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EUのAI法に「被害者救済」の空白 — 欧州議会議員4名がAI企業への製品責任を問う新法を要求

9月22日、Politicoが「EU lawmakers float product liability rules to help avert AI disaster」と題した記事を公開した。EUの欧州議会議員がOpenAIやAnthropicなどの米国AI企業に製品責任を課す新たな法整備を求めていることを報じている。

9月22日、Politicoが「EU lawmakers float product liability rules to help avert AI disaster」と題した記事を公開した。EUの欧州議会議員がOpenAIやAnthropicなどの米国AI企業に製品責任を課す新たな法整備を求めていることを報じている。


AIによる被害に責任を負わせる法律が存在しない

現行のEU AI法(AI Act)は、2024年に成立した世界初の包括的なAI規制だ。しかしこの法律は、AIモデルのリスク分類(許容不可・高・限定・最小)を企業に義務付けるものであり、被害が実際に発生した後の救済にはほぼ無力だという構造的欠陥がある。

さらに決定的な空白がある。AI法は訓練・テスト段階のモデルをカバーしない。Politicoの記事によれば、今夏相次いだハッキング事件の中には、社内限定の研究用モデルを使ったAIエージェントが関与したとされる事例が含まれており、この規制の空白が現実の問題として浮上している。

ブリュッセルのシンクタンクBruegelのシニアフェロー、Mario Marinielloはこう指摘する。

「現状の仕組みでは、AIによって被害を受けた人にはほぼ何の権利も与えられていない。開発者がリスクを考慮し、安全性に投資するインセンティブが低下する」


欧州議会議員4名が「AI責任法」を要求

欧州議会の4名の議員——オランダ緑の党のKim van Sparrentak、ドイツ保守派のAxel Voss、イタリア社会民主主義派のBrando Benifei、アイルランド無所属のMichael McNamara——が共同で欧州委員会に書簡を送った(9月16日付)。

その内容は、AI Act に加える形で「AI責任法(AI Liability Act)」を新設せよというものだ。書簡には「大手プロバイダーが被害をもたらした際に、人々や欧州企業が泣き寝入りしないよう、現在存在する立法上の空白を埋めること」と明記されている。

この要求は中道右派(欧州人民党)、社会民主主義グループ、リベラル系のRenewグループからも支持を得ており、幅広い政治的合意が形成されつつある。van Sparrentakは「欧州は再び先手を打つ必要がある」と述べた。


トリガーになったのは「AIによるハッキング」の現実化

今夏、AIエージェントが実際のサイバー攻撃に使われる事例が相次いだと報じられている。その一例として記事が挙げているのが、OpenAIが提供するエージェントがHugging Faceに侵入したとされる事件だ。同件についてPoliticoは詳細な経緯を明示していないが、こうした事例が立法要求の背景にあると位置づけている。

2017年にWannaCryの世界的な感染拡大を食い止めたことで知られる英国のサイバーセキュリティ専門家Marcus Hutchinsはこう述べる。

「犯罪の意図がなく、AIエージェントがやったのだから法的責任はない、という考え方は良い方向性ではないと思う」

一方で、オランダ・ティルブルフ大学のIrene Kamara准教授は別の視点を示す。AIエージェントが人間のように描写されることで、背後にいる実際の責任者から注意がそれてしまう危険性を指摘した。


「立法のタイミング」という難問

この動きには政治的・立法的な複雑さもある。

EUは製品安全基準に関するルールを全面改訂したばかりで、改定版の一般製品責任規則が2025年12月9日に発効する予定だ。また、欧州委員会は規制の「簡素化」を掲げてテック規制の削減を進めており、AI固有の責任規則は2022年9月にいったん提案されたものの、昨年撤回されている。

新規立法の必要性を認めつつも、すでに山積する規制との整合性をどう取るかは未解決だ。

なお米国でも、前トランプ政権のAI担当だったDavid Sacksが先週のPOLITICO Decoded Summitで製品責任アプローチへの支持を表明しており、欧米でのムードが一定程度重なり始めている。


AI法の成立からわずか1年余りで、その限界が可視化されつつある。欧州議会議員4名による書簡はあくまで問題提起の段階だが、幅広い会派から支持が集まっていることは、今後の立法議論の展開を占ううえで注目に値する動向だ。

詳細はEU lawmakers float product liability rules to help avert AI disasterを参照していただきたい。