9月25日、Runtime Wireが「DeepSeek hits a $1B revenue run rate as it seeks another $7.5B」と題した記事を公開した。
値上げしても顧客は離れなかった——逆説的な成長の実態
DeepSeekは2024年8月にAPIの料金をモデルによって2.3〜4.5倍に引き上げた。通常、大幅な値上げは顧客離れを招くリスクがある。しかし創業者兼CEOの梁文鋒(リャン・ウェンフォン)は最近の投資家向けミーティングで、価格引き上げ後も顧客数は減少していないと説明したとされる。その結果として浮かび上がったのが、年率換算収益(ランレート)10億ドルという数字だ。The Informationが直接知識を持つ2名の関係者の証言をもとに報じた。
数カ月で倍増した収益ランレート
このランレートは、わずか数カ月前に報告された5億ドル未満から倍増以上の伸びである。
ただし、ランレート(Run Rate)とは直近の収益ペースを1年分に換算したスナップショットであり、すでに10億ドルを年間で積み上げたことを意味しない点には注意が必要だ。実際、The InformationのAugust報告によれば、DeepSeekが2026年最初の7カ月間に計上した収益は約4億7,500万元(約6,700万ドル)に留まっている。10億ドルのランレートとの開きは、価格改定後の直近ペースを前提としたものであり、そのペースが維持されるかは未確認だ。
収益の源泉はAPI、チャットボットは無料のまま
DeepSeekの収益の大部分は、開発者がAPIでモデルにアクセスする際の利用料だ。消費者向けチャットボットは引き続き無料で提供されており、今回の収益マイルストーンはコンシューマー向けサブスクリプションビジネスではなく、商用モデルアクセスに紐づいている。
先行報告では以下の数字が示されている:
- **総合粗利益率:44.6%**(最初の7カ月、全体)
- **APIアクセスの粗利益率:82.9%**(同期間)
- ただし同期間に純損失も計上している
APIの粗利益率は高水準だが、これがDeepSeek全体の収益性を表すわけではない。
価格改定の影響と顧客の動向
収益倍増の背景には、前述の2024年8月に実施したAPI料金の大幅値上げがある。梁CEOが値上げ後も顧客数が減少していないと説明した事実は、DeepSeekのモデルが開発者にとって代替困難な存在になりつつある可能性を示唆している。
ただし、ランレートの成長が値上げによるものか、利用量の増加によるものか、新規顧客の獲得によるものか、報告された情報は内訳を開示していない。価格引き上げ後のペースが持続するかどうかも未検証だ。
約7億ドルの追加調達へ——換算に注意
DeepSeekは現在、500億元(約700億円規模)の企業評価額を目標に、50億元の追加資金調達を進めており、10月末までのクローズを目指している。
ここで換算に注意が必要だ。50億元は1元≒0.14ドルで計算すると約7億ドルであり、元記事タイトルにある「$7.5B」という表記は元記事原文の表現を踏襲したものだが、実際の調達規模は約7億ドル前後とみるのが妥当だ。500億元の評価額も同様に約70億ドル前後となる。これはまだ目標であり、完了した取引ではない。
今回の調達は、2025年6月にクローズした外部調達に続くものだ。Reutersの報道によれば、前回の調達にはテンセントやCATL(中国の電池大手)が出資者として名を連ねていた。
DeepSeekの創業者・梁文鋒は浙江大学で工学を修め、量子取引ファンド「高飛資本(High-Flyer)」を共同創業した人物だ。DeepSeekはもともとこのヘッジファンドの資本で運営されており、外部資金調達への転換は、研究優先で構築してきた組織を商業的に試す転機となる。また、調達資金を背景に上海証券取引所への上場も視野に入れているとされる。
開発者にとっての読み解き方
DeepSeekのモデルは、そのコスト効率の高さで注目を集めてきた。DeepSeek-V3やDeepSeek-R1といったモデルは、OpenAIなどの競合と比較して低価格なAPIアクセスを売りにしてきたが、値上げ後もその採用が継続・拡大しているとすれば、コスト優位性以外の魅力——性能や統合のしやすさ——が評価されていることを示唆する。
※編集部の考察:値上げ後も顧客離れが起きていないという点は、DeepSeekが「安さで選ばれる存在」から「性能・信頼性で選ばれる存在」へシフトしつつある可能性を示す。ただし公開されている数字は断片的であり、顧客数・利用量・モデル別の内訳は開示されていないため、断定には慎重さが求められる。
詳細はDeepSeek hits a $1B revenue run rate as it seeks another $7.5Bを参照していただきたい。




