9月28日、TechCentralが「Open weight models process majority of AI tokens for the first time」と題した記事を公開した。VercelのAIゲートウェイで処理されるトークン数において、オープンウェイトモデルが初めて過半数を超え、AI利用の市場構造に転換点が訪れたことを報告している。
オープンウェイトとは何か
本題に入る前に、「オープンウェイト」という概念を整理しておきたい。
「オープンウェイト」とは、学習済みモデルの重みパラメータ(weights)を公開しているモデルを指す。一般に「オープンソース」と混同されがちだが、厳密には異なる概念だ。オープンソースは学習コード・データ・モデル構造のすべてを公開することを指すのに対し、オープンウェイトは重みのみを公開しており、学習データや手法は非公開である場合が多い。MetaのLlama系モデルが代表例として知られる。
これに対し、「クローズドウェイト(プロプライエタリ)モデル」はAPIを通じてのみアクセス可能で、モデル本体を手元で動かすことはできない。OpenAIやAnthropicの主力モデルがこれにあたる。オープンウェイトモデルは自前のインフラで動かせるため、トークン単価が大幅に低くなる傾向がある。
オープンウェイトが過半数を突破
2025年8月、VercelのAI Gatewayを通じて処理された全トークンの56%をオープンウェイトモデルが占めた。これは初めてオープンウェイトモデルがクローズドウェイトモデルの合計を上回った瞬間だ。わずか4ヶ月前の4月時点では13%に過ぎなかった。
なお「トークン」とは、言語モデルが処理する最小単位のテキストのことで、1文字、単語の一部、または句読点などに相当する。GPTなどのモデルはトークン単位でテキストを読み、生成する。
ただし、**トークン数では56%を占めるオープンウェイトモデルだが、支出ベースでは全体のわずか14%**にとどまる。コストの安さがそのまま利用量の増加につながっている構図だ。
なぜ今、この逆転が起きたのか
4ヶ月で13%から56%へという急速な転換は、単なる価格差だけでは説明しきれない。背景には複数の要因が重なっている。
第一に、オープンウェイトモデルの性能そのものが急速に向上し、多くのユースケースでクローズドモデルと遜色ない品質に達してきた点がある。第二に、AI利用がプロトタイプから本番環境へと移行するにつれ、開発チームがトークン単価をより厳密に意識するようになった点だ。実験段階では多少コストがかかっても高性能モデルを使う判断が合理的だが、本番規模になるとコスト構造が意思決定を左右する。第三に、Vercelのようなプラットフォームがオープンウェイトモデルへのアクセスを標準的なゲートウェイとして整備したことで、導入の技術的ハードルが下がった点も見逃せない。
トークン単価は3ヶ月連続で下落
コスト面でも顕著な変化が起きている。8月のトークン平均単価は23.2%下落し、4月以降で最大の月次下落幅を記録した。3ヶ月連続の下落でもある。
大口ユーザー(7月・8月ともに1000万トークン以上を利用したチーム)に限っても、トークン中央値コストが7.6%低下した。7月の2.9%下落から倍増しており、大規模利用においてもコスト圧力が強まっていることがわかる。
AnthropicとOpenAIで進む「高価格モデル離れ」
この傾向はプロプライエタリモデルの内部でも起きている。
Anthropicの場合、Claude Fable 5のAI Gateway支出シェアが7月の13.2%から8月には4.9%へと急落した。代わりにOpus 5のシェアが22.5%へ拡大している。Opus 5のトークン単価はFable 5の約半額だ。Fable 5を使っていたチームの9割が利用を縮小し、その多くがOpus 5へ移行した。
それでもAnthropicはAI Gateway支出全体の64%を占め、12月以降は毎月61%以上を維持している。ユーザーが安価なモデルへ移行しても、同一プロバイダー内での乗り換えにとどまるケースが多く、Anthropicとしてはシェアを保てている。
OpenAIの場合も同様の二極化が見られる。9月3日にGPT-6 Astraが追加され、GPT-5.6 Solの2倍の単価にもかかわらず、2日後には早くもOpenAI支出の3分の1を占めた。その後もシェアは28〜39%で推移している。
一方、4〜16日の期間でLunaとNanoは処理トークン数でAstraとSolの2倍以上を処理したが、支出はその9分の1だった。高価格モデルが支出シェアを、低価格モデルがトークンシェアを、それぞれ独立して確保している構造が鮮明だ。
特化型モデルJevの急速な普及
もう一つ目を引くデータがある。TypeSafe AIのJevというモデルだ。リリースから24時間以内に有料チームの約13%が採用し、AI Gatewayの歴史上最速の普及速度を記録した。18時間時点で10%に達しており、他の最近のモデルが24時間後も7%未満にとどまるのと対照的だ。
Jevは汎用テキスト生成モデルではなく、ソフトウェア内の構造化意思決定に特化したモデルだ。自由文を生成するのではなく、ソフトウェアが直接利用できる構造化された回答を出力する。本番環境での即戦力として受け入れられた点が、この普及速度につながったとみられる。
この事例は、汎用性よりも特定用途への最適化を重視する選択が現場で広がっていることを示している。コスト最適化と用途特化という二つの軸が、今のモデル選択基準を形成しつつあると言える。
まとめ
AI Gatewayのデータが示すのは、コストパフォーマンスが明確にモデル選択の基準になりつつあるという事実だ。オープンウェイトモデルと低価格モデルがトークン処理量を伸ばす一方、プレミアムモデルは支出シェアを維持している。チームはユースケースごとにモデルを使い分けており、一律に最高性能のモデルを選ぶ時代は終わりつつある。「何でも最強モデルを使う」から「用途に応じて最適なモデルを選ぶ」への移行が、数字として可視化された報告と言えるだろう。
詳細はOpen weight models process majority of AI tokens for the first timeを参照していただきたい。





