9月23日、CNBCが「Trump-Xi summit puts AI safety talks on the table but neither side wants to slow down」と題した記事を公開した。「競争を止めない合意」とは何を意味するのか。トランプ・習近平首脳会談においてAI安全対話が議題に上る一方、米中双方がAI開発の減速を望まない現実的な矛盾について、この記事は詳しく論じている。
「減速は極めて困難」──対話を求めながら競争を続ける構図
首脳会談に先立つ9月上旬の予備協議として、財務長官スコット・ベッセントが中国側カウンターパートの何立峰と「米中AI対話」の創設について協議した。その内容には、国家安全保障レベルに至るインシデントの通報チャネルの設置も含まれている。トランプ・習近平両首脳が直接テーブルにつく前に、実務レベルで枠組みの輪郭を固めようという動きだ。
なぜ今このタイミングなのか。背景には、AIシステムが実際に引き起こした事案がある。OpenAIの研究モデルがAIプラットフォーム「Hugging Face」の一部に無断アクセスした事例、Anthropicがサイバー攻撃の自動化にAIが使われていたことを確認した事例が相次いで報告されている。自律的に動作するAIエージェントが封じ込めを突破するリスクへの警戒感が、両国の指導層で高まっている。
戦略国際問題研究所(CSIS)ワドワニAIセンターのアロク・メタ氏はCNBCに対し、「両国のリーダーは、AIモデルのサイバー能力の向上、とりわけエージェントが自律的に封じ込めを脱してウェブサイトに侵入する事態に強い危機感を抱いている」と述べた。
しかし、外交関係評議会(CFR)のクリス・マクガイア上級研究員は冷静に評価する。インシデント通報チャネルの設置は「控えめながら前向きな一歩」と認めつつも、AI開発の急速なペースを落とすことへの合意は「極めて起こりにくい」と断言した。米中どちらも、技術覇権を相手に譲り渡す意図がない以上、「安全のための対話」は競争を前提とした上での限定的な協調にとどまらざるを得ない。
半導体規制と「蒸留」問題が交渉の核心に
合意が得られやすい領域として、メタ氏は次の2点を挙げる。
- 強力なAIモデルに関する安全定義・フレームワークの共通化
- インシデント対応のための緊急通信メカニズム
一方、交渉をこじらせる要因もある。
米国はNvidiaの最先端AIチップの対中輸出規制を継続しており、米国の通商代表ジェイミソン・グリアーはチップ規制が予備協議の議題ではなかったと述べた。だが中国側は規制緩和を求めてくる可能性が高い。アトランティック・カウンシルのメラニー・ハート上級ディレクターは「中国は米国に対し、中国製AIモデルを受け入れ、半導体チップへのアクセス規制を一部撤廃するよう求めている」と語った。
規制をかいくぐる動きも報告されている。複数の中国企業が東南アジアのデータセンターを経由してNvidia製チップの計算能力にリモートアクセスしていると伝えられている。
もう一つの火種が「蒸留(distillation)」だ。より高度な米国製モデルの出力データを学習に使うことで、自国モデルの能力を向上させる手法を指す。DeepSeekやQwenといった中国発の大規模言語モデルが急速に性能を伸ばした背景にこの手法があるとされており、ベッセントは7月、蒸留を行う企業への制裁を示唆した上で、「多くの中国モデルに米国の大規模言語モデルの透かしが確認された」と発言した。中国はこれを否定している。
協力の前提条件──「言葉だけでは信用できない」
メタ氏はAI協力が成立するための条件として2点を指摘する。
- 競争力を損なわないこと──協力が技術面での実力競争を妨げないことが前提条件だ。
- 検証メカニズムの存在──「政策立案者は相手の言葉だけでは動かない。技術面・ガバナンス面の両方で、両国間を流れる情報が正確であることを保証する手段が必要だ」とメタ氏は述べた。
トランプ大統領は9月上旬、Truth Socialへの投稿で「必要があれば政府として管理する」と述べる一方、同時期の別の発言では「AIで勝てなければ非常に不味い立場に置かれる」とも語っており、姿勢に揺れがみられる。中国の国営メディアは、米国の大手AIラボが訴える「壊滅的リスク」論を概ね否定しており、マクガイア氏は「これは米国のあらゆる軍備管理提案に対する中国の長年の懐疑論と一致している」と指摘する。
競争と協調をどう両立させるか。双方が解を持たないまま首脳会談に臨む構図は変わっていない。
詳細はTrump-Xi summit puts AI safety talks on the table but neither side wants to slow downを参照していただきたい。




