9月28日、Inside AI Newsが「NVIDIA Boosts Share Buyback by $150 Billion, Betting Big on AI Future」と題した記事を公開した。NVIDIAが追加で1,500億ドル(約22兆円)規模の自社株買い枠を設定すると発表したこの動きは、単なる株主還元策にとどまらず、AI市場の成長に対するNVIDIA自身の強気な見通しを財務面から示すシグナルとして注目を集めている。規模の桁外れさ、そして競合の台頭や輸出規制といったリスクが並存する中での決断という点に、この発表の本質がある。
1,500億ドルの自社株買い——その規模感
NVIDIAは2026年9月29日(月)、既存の自社株買いプログラムに追加で1,500億ドル(約22兆円)の株式買い戻し枠を設定すると発表した。
Wedbush SecuritiesのマネージングディレクターであるDaniel Ivesは「NVIDIAほどの大企業でも、1,500億ドルという枠は桁外れだ」と述べている。同社の現金保有残高は300億ドル超であり、フリーキャッシュフローはテック業界でも最高水準にある。なお、NVIDIAの会計年度は1月末締めのため、「2026会計年度」とは2025年2月〜2026年1月期を指す。この直近期において、すでに100億ドル分の自社株買いを実施している。
CEOのJensen Huangは発表に際し、「NVIDIAの成長はAIと加速コンピューティングへの一世代に一度のプラットフォームシフトによって牽引されている。このキャッシュ創出能力が、将来への投資と株主還元の両立を可能にする」とコメントした。
なお、今回の枠設定は購入を義務付けるものではなく、時期・金額は市場環境次第とされている。
なぜ今このタイミングか
背景にあるのは、データセンター向け売上の急拡大だ。NVIDIAのH100およびBlackwellアーキテクチャ採用GPU(Blackwellは2024年後半に本格投入された最新世代のアクセラレータファミリーで、H100の後継として大規模AI学習・推論向けの高性能を実現している)は、クラウド大手や企業がAIインフラ構築を急ぐ中で需要が爆発した。製造はTSMCに外部委託しているため設備投資は相対的に低く抑えられており、潤沢なキャッシュが手元に積み上がっている構図だ。
株式市場の反応は限定的で、時間外取引での株価はほぼ横ばいだった。市場はすでに継続的な株主還元を織り込んでいたとみられる。
懸念点も存在する
手放しで楽観的な見方ばかりではない。記事では複数のリスクが指摘されている。
- 競合の台頭: AMDがMI300アクセラレータシリーズを強化しており、Google・Amazon・Microsoftも独自AIチップの開発を進めている
- 輸出規制: 中国向け先端半導体への輸出規制は引き続き不確実性をはらんでいる
- 自社株買いへの批判: R&D投資の代わりに1株当たり利益(EPS)を底上げする手段と見る投資家も存在する
- 成長率の鈍化: 規模の法則上、現在の成長率は今後緩やかになると見込まれている。また、より少ない演算量で動く効率的なAIモデルの研究が進めば、高性能GPUへの需要が落ちるシナリオもある
CUDAという堀
競合が追い上げる中でNVIDIAの強みとして繰り返し言及されるのが、ハードウェアとソフトウェアを一体で提供するフルスタック戦略だ。特に**CUDA**(NVIDIAのGPU向け並列計算プラットフォーム)は、長年にわたって研究者・開発者のエコシステムに深く浸透しており、競合が短期間で置き換えるのは容易ではない。AIフレームワークの大半がCUDAを前提に最適化されている現状は、NVIDIAにとって技術的優位性であると同時に、業界全体が依存する基盤でもある。
1,500億ドルという数字は、NVIDIAが自社のキャッシュ創出能力に対して相当な自信を持っていることを示す財務的なシグナルである。その自信が正当化されるかどうかは、今後の四半期決算が答えを出していくことになる。
詳細はNVIDIA Boosts Share Buyback by $150 Billion, Betting Big on AI Futureを参照していただきたい。




