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Deep Dive

TSMCのCOOが「AIで1.4nmチップは設計できない」と明言 — データのない未踏領域では、AIは"3歳のスーパーマン"にすぎない

9月19日、Ramish Zafarが「TSMC's Operations Boss Says AI Cannot Fully Overcome Limitations To Design Next-Generation Chip Manufacturing Tech Such as 1.4-nanometer Node」と題した記事を公開した。TSMCの共同COO(Co-COO。TSMCは複数名によるCo-COO制を採用している)であるY.J. Mii氏が、AIは次世代チップ製造プロセスの設計における限界を克服できないと明言したことを報じている。

9月19日、Ramish Zafarが「TSMC's Operations Boss Says AI Cannot Fully Overcome Limitations To Design Next-Generation Chip Manufacturing Tech Such as 1.4-nanometer Node」と題した記事を公開した。TSMCの共同COO(Co-COO。TSMCは複数名によるCo-COO制を採用している)であるY.J. Mii氏が、AIは次世代チップ製造プロセスの設計における限界を克服できないと明言したことを報じている。


「3歳のスーパーマン」——TSMCがAIに下した現実的評価

AIがチップ設計を革命的に変えるという期待が高まる中、Mii氏は冷静な見方を示した。台湾国立大学の学生向けイベント(United Daily News・TSMC教育財団・台湾国立大学共催)での発言で、同氏はAIを「3歳のスーパーマン」に例えた。強大な力を持ちながらも、自分の行動がもたらす危険を理解できていない——という意味だ。

この発言が注目されるのは、TSMCが現在1.4nm(A14)および1.2nm(A12)以下のプロセス技術を積極的に開発・製造拠点構築中というタイミングであるためだ。なお「A14」「A12」はTSMCが内部で使用するプロセスノードのコード名である。次世代プロセスにおけるAIの役割について、現場を統括するトップが直接言及したことは重みがある。


AIが得意な領域と、苦手な領域

Mii氏は、AIの活用を全否定しているわけではない。TSMCがすでにAIを積極活用している分野として以下を挙げた。

  • コーディング: 比較的定型的なタスクであり、すでにAIツールは十分な実力を持つ
  • チップ設計・EDA(電子設計自動化): 入力と出力の形式が固定されているため、AIとの相性がよい。SynopsysやCadenceといった大手EDAベンダー、さらに中国企業もすでにエージェント型AIをEDA設計プロセスに活用している
  • トランジスタ最適化: 数十億個のトランジスタをAIで最適化することは、人間が行うよりも容易になりつつある

一方で、Mii氏が明確に「AIは向かない」と指摘したのが次世代プロセスノードの製造技術設計だ。


なぜ1.4nm以降でAIは機能しないのか

その理由はシンプルだ。データが存在しないからである。

AIは過去のデータから学習してパターンを見出す技術だ。しかし1.4nmや1.2nmといった未踏の領域では、関与する変数の性質自体が未知であり、学習の元となるデータが存在しない。Mii氏は「既存の装置や材料では達成できない目標がある以上、AIはその限界を超えることができない」と述べた。

端的に言えば、物理的な制約はAIで解決できないという主張だ。プロセス技術の開発は「発見のプロセス」であり、そこにAIが介在できる余地は限られる。


情報漏洩リスクも懸念材料

Mii氏はAIに対するもう一つの懸念も示した。企業レベルでのAIへの情報共有は、機密漏洩のリスクから制限せざるを得ないという点だ。TSMCが保有するプロセス技術の詳細は最高機密であり、AIツールにその情報を与えることへの慎重姿勢は理解できる。また同氏は、AIに関する意思決定は人間のみが行うべきだという立場を明確にした。


グローバル展開における人材面の課題

技術的な課題と並んで、Mii氏はTSMCの海外展開における別の制約にも言及した。グローバルチームを率いられるシニアマネージャーの確保が難しいという点で、米国アリゾナや日本・熊本での拠点拡大においては技術よりも人材面がボトルネックになっているとした。本稿の主題であるAI限界論とは別の文脈ではあるが、同氏が現場の複合的な課題認識を持っていることを示す補足的な発言として紹介しておく。


TSMCのような最先端プロセス技術の開発現場を率いるトップが「AIで次世代チップは設計できない」と明言した事実は、現在のAIブームに対するひとつの現実的な評価として受け止めるべきだろう。コーディングやEDAといった「答えのある問題」ではAIは強力だが、未踏領域の物理的限界に挑む研究開発の最前線では、まだ人間の知見が不可欠という構図だ。

詳細はTSMC's Operations Boss Says AI Cannot Fully Overcome Limitations To Design Next-Generation Chip Manufacturing Tech Such as 1.4-nanometer Nodeを参照していただきたい。