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Deep Dive

「最新AIモデルは先を行きすぎている」— 現場のビジネスリーダーが"昨年のモデルで十分"と言い切る理由

9月18日、CNBCが「AI safety debate meets reality at Dreamforce as business leaders say last year's models are enough」と題した記事を公開した。AI開発の最前線では安全性をめぐる激論が続く一方、現場のビジネスリーダーたちは「昨年のモデルで十分」と言い切る——その温度差が、Dreamforceの会場で鮮明になった。「最前線モデルはすでに先を行きすぎている」Salesforceが毎年サンフランシスコで開催するDreamforce(参加者約5万人規模)。今年の会場では、AI開発の速度をめぐる対立が鮮明になった。ステージ上では、NvidiaのJensen HuangがAI開発を「できる限り速く走れ」と後押しし、AnthropicのDario AmodeiとOpenAIのSam Altmanは安全性への懸念から開発ペースの減速を求めた。カンファレンス直前には、Anthropicを退職した研究者が「AIトップ企業は私たちの命を賭けてギャンブルしている」と発言し、業界に波紋を広げていた。この発言は退...

9月18日、CNBCが「AI safety debate meets reality at Dreamforce as business leaders say last year's models are enough」と題した記事を公開した。AI開発の最前線では安全性をめぐる激論が続く一方、現場のビジネスリーダーたちは「昨年のモデルで十分」と言い切る——その温度差が、Dreamforceの会場で鮮明になった。

「最前線モデルはすでに先を行きすぎている」

Salesforceが毎年サンフランシスコで開催するDreamforce(参加者約5万人規模)。今年の会場では、AI開発の速度をめぐる対立が鮮明になった。

ステージ上では、NvidiaのJensen HuangがAI開発を「できる限り速く走れ」と後押しし、AnthropicのDario AmodeiとOpenAIのSam Altmanは安全性への懸念から開発ペースの減速を求めた。カンファレンス直前には、Anthropicを退職した研究者が「AIトップ企業は私たちの命を賭けてギャンブルしている」と発言し、業界に波紋を広げていた。この発言は退職時のものであり、現職の立場からの告発ではないが、AI安全性をめぐる社内外の緊張感を象徴するものとして注目を集めた。

しかし、会場の展示フロアで話を聞いたビジネスリーダーたちの関心事は全く異なっていた。

「フロンティアモデル(各社が競って開発する最先端モデル)はすでに先を行きすぎている。顧客の多くはまだAIを使い始めたばかりで、エージェントが何をできるかすら把握しきれていない」——コンサルティング会社SummitXの副社長、Jaya Rohit Vuyyuruの言葉だ。

シカゴの小売データ企業Spinsでシニアセールスフォースディレクターを務めるAlec Bronstonも「ついていくだけで十分大変だ。開発が少し遅くなれば、現状に追いつく機会になる」と語った。

現場が使うのは「昨年のモデル」

実際、SalesforceがAgentforce(顧客サービスや営業問い合わせに対応するAIエージェント構築ツール)で採用しているモデルは、元記事で言及されているものの、最新鋭のフロンティアモデルへの依存は限定的だ。同社のサポートページでは、対応モデルの構成を確認できる。

ソフトウェアレビュー企業G2のチーフイノベーションオフィサー、Tim Sandersは明確に言い切る。

「エージェントのアウトカムの大半はフロンティアの能力によって生まれているわけではない。昨年のAIで動いている。SaaSにとってもアジェンティックなプロバイダーにとっても、最新モデルかどうかはそれほど重要ではない」

クラウドコンタクトセンターソフト会社Niceのテクノロジー責任者Kevin Leeも「一世代前のモデルでも、顧客が必要とすることに対して十分なパフォーマンスを発揮している。それ以上は"ケーキの上のアイシング"に過ぎない」と表現した。

モデルルーティングでコストを最適化

一方、より洗練された使い方をしている企業もある。電子署名ソフトのDocusignは、フロンティアモデルとオープンウェイトモデル(モデルの重みが公開されており、自社インフラ上で直接動かせるタイプのモデル)を使い分け、モデルルーティングと呼ばれる手法でリクエストごとにコスト効率の高いモデルへ振り分けている。

Docusignのブログによれば、「フロンティアモデルは複雑な条項分析や複数文書の推論など、高度な判断が必要な処理にのみ使用する」とのことだ。最新モデルを全否定するのではなく、処理の性質に応じて使い分けるアプローチは、コスト管理の観点からも現実的な落とし所といえる。

また、SandersはSaaSビジネスモデルへの構造的な影響も指摘する。従来のサブスクリプション型から、AI利用量に応じたトークン課金モデルへの移行が進む中、粗利益率が85%超から45%程度まで下がりうるという試算を示した。

早期採用を急がない企業と、即日展開する企業

システムインテグレーターのNagarroでは、AIラボから新モデルがリリースされても約3カ月待ってから本番環境に組み込む方針を取っている。消費者産業担当テクノロジー責任者のRam Reddyは「私たちはいち早く飛びつく早期採用者ではない」と述べた。安定性・安全性の検証期間を確保することを優先した、慎重派の典型的な姿勢といえる。

対照的に、データ分析ソフトのDatabricksは、3,500人の開発者全員に最新モデルを即日展開。エンジニアリング担当VPのPatrick WendellはX(旧Twitter)上で「最新モデルは複雑なタスクにおいてこれまでの最高モデルを明確に上回る」と投稿しており、最新モデルの価値を積極的に認める立場を取っている。同じ「ビジネス利用」であっても、開発者中心の組織と業務ユーザー中心の組織とでは、最新モデルへの感度が大きく異なることがわかる。

ステージと現場の乖離が示すもの

AI開発の最前線では安全性をめぐる激論が続くが、Dreamforceの現場が示したのは、多くのビジネスユーザーにとってその議論が「遠い話」であるという現実だ。最新モデルの到達点より、今ある技術をいかに業務に組み込むか——ROIを出せる使い方を見つけ、組織に定着させるか——が、企業の当面の課題になっている。研究者やモデル開発者の時間軸と、現場の実装サイクルの間には、まだ大きなギャップが存在している。

詳細はAI safety debate meets reality at Dreamforce as business leaders say last year's models are enoughを参照していただきたい。