9月28日、Shane Sniderが「Akamai's potential $20B Anthropic deal scales AI beyond GPUs」と題した記事を公開した。AIインフラといえばGPUクラスタという常識が浸透して久しいが、Akamaiが締結した最大200億ドル規模の契約が示すのは「モデルを動かす」フェーズではCPUが主役になりうるという実態だ。トレーニングと推論・エージェント処理を分けて考えることで、GPUキャンパスへの巨大投資なしにAIビジネスを取り込む道が開けつつある。
AIワークロードの多様化——GPUだけでは語れない時代
フロンティアモデルのトレーニングは依然としてGPUクラスタの独壇場だが、それを取り巻くワークロードは急速に多様化している。市場調査会社IDCのグループ副社長Dave McCarthyが挙げるCPU向けタスクは以下の通りだ。
- エージェント・オーケストレーションとツール呼び出し:複数のAIエージェントが連携して処理を進める際の制御・調整
- コンテキストおよびメモリ管理:会話履歴や参照情報の保持・検索
- 前処理・後処理、ガードレール処理:入出力の検証や安全フィルタリング(モデルが有害な出力をしないよう監視・制限する仕組み)
- APIターミネーションとコンテキストキャッシュ:APIリクエストの受付・終端処理と、繰り返し参照される文脈情報の一時保存による応答高速化
これらはユーザーやデータソースに近い場所で処理した方が効率的であり、分散配置に向いている。Akamaiの分散クラウドインフラはまさにこの用途に合致する。McCarthyはこう指摘する。「これを全部動かすには膨大なCPUが必要だ。GPUだけで完結するわけではない」
GPUではなくCPUで200億ドル——何が起きているのか
AkamaiはAnthropic(OpenAIの競合として知られるAI企業)に対し、116億ドル・7年間のクラウドインフラ提供契約を9月24日に締結したと発表した。この契約にはさらに90億ドルの拡張オプションが付いており、契約総額は最大約200億ドルに達する可能性がある。
重要なのは、この契約の対象がGPUではなくCPUワークロードだという点だ。大規模言語モデルのトレーニングにはGPUクラスタが必須とされてきたが、モデルを実際に動かすフェーズ(推論・API処理・エージェント制御など)ではCPUで処理できるタスクが多い。Akamaiはこの需要を分散クラウドインフラで取り込む。
CPU vs GPU:ラック密度と電力要件の違い
McCarthyはこの契約の意義をラック密度の差で説明する。
- GPUクラスタ:1ラックあたり40〜100kW超の消費電力、専用液冷システムが必要
- CPUサーバ:1ラックあたり10〜20kWで動作、既存の空冷・標準電力設備で対応可能
つまりCPUワークロードは、GPUキャンパスのような巨大設備を必要とせず、既存のコロケーション施設(第三者運営のデータセンターに場所と電力を借りる形態)に収まる。
「AIビジネスを獲得するために、500MWのギガワット級キャンパスと専用液冷ループが必ずしも必要なわけではない」とMcCarthyは述べる。
AkamaiのCFO Ed McCowanも電力あたりの経済性を強調する。
CPUs have a different dynamic … you can get a lot more CPU [capacity], therefore generally more revenue per dollar of megawatt of power.
— Ed McGowan, CFO, Akamai
電力あたりのキャパシティが大きいため、1MWあたりの売上も高くなるという論理だ。
先行投資のスケール感
この契約はAkamaiにとって収益が入る前に大規模な先行投資を求める。公表されたキャピタルエクスペンディチャー(設備投資)の計画は以下の通りだ。
| 時期 | 投資額 |
|---|---|
| 2026年Q4 | 約17億ドル(メモリ等のサプライチェーン先行確保) |
| 2027年 | 約31億ドル |
| 2028年 | 約7億ドル |
| 合計(2年間) | 約55億ドル |
売上は2027年後半から発生し始め、2027年通年では1.5〜3億ドル程度の見込み。2028年末には年換算で約17億ドルの売上規模に達すると予測する。
Akamaiが今年締結した大型クラウド契約のポートフォリオ全体(144億ドル規模)では、95〜105MWの電力が必要となる見通し。Anthropicとの個別契約の電力量は非開示だが、契約規模から相当部分を占めるとみられる。
データセンター事業者への示唆
McCarthyはこの動きを「分散サービングティア」と表現し、地方都市の10〜30MW規模の施設でも十分にAIインフラ需要を取り込めると指摘する。Akamaiは自社でデータセンターを建設するのではなく、複数のコロケーション事業者との契約で容量を確保する方針だ。
McCowanによれば「複数のプロバイダーと10〜30MWの数年契約を結べる」という。GPU向けのような巨大キャンパス整備を必要としない点で、中規模施設を持つ事業者にとっては新たな収益機会となりうる。
ただし、CPUベースのAIインフラ拡大がどこまで進むかは予断を許さない。GPU推論の効率化が進めば、今CPU向けとされているワークロードの一部がGPUに回帰する可能性も否定できない。今回の契約はその市場の方向性を占う試金石でもある。
詳細はAkamai's potential $20B Anthropic deal scales AI beyond GPUsを参照していただきたい。




