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Deep Dive

AIエージェントの91%導入に対しガバナンス未整備が49% — EY調査が示す「動かしているが把握できていない」企業の実態

9月19日、Techstrong.AIが「EY Survey Finds AI Governance Falling Behind Agentic AI Adoption」と題した記事を公開した。EYの調査により、アジェンティックAIの導入速度にガバナンス整備が追いついていない実態が明らかになった。

9月19日、Techstrong.AIが「EY Survey Finds AI Governance Falling Behind Agentic AI Adoption」と題した記事を公開した。EYの調査により、アジェンティックAIの導入速度にガバナンス整備が追いついていない実態が明らかになった。


「緊急時にガバナンスをスキップした」が47%

**47%**――Ernst & Young(EY)の調査で、回答者のほぼ半数が「緊急性の高いデプロイ時にガバナンスプロセスをスキップしたことがある」と認めた数字だ。ポリシーはあるが、プレッシャーがかかる場面では機能しない。この構図こそが、今回の調査が突きつける最大の問題点である。

EYが実施した「U.S. AI Risk and Governance Survey」は、年間売上10億ドル以上の米国上場企業に勤める上級AI意思決定者202名を対象に実施された調査だ(調査レポートは2025年9月に公開)。まず目を引くのが、ガバナンスポリシーの形骸化だ。**98%**の回答者が「自社には正式なAIガバナンスポリシーが存在する」と答えた。しかし冒頭の47%が示す通り、ポリシーの「保有」と「遵守」の間には大きな乖離がある。

EYのアシュアランス部門でCTO兼AIリーダーを務めるRichard Jacksonは、「素早く動くことと適切なガバナンスを適用することは、相互に排他的ではない」と述べたうえで、監督が不十分な状態が実際のビジネスリスクを生むと警告した。


アジェンティックAIがガバナンスの穴を広げている

問題をさらに複雑にしているのが、アジェンティックAI(自律的に計画・実行を行うAIエージェント)の急速な普及だ。

アジェンティックAI(Agentic AI):ユーザーからの逐次指示を待たず、目標に向けて自律的にタスクを分解・実行するAIシステム。近年、LLMをベースにしたエージェントフレームワーク(LangChainAutoGenなど)の普及で企業導入が加速している。

調査では、**91%の組織がアジェンティックAIを「パイロット段階か本格導入済み」と回答した。ところがその利用者のうち、49%が「既存のガバナンスフレームワークはアジェンティックAI固有のリスクや要件に対応するよう更新されていない」と答えた。さらに26%**は「社内で不正に稼働しているAIエージェントを検出できない」と認めている。

この可視性の欠如は深刻だ。アジェンティックAIを導入している組織の**85%**で、「少なくとも一部のシステムがリアルタイムの人間の承認なしにアクションを実行している」と回答。具体的にはサイバーセキュリティ脅威の検出やコードの実行が挙げられている。誰も把握していないエージェントが、人間の確認なしに動いている状態だ。


AIリスクの顕在化:89%が何らかの被害を経験

ガバナンスの遅れはすでに被害として表れている。**89%の組織が過去1年間に何らかのAI関連リスクを経験したと回答。36%**は「データ損失・財務的損害・業務停止・ブランド毀損など、実質的に負の影響をもたらしたAIインシデントまたは障害を経験した」と答えた。

年1回以上の正式なAIアシュアランスレビュー(AIシステムの動作・リスク・統制を第三者または内部監査が検証するプロセス)を実施している組織は**98%に上る。なお、この98%はガバナンスポリシーの「保有率」と同じ数字だが、こちらは「レビュー実施率」を指しており別の設問への回答である。レビューを実施している組織のうち、92%がレビューで何らかの問題を発見している。問題が見つかった組織のうち、64%が少なくとも4分の1のAIシステムを大幅に修正し、29%が少なくとも4分の1を一時停止、25%**が少なくとも4分の1の運用を完全に停止した。

定期的なレビューが機能している側面もあるが、裏を返せば「レビューするたびに問題が見つかる」状態が常態化しているとも言える。


EYが示す対策の方向性

EYは今回の調査を踏まえ、以下の対応をすすめている。

  • 自律的な活動に対する明確な説明責任の確立:どのエージェントが何をできるか、誰が責任を持つかを組織的に定義する
  • デプロイメントワークフローへのコントロール組み込み:ガバナンスを後付けではなく、開発・リリースプロセスの一部として設計する
  • 利用中のAIシステムの可視化維持:稼働中のエージェントを継続的にインベントリ管理し、「把握できていない」状態を解消する
  • システムが意図通りに動作しているかの定期的な検証:導入後も定点観測を続け、逸脱を早期に検出する

ガバナンスポリシーの「策定」から「実効性のある統制の実装」へという段階への移行が、今回の調査全体を通じた中心的なメッセージになっている。91%が導入を進める一方で、把握・統制が追いついていない現状は、個別企業のリスク管理の問題にとどまらず、業界全体の課題として認識される段階に来ているといえる。


詳細はEY Survey Finds AI Governance Falling Behind Agentic AI Adoptionを参照していただきたい。