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Deep Dive

OracleのAIデータセンター計画が州の土地局長官1人の決定で頓挫寸前 — 180億ドルのローンが額面割れ、Stargateにも波及

9月25日、tftc.ioが「Oracle Force Majeure on Project Jupiter Exposes AI Capex's Structural Fragility」と題した記事を公開した。Oracleが2.45ギガワット級のAIデータセンター計画「Project Jupiter」で不可抗力(Force Majeure)条項を発動した事件を受け、AI設備投資モデルの構造的な脆弱性が鮮明になりつつある。発端は州の土地局長官1人によるパイプライン許可の否認——その連鎖が180億ドルの融資を揺さぶり、Stargateプログラム全体にも影を落とす。

9月25日、tftc.ioが「Oracle Force Majeure on Project Jupiter Exposes AI Capex's Structural Fragility」と題した記事を公開した。Oracleが2.45ギガワット級のAIデータセンター計画「Project Jupiter」で不可抗力(Force Majeure)条項を発動した事件を受け、AI設備投資モデルの構造的な脆弱性が鮮明になりつつある。発端は州の土地局長官1人によるパイプライン許可の否認——その連鎖が180億ドルの融資を揺さぶり、Stargateプログラム全体にも影を落とす。


何が起きたか

2026年9月23日、BloombergがOracleの動きを最初に報じた。Oracleは、Blue Owl Capital傘下のStack Infrastructureに対して正式な不可抗力(Force Majeure)通知を発行した。

対象は「Project Jupiter」——ニューメキシコ州ドニャアナ郡サンタテレサに建設中の2.45ギガワット級AIキャンパス(敷地面積約1,400エーカー)だ。不可抗力条項とは、自然災害や行政上の障害など当事者の責によらない事由でプロジェクトが遅延した場合に、契約上の支払い義務を猶予・免除するための法的メカニズムである。

Oracleは「Project Jupiterは計画通りに進んでいる。ニューメキシコへのコミットメントは揺るがない」とCNBCに直接コメントし、撤退ではないことを強調した。Blue Owlも「この通知はプロジェクトへの財務的コミットメントを変更するものではない」と追随した。

しかし市場の反応は冷静ではなかった。Oracle株は約4%下落し、約20の銀行に分散した180億ドルのプロジェクトローンは額面90セント割れで取引されている。「額面割れ」とは、1ドルで組成されたローンが市場で1ドル未満の価格でしか売買されない状態を指し、投資家がスケジュール遅延リスクをすでに価格に織り込んでいることを意味する。


根本原因:たった17マイルのパイプライン

問題の発端は、「Green Chileプロジェクト」と名付けられた天然ガスパイプライン計画だ。Energy Transferが提案した全長17マイル・直径24インチのパイプラインで、エルパソからProject Jupiterへ最大4億立方フィート/日の天然ガスを供給し、OracleがオンサイトでBloom Energyの燃料電池を動かす電源として計画されていた。なお、Bloom Energyの燃料電池は固体酸化物型(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)と呼ばれる方式で、天然ガスを高温で直接電気に変換する発電技術であり、送電網への依存度を下げる分散電源として大型データセンターへの採用が進んでいる。

このパイプラインを、ニューメキシコ州土地局長官Stephanie Garcia Richardが2026年3月と7月の2度にわたって否認した。7月14日の否認書には「州土地局の受益機関、地域コミュニティ、ニューメキシコ全体に対してほとんど利益をもたらさない」と明記され、水の枯渇と排出ガスへの懸念も示された。

結果として:

  • パイプライン着工は最低でも6ヶ月遅延
  • 連邦エネルギー規制委員会(FERC)への規制申請により、最速でも2027年2月1日以降にしか稼働できない見通し
  • ニューメキシコ州最高裁は異議申し立てを全員一致で却下、訴訟は継続中
  • 大気質許可手続きもパイプライン否認と連動して停滞

連鎖するリスク:Stargateへの波及

Project JupiterはStargateプログラムの中核キャンパスだ。Stargateとは、2025年1月にトランプ政権がOracleのラリー・エリソン、OpenAIのサム・アルトマン、SoftBankの孫正義とともに発表したAIインフラ整備構想で、今後数十年にわたって世界規模での兆ドル単位のインフラ投資を前提としている。

その旗艦プロジェクトが、州の土地局長官1人の許可否認から始まる連鎖に晒されている。

  • パイプライン否認 → 6ヶ月遅延
  • 6ヶ月遅延 → 180億ドルの債務が90セント割れ
  • 債務悪化 → 不可抗力通知の発動

この一連の因果連鎖は、「大型集中キャンパス型」AIデータセンターモデルの弱点をそのまま体現している。Oracle株だけでなく、燃料電池サプライヤーのBloom EnergyとBlue Owlも連動して下落した。

同様の事例は各地で起きている。テキサス州では電力網の計算が合わずに1,800件のAIデータセンタープロジェクトが停止、ニュージャージーではMicrosoftのキャンパスが無許可の発電機45台を稼働させていたとして停止命令、PJM(米国東部の電力プール機関)はAIデータセンターを電力不足時に優先的な負荷削減(Curtailment)対象とする50MW削減優先ルールを申請している。


今後の注目点

記事は3つの指標を監視軸として挙げている。

  1. Green ChileプロジェクトのFERC審査——再ルーティング申請が通るか
  2. 連邦による許可否認の覆し——政治的に実現可能かどうか
  3. 180億ドルのプロジェクトローンの値動き——9月のニュースサイクル後に額面に戻るなら市場は一時的な遅延と判断、悪化が続くならStargateの資金調達前提そのものが問われる

記事は「需要は無限、どこにでも建てろ、電力問題は後で解決」という業界の暗黙の前提が、各地の送電網接続点と各州の土地局でストレステストを受けていると指摘している。

詳細はOracle Force Majeure on Project Jupiter Exposes AI Capex's Structural Fragilityを参照していただきたい。