9月24日、Techstrong.aiが「Snorkel AI Secures $350M for More Complex AI Training and Evaluation Data」と題した記事を公開した。AI訓練・評価データの開発を手がけるSnorkel AIがシリーズEで3億5,000万ドルを調達し、評価額35億ドルに達したことが明らかになった。
わずか4ヶ月で評価額が3倍に
Snorkel AIの今回の評価額35億ドルは、2025年5月に1億ドルを調達した際の評価額13億ドルから、約3倍に跳ね上がった数字だ。約4ヶ月でこれほど急激に評価が上昇した背景には、同社のビジネスモデルの転換がある。
Snorkelはもともと、AIデータのラベリング・作成ツールをソフトウェアとして販売する企業だった。約1年前、完成済みのデータセットや評価環境を直接提供する「データ・アズ・ア・サービス(DaaS)」事業へと軸足を移した。この新事業が前年比で約18倍の成長を記録している。元記事によれば18倍という数字はDaaS事業単体の売上成長率であり、現在の年換算売上高は3億7,500万ドルを超えているという。ソフトウェアライセンス販売という従来モデルから、データ製品そのものを販売するモデルへの転換が、この急成長を支えた格好だ。
今回のラウンドはInsight PartnersとS32が主導し、Third Point、Marchなどが参加した。
スタンフォード発・プログラマティックラベリングの技術的根幹
Snorkel AIのCEOであるAlex Ratner氏は、スタンフォード大学の研究プロジェクトとして同社を立ち上げた。同大学のAIラボで開発されたプログラマティックラベリング(弱い教師あり学習)の手法が、同社の技術的根幹をなしている。弱い教師あり学習とは、人手によるラベル付けを大量に用意する代わりに、専門家の知識をルールや関数として記述し、それを組み合わせてラベルを自動生成・精錬するアプローチだ。この研究成果を商用化したSnorkelは、データラベリングの効率化ツールとして大手企業や研究機関に採用され、AI開発コミュニティにおける信頼を積み上げてきた。
Ratner氏の主張は一貫している。「AIの進化はデータ中心になる」——これが10年前からの同社の立場だ。
「難しい」訓練・評価データをいかに作るか
最近のAIモデルの高度化に伴い、訓練・評価に使うタスクの難易度も上がっている。単純なラベル付きデータセットでは不十分で、たとえばコーディング系の評価環境では、熟練エンジニアが数日〜数週間かけて取り組むような複雑なソフトウェアエンジニアリングタスクを再現する必要があるという。さらに、モデルの誤りや報酬ハッキング(reward hacking)※といった失敗モードも考慮しなければならない。
※報酬ハッキング:強化学習において、AIが意図した目標ではなく、評価指標を「裏をかく」形で最大化してしまう現象。モデルが高スコアを得るための「抜け穴」を学習してしまうため、評価データ自体の設計品質が問われる。
こうした複雑なデータを作るには、対象分野の専門知識と、AIモデルの失敗パターンに関する知識の両方が必要になる。Snorkelは、コーディング・法律・医療などの分野で数千人規模の専門家ネットワークを保有し、これをAIモデルやエージェントと組み合わせてタスク・評価ルーブリック・品質管理の仕組みを構築している。課金モデルは専門家の労働時間単位ではなく、完成したデータ製品の販売という形を取っている点が特徴的だ。同分野の競合としてはScale AIが知られているが、Snorkelはスタンフォード発の研究技術とDaaS特化のポジショニングで差別化を図っている。
調達資金の用途:オープンベンチマークとAI安全性
Ratner氏によると、今回の資金は以下の領域に投じる予定だ。
- オープンベンチマーク補助金プログラムの拡充:独立したAIベンチマーク開発に資金とデータ開発支援を提供する既存プログラムを大幅に拡大する
- AI安全性向上のための訓練・評価データ開発
- 企業向け特化型モデルのデータ・環境整備:特定の業務フローやユースケースに特化したモデルの開発支援。Ratner氏はこの分野が、今後数年でAIデータ開発の大きな割合を占めると見ている
AI評価データ市場の重要性が高まる中、Snorkelの今回の調達は、モデルそのものの開発と並行して、データ・評価インフラへの投資がどれだけ加速しているかを示す一例といえる。
詳細はSnorkel AI Secures $350M for More Complex AI Training and Evaluation Dataを参照していただきたい。




