9月24日、CNBCが「China's AI chip blitz arms Xi with a message for Trump: 'You can't choke us off'」と題した記事を公開した。中国の相次ぐAIチップ・モデル発表が米中首脳会談における習近平の交渉力にどう作用するかを詳しく分析した内容で、個々チップの計算性能はNvidia製の約半分にとどまるという厳然たる現実を抱えながらも「技術的に締め上げることはできない」と示す中国の戦略的姿勢が浮き彫りになっている。
「封じ込められない」というメッセージ
習近平が11年ぶりの訪米を果たした今回の首脳会談。直前のタイミングで、ファーウェイとアリババという中国の国家的IT企業が相次いで新AIチップを発表した。
アジア・ソサエティ政策研究所のフェロー、Lizzi Lee氏はこう分析する。
「習にとってのレバレッジは『我々は追いついた』ではない。『技術的に締め上げることはできない』というメッセージだ」
米国は数年にわたり、Nvidiaの最先端AIチップおよびその製造装置の対中輸出を規制してきた。計算資源を枯渇させることで中国AIを一世代後れさせるという戦略で、2022年のBIS(米商務省産業安全保障局)による対中輸出規制強化を皮切りに、規制対象は段階的に拡大されてきた。だが、中国側はその包囲網を完全には突破できていないものの、独自の代替ルートを模索し続けている。
ファーウェイは年次カンファレンス「Huawei Connect」で、新AIチップAscend 960DTの出荷時期を当初予定より3四半期前倒しし、2027年第1四半期とすると発表した。アリババは「Apsara Conference」で、前世代比3倍の性能を持つAIプロセッサZhenwu V900を披露し、2027年初頭の発売を予告した。さらに、昨年初頭に低コストモデルで市場を揺るがしたDeepSeekが、既知最大規模のファーウェイチップクラスターを構築中との報道もある。
The Asia Groupのパートナー、George Chen氏は「Xiのテクノロジーと革新に対する自信は歴史的な高水準にある。テーブルに着くにはカードが必要で、Xiは多くのカードを持っている」と述べ、このタイミングを首脳会談前の「意図的な」自信の演出と評した。
「遅らせているが、止めてはいない」の実態
ただし、実態を冷静に見ると話は別だ。
中国のファーウェイ向け調査に強いHutong ResearchのアナリストSigrid Wang氏は、チップの生産スケジュール加速は「本物の前進に見える」としつつも、その意義を「米国の規制が開発を遅らせたが代替ルートを阻止できなかったという証拠を積み上げている」と位置づける。
個々のチップ性能の不足を補うため、中国企業は高速接続で数千枚のチップを束ねる大規模クラスタリングを進めている。しかしこの手法にも限界がある。
- ファーウェイの最新SuperPoDコンピューティングアーキテクチャ(複数のチップを高速インターコネクトで密結合し、単一の巨大な計算資源として扱うファーウェイ独自のクラスタ設計)は、当初計画より接続プロセッサ数が大幅に少ない
- 個々のチップの計算性能は依然としてNvidia製の約半分にとどまる(中国AI産業全体の実力を示すものではなく、あくまで単体チップのスペック比較)
- ファーウェイ会長のEric Xuは、国内需要を満たすだけのチップ製造ができない可能性を認めている
『チップ戦争:世界で最も重要なテクノロジーをめぐる戦い』の著者でタフツ大学教授のChris Miller氏は、米国モデルは技術ベンチマークと収益性で依然リードしていると指摘する。AnthropicやOpenAIなどの米国企業の収益は、同規模の中国企業の50〜100倍に達するという。
ユーラシア・グループのディレクターXiaomeng Lu氏は端的に言う。「中国のチップ企業はここ数年で突破口となる進歩を遂げていない。根本的な競争環境は変わっていない」。
高度なモデルの訓練・運用に必要なチップは依然大幅に不足しており、中国企業はチップの密輸や中国国外のデータセンターへのアクセスに大きく依存しているとMiller氏は述べる。
なお、この構図は日本の半導体製造装置メーカー(東京エレクトロンやレーザーテックなど)にとっても無縁ではない。対中輸出規制の強化局面では、これらメーカーへの販売制限が繰り返し議論されており、米中技術覇権の行方は日本企業の収益にも直結する問題として引き続き注視が必要だ。(※編集部の考察)
首脳会談の議題にチップは乗らない
今回の首脳会談では、チップ輸出規制は正式な議題に上らないとみられている。スコット・ベッセント財務長官とジェイミーソン・グリアーUSTR代表が週末にニューヨークで中国の何立峰副首相と会談し、AIインシデント警告のための対話チャネル設置で合意したが、グリアーUSTRは先端チップ・製造装置への輸出規制は「議題にない」と明言した。
アジア・ソサエティ政策研究所のLyle Morris上級フェローは、習近平が台湾問題でトランプを自国側に引き寄せることを優先し、見返りにイランやホルムズ海峡の航行自由化で協力を申し出る可能性があると分析する。
「米中テック関係の再調整には多大な実務的作業が必要だ。残念ながら首脳会談の成果物にはなれない——少なくとも今回は」(Lee氏)
チップ規制をめぐる攻防は首脳会談の表舞台に立たないまま、中国は「封じ込められない」という既成事実の積み上げを着々と続けている。
詳細はChina's AI chip blitz arms Xi with a message for Trump: 'You can't choke us off'を参照していただきたい。




