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Anthropic

ClaudeがSLACの物理学者の8ループ記録を更新する9ループ散乱振幅計算を達成 — 1〜2千ドルの予算で、専門家が2週間かけて検証した結果は「かなりの勝利」

9月28日、Dataconomyが「Anthropic says Claude AI solved nine-loop particle physics challenge」と題した記事を公開した。1,000〜2,000ドルという学術的な規模の予算で、SLAC・スタンフォード大学の物理学者Lance Dixonが2023年に樹立した8ループの記録を塗り替える9ループ散乱振幅計算をAnthropicのAI「Claude」が達成した。計算結果はDixon本人が2週間かけて独立検証し、「大規模言語モデルにとってかなりの勝利(quite a triumph)」と評している。

9月28日、Dataconomyが「Anthropic says Claude AI solved nine-loop particle physics challenge」と題した記事を公開した。1,000〜2,000ドルという学術的な規模の予算で、SLAC・スタンフォード大学の物理学者Lance Dixonが2023年に樹立した8ループの記録を塗り替える9ループ散乱振幅計算をAnthropicのAI「Claude」が達成した。計算結果はDixon本人が2週間かけて独立検証し、「大規模言語モデルにとってかなりの勝利(quite a triumph)」と評している。


9ループ計算とは何か

Anthropicは、ClaudeがN=4超ヤン-ミルズ理論(planar N=4 super-Yang-Mills theory)における9ループ・6粒子散乱振幅を計算したと発表した。これは2023年にSLAC・スタンフォード大学の物理学者Lance DixonとAndy Liuが達成した8ループの記録を塗り替えるものだ。

「散乱振幅(scattering amplitude)」とは、亜原子粒子がどのように相互作用するかを予測するための計算式である。「ループ」の数が増えるほど量子補正の複雑度が指数関数的に上がり、現実の物理計算では2〜3ループが限界とされるケースが多い。ループ次数が1つ増えるだけで、展開されるファインマン図の数や対称性の拘束条件が爆発的に増大するため、8→9ループの壁は従来の計算機科学的アプローチでは事実上越えられなかった。

今回対象となったN=4超ヤン-ミルズ理論は、現実世界の粒子を直接記述するものではなく、数学的な手法を開発・検証するためのモデル(「玩具理論」とも呼ばれる)だ。量子色力学(QCD)など現実の理論に適用するための計算手法を磨く場として、理論物理学コミュニティで長年使われてきた。

また、今回の計算で中心的な役割を果たした「ブートストラップ法(bootstrap method)」は、物理的整合性の条件(ユニタリティ・解析性など)を拘束条件として課すことで、ファインマン図を一から計算せずに散乱振幅を決定する手法だ。計算量を劇的に削減できる反面、拘束条件の設定と検証に高度な専門知識が要求される。

この計算に挑んだのは、Anthropicの物理学者Liam FitzpatrickとSiddharth Mishra-Sharmaの2名。問題の説明と「一晩中作業を続けるように」という指示だけを含む短いプロンプトをClaude(Claude Science内で動作)に与えた。


コスト:1手法あたり1,000〜2,000ドル

Claudeは計算を2つのアプローチで完了させた。

  • 直接ブートストラップ法(direct bootstrap method)
  • 間接的なフォームファクターアプローチ(indirect form-factor approach)

各手法のコストは1,000〜2,000ドルと推定され、大半はClaude自体の実行コストだ。学術的なスケールの予算で世界記録級の計算をこなした点が、この挑戦の出発点でもある。

そもそも今回の挑戦は、物理学者でサイエンスライターのMatt von Hippelが数週間前にAI企業に向けて公開で投げかけたものだ。「未解決の素粒子物理学の問題を、学術規模の予算で解いてほしい」という内容だった。


人間の専門家による検証

計算結果の信頼性は、8ループの記録保持者でもあるLance Dixon自身が2週間かけて独立検証した。主にClaude Scienceが出力した9ループのフォームファクターを通じて確認し、Dixonはこの結果を「大規模言語モデルにとってかなりの勝利(quite a triumph)」と評した。

Dixonはまた、Claudeがゼロから必要なコードを書き上げ、途中でミスをすれば全体が崩壊するような繊細な計算プロセスを遂行したことを指摘している。

一方、中国科学院のSong Heが率いるグループも、GPT-6の補助を受けながら9ループのシンボルのほぼ全体を独立に計算し、9月17日にZenodoでデータセットを公開していた。von Hippelはこの人間主導の取り組みも評価されるべきだと述べ、論文を書いて成果を物理学界に発信するのは研究者であってClaudeではないと明記している。


「新しい物理」を発見したわけではない

重要な留保もある。von Hippelは「Claudeは既存の手法を用い、研究者がこれまで試みたよりも多少多くの計算を行った」と述べており、新しい物理原理を生み出したわけではないと明言している。

Dixonも同様の見方を示し、「大規模言語モデルが人間より先に新しい物理原理や洞察を生み出すようになったとき、より大きな問いが生まれる」と語った。今回の成果はAIによる科学的発見の一里塚ではあるが、物理学の革新そのものとは区別して理解する必要がある。


詳細はAnthropic says Claude AI solved nine-loop particle physics challengeを参照していただきたい。