9月29日、Tom's HardwareのJake Roachが「OpenAI's custom Jalapeno AI inference ASIC is for OpenAI's internal use, but company leaves the door open to broader rollout」と題した記事を公開した。この記事では、OpenAIが独自開発した推論用ASIC「Jalapeño」の用途・設計思想・競合比較について、OpenAIハードウェア担当責任者へのインタビューを元に詳しく紹介されている。
「社内用」だが「誰にでも使える」——Jalapeñoの立ち位置
OpenAIがHot Chips 2026で発表した推論専用ASIC「Jalapeño」について、最も気になる問いは「これは誰のためのチップなのか?」だ。なお、Hot Chipsはスタンフォード大学が主催する高性能マイクロプロセッサに関する著名な年次シンポジウムである。
OpenAIのハードウェア責任者であるRichard Ho氏は、Tom's Hardwareのインタビューに対してこう述べた。
「社内のコンピュート需要が非常に強く、自社の需要を満たすだけでも長い時間がかかる。まずOpenAIのニーズを満たすことが最優先だ。とはいえ、他でも使えないとは言っていない。正直、誰にでも使えると思う。」
つまり、現時点ではOpenAI社内専用だが、外販の可能性は明確に否定していない、という立場だ。供給面での制約が外部展開を躊躇わせる主因とみられており、Ho氏は「供給については新たなベースラインが確立されつつある」とも語っている。過去2年間、Sam Altman CEOとともにファブ(半導体製造工場)を回り、生産能力の確保に奔走してきた経緯があるが、外部顧客への供給となれば話は別だ。
設計の核心は「効率」——NVIDIAとの比較も示唆
Jalapeñoの設計思想について、Ho氏は端的に「効率(efficiency)だった」と述べた。電力制約が厳しくなる現代のAIデータセンターにおいて、より効率的な推論エンジンは実質的な計算能力の向上を意味する、という考え方だ。
実際、Jalapeñoは700Wの消費電力でNVIDIA GB200(消費電力1,400W)を上回る性能を示したとされており、電力効率の観点では印象的な数字を叩き出している。
ベンチマークはSemiAnalysisの「InferenceX」を使用した。InferenceXはAIチップの推論性能を実ワークロードに即した条件で横断比較するためにSemiAnalysisが開発したベンチマークフレームワークで、業界での参照実績が増えている。今回は8,000入力トークン・1,000出力トークン(8k1kと略される固定条件)でNVIDIAのGB200およびGB300(Grace Blackwellシリーズ)と比較した。注目すべきは、JalapeñoがOpenAI自社モデルだけでなく、DeepSeek R1やKimi K2.5といった他社モデルも動作させたことだ。
DeepSeek R1はDeepSeekが開発した大規模推論モデルとして広く知られている。一方、Kimi K2.5は中国のAIスタートアップMoonshot AIが開発した大規模言語モデルで、長文コンテキスト処理能力に強みを持つとされるが、日本国内での認知度はまだ高くない。
Ho氏はこの点を強調した。
「業界に広がる誤解——『このチップはOpenAIモデル専用』という認識——を払拭したかった。プログラマブルで汎用的であり、OpenAIモデルにハードコードされているわけではない。」
なぜ外部チップベンダーではなく自社開発なのか
設計の動機として、Ho氏はモデルとチップのコデザイン(共同設計)を挙げた。
「サードパーティのシリコンベンダーとのコデザインは、研究IPの漏洩リスクがあってうまくいかない。NDAs(秘密保持契約)をいくら積み重ねても、漏れるものは漏れる。」
これはOpenAIがBroadcomと提携してJalapeñoを製造委託しながら、設計の主導権を自社に置いている理由とも一致する。モデルの研究成果をチップ設計に直接反映させるには、機密保持と迅速な反復が不可欠であり、外部ベンダーへの全面依存では難しいという判断だ。
なお、次世代プロセッサについてはSamsungでの製造も検討されていると別途報じられており、調達先の多様化も進んでいる。
より新しいVera Rubinとの比較は「内部では良好」
公開されたベンチマークの比較対象がGB200/GB300だった理由について、Ho氏は「公開されている信頼できる結果の中でベストなものだったから」と説明した。NVIDIAの次世代GPU/CPUプラットフォームであるVera Rubin(およびその上位モデルVera Rubin Ultra/VR Ultra)との比較は内部では実施済みだが、公開はしていない。Vera RubinはNVIDIAがBlackwellの後継として開発中の次世代アーキテクチャで、2026年以降の展開が見込まれている。
「実際に展開するころにはVera Rubin、場合によってはVR Ultraになっている部分もあるだろう。内部ベンチマークは実施しているが、公開はできない。それはNVIDIAや他の関係者がやるべきことだ……ただ、我々の結果は良好だ。」
また、より長いコンテキストウィンドウに対する内部ベンチマークも存在し、「既存デバイスの結果を上回るようだ」とHo氏は述べている。
JalapeñoはOpenAIのNVIDIA依存を段階的に減らす布石として機能する可能性を持つ。現時点では「社内優先」という立場を崩していないが、汎用性を示すベンチマークと複数世代にわたるロードマップは、外販を念頭に置いた動きと読み取ることもできる。
詳細はOpenAI's custom Jalapeno AI inference ASIC is for OpenAI's internal use, but company leaves the door open to broader rolloutを参照していただきたい。




