9月19日、Mark Samuelsが「AI just broke your career ladder」と題した記事を公開した。この記事では、AIの普及によって従来の「キャリアラダー(梯子型昇進)」が崩壊し、横断的・斜め移動を含む「キャリアラティス(格子型)」構造への転換が求められていることについて詳しく紹介されている。
「梯子」から「格子」へ——キャリア構造の根本変化
数十年にわたって機能してきたキャリアモデルは単純だった。エントリーレベルから始め、経験を積み、一段ずつ昇進する。しかしAIが日常業務の自動化を担い始めた今、このモデルは機能不全に陥りつつある。McKinseyの試算では、現在存在する職務の約半数が自動化可能な業務を含むとされており、定型業務を積み重ねて昇進を待つという従来の道筋が根底から揺らいでいる。(※編集部の考察:この数字はキャリアラダー崩壊の背景として広く引用されているが、元記事が直接言及しているものではない)
採用大手Harvey NashのグループCIOであるAnkur Anandは、ZDNETの取材にこう語った。
「AIは仕事のあり方を変えるだけでなく、昇進の仕方も変えている。従来のキャリアラダーはキャリアラティスに置き換わりつつある。ラティス(格子)を横断できる人が、次の段を待ち続ける人よりも速くトップに到達するだろう。」
キャリアラティスとは、垂直(上位職への昇進)だけでなく、水平(他部門への異動)や斜め方向(隣接領域への越境)の動きを組み合わせたキャリア構造のことだ。AIが下位の定型業務を自動化する一方で、若手でも以前より早い段階から複雑な業務に携われる環境が生まれており、このラティス構造への移行を後押ししている。
「波に乗るか、飲み込まれるか」
医療系企業Solis MammographyでアカウントペイアブルマネージャーをつとめるJesse Coxは、現場の実感をこう表現した。
「AIはもう来ている。サーフボードに乗って波に乗るか、飲み込まれて置いていかれるか、どちらかしかない。本当に選択肢はないんだ。」
Coxが強調するのは、AIが「仕事を奪う」のではなく「以前は時間がなくてできなかったことができるようになる」という点だ。彼の部門では、請求書の承認・支払いプロセスにAIを活用し、浮いた時間を新たな業務改善に充てている。
WalkMeのCIOであるTal Carmiは、AIリテラシーがすでに「基礎インフラ」扱いになりつつあると指摘する。彼の同僚の経営幹部はこう言い切ったという。
「AIを基本レベルで使えない人が来たら、インターネットを使えない人、メールやExcelを使えない人と同じだと思う。」
技術者でないことを理由にAIを避ける姿勢は、もはや通用しない——というのが複数のビジネスリーダーの共通見解だ。
若さより「適応力」が武器になる
Thomson ReutersのCOOであるKirsty Rothは、「AIへの適応は若い人が有利」という思い込みを否定する。
「ChatGPTの大型モデルが出たとき、興奮して遊んでいたメンバーがいた。その人たちが、この18ヶ月で最も優秀なエンジニアになっている。」
彼女が推奨するのは、異動や役職変更の際に「この職で何を学び、CVに何の2〜3行を加えられるか」を先に問うことだ。肩書きではなく学習の軌跡をキャリア設計の軸に置く発想である。
6つの実践的アクション
元記事では、取材に応じた複数のビジネスリーダーの知見をもとに、キャリア目標を維持したい人向けの6つの具体的な行動指針が提示されている。
- AIを「タスク処理ツール」ではなく「コーチ」として使う — 概念の説明、アイデアの検証、アプローチの比較をAIに問いかけることで、日常業務を高速学習の場に変える。
- 早い段階から「判断が必要な仕事」を狙う — AIの出力レビューや複雑ケースのフラグ立てなど、意思決定筋を鍛える業務を積極的に引き受ける。
- T字型プロフィールを構築する — 財務・採用・エンジニアリングなど専門領域を深掘りしつつ、AIリテラシー・データリテラシー・プロダクト思考を横断スキルとして加える。
- 職位ではなくプロジェクトで考える — 「時間削減」「売上への貢献」「リスク低減」など定量的な成果を示せるプロジェクト単位で実績を積む。
- AIが増幅する人間スキルに投資する — コミュニケーション、共感力、批判的思考はAIが不得意な領域。定型作業をAIに任せ、関係構築や問題解決に集中する。
- 横移動・斜め移動を恐れない — スキルやAI経験が積める異動なら、ラティス上の「横」の動きが最終的に最速の上昇ルートになりうる。
AI時代のキャリア設計は、梯子を一段ずつ登る忍耐ゲームから、格子を縦横無尽に動ける適応力のゲームへと変質している。肩書きや年次への依存を手放し、学習速度と越境経験を武器にする人材が次世代のリーダーになる——というのが、複数の現場CIOたちが示す共通の見立てだ。
詳細はAI just broke your career ladderを参照していただきたい。




