの規模」ではなく、「使える容量までの速さ」がAI競争の新たな軸になりつつあるという現実にある。
「速さ」がコンピュートの競争軸になってきた
両社が小規模施設に目を向ける理由は明快だ。グリッド接続の遅延である。
ローレンス・バークレー国立研究所が6月に発表した報告書によれば、データセンターの急激な電力需要増加により、大規模なグリッド接続に深刻なボトルネックが生じている。RANDも、許認可・規制上の遅延により、新たな送電インフラの一部が2030年までに完成しない可能性があると警告している。
こうした状況下で、既に電力が引かれているサイトは「使える容量までの時間」を大幅に短縮できる。Structure Researchのリサーチ責任者Jabez Tanは、この優位性を「speed to usable capacity(使える容量への速度)」と表現し、「ワークロードを複数拠点に分散できる場合、既存の有電サイトで数メガワットを確保する方が、大規模ブロックを待つより現実的だ」とCNBCに語っている。
技術的な背景として、推論(inference)ワークロードの特性が大きく関係している。
- モデルの学習(training): 大量のチップが密集したクラスター内で緊密に通信する必要があり、集中した大規模施設が前提となる
- 推論(inference): ユーザーのリクエストに応答する処理で、小規模クラスターに分散してルーティングできる
つまり推論であれば、複数の小拠点に分散配置しても機能する。JLLの2026年グローバルデータセンター展望レポートによれば、推論が全データセンターワークロードに占める割合は2025年の**9%から2030年には37%**に拡大すると予測されており、2027年には学習を超えて主要AIワークロードになる見通しだ。
なお「小規模」は相対的な表現にすぎない。Nscaleの8月の分析では、10,000GPUを収容する20MWクラスターの構築コストは約20億ドルに達するとしている(Nvidia幹部Rod Evansの発言を引用)。
ギガワット級の大型計画は並行して進む
小規模施設の探索は、既存の大型計画を代替するものではない。
Anthropicは8月、ウェストバージニア州のNscale施設から約460MWを賃借する契約を締結したとCNBCが報じている。なお元記事では契約総額として大きな数字も言及されているが、20MWあたり約20億ドルというNscaleの試算と照合すると、460MW規模の契約が数百億ドル規模に達する試算は数字の前提条件によって大きく変動するため、読者は単位感覚に留意されたい。さらに5月の資金調達発表では、Amazonと最大5GWの新規容量、GoogleおよびBroadcomと次世代TPU容量5GWの契約を締結したと発表。SpaceXのColossus施設へのGPUアクセスも確保している。
OpenAIも同様の構成を、より大きなスケールで進めている。3月に発表した1,220億ドルの資金調達においても、安定したコンピュートアクセスが主要な理由の一つとされた。Stargateプログラムでは複数の州に展開を計画し、ジョージア州で3GW、オハイオ州で8GWの容量確保も報じられている。
分散化のコストと製品展開の加速
小規模・分散型の戦略にはトレードオフもある。モデルの配布、トラフィックのルーティング、データ要件の管理、パフォーマンス維持をよりフラグメント化されたフリートにわたって行う運用負荷が増す。
Anthropicがこの課題にどう向き合っているかは、組織構造に表れている。共同創業者でありチーフコンピュートオフィサーのTom Brownが、コンピュートリソースの確保・スケーリング・活用を担う技術組織を率いている。コンピュートの調達が「共同創業者レベルの機能」として位置づけられている点は、インフラ計画と製品要求がいかに密接に連動しているかを示している。
製品面での需要増大も、小規模施設確保を急ぐ背景として元記事が挙げている。RuntimeWireの報道によれば、Anthropicは社内のマージ済みコードの80%をClaudeが生成していると発表しており、テストボリュームは6ヶ月で10倍、継続的インテグレーション(CI)ジョブは25倍に増加したとしている。同社が37のSalesforceパイプラインスキルをClaude内に導入してCRMレコードの読み書きを可能にした件も、エージェント的な利用の定着を示す事例として紹介されている。散発的なチャットボットリクエストとは異なり、こうした継続的な本番グレードのワークロードが増えるほど、即座に使えるコンピュート容量の価値は高まる。その文脈において、大型サイトの完成を待たずに小規模施設を積み重ねる戦略は、製品需要への即応という意味でも合理性を持つ。
ギガワット級の大型データセンターが完成するまでの間、20〜30MWの小規模施設を積み重ねて推論容量を確保する——それが現時点でAnthropicとOpenAIが取る現実的な戦略だ。
詳細はAnthropic and OpenAI seek smaller data centers while gigawatt sites waitを参照していただきたい。




