9月30日、Blockheadが「OpenAI Seeks at Least $30 Billion at $1.4 Trillion Valuation as Bridge to Delayed IPO」と題した記事を公開した。OpenAIがIPO延期を背景に評価額1.4兆ドル・最低300億ドルのブリッジ調達を模索しているという報道だが、注目すべきは金額の大きさだけではない。IPO時の株価形成に向けた「リファレンスポイント」を民間段階で先取りするという構図が、競合Anthropicとのバリュエーション競争をすでに動かしている。
わずか半年で64%増——1.4兆ドルという数字の意味
Bloombergの報道によれば、OpenAIはプレマネー評価額1.4兆ドルで少なくとも300億ドルの新規資金調達を目指している。交渉はまだ初期段階であり、条件は変わる可能性がある。
この数字は、直近のラウンドと比較すると規模感がつかみやすい。2026年3月、OpenAIはAmazon・Nvidia・SoftBankが共同主導する形で、ポストマネー評価額8,520億ドルで1,220億ドルの資金調達を発表した。当時の月次収益は20億ドルと報告されていた。今回の1.4兆ドルというプレマネー評価額は、その約半年後に約64%上昇した水準だ。さらに、2週間前にFortuneが報じた「投資家との協議では約1.2兆ドルが議題に上っていた」という水準をも上回る。
3月のラウンドは「IPO前最後の調達」と広く見られていた。OpenAIはすでに非公開でIPO申請を済ませているが、CEOのSam Altmanは今月、Fortuneのインタビューで2026年中の上場は行わないと明言した。「安全性をめぐってさまざまなことが起きている今、上場するのは賢明でない」とAltmanは述べ、「2026年はないと言っていい。やることが山積みだ」と付け加えた。
今回の調達は、このIPO延期を受けたブリッジファイナンス(本命の資金調達手段が実行されるまでの一時的な資金手当て)と位置づけられている。
ライバルAnthropicとの評価額競争——競争はすでに進行中
今回のラウンドが成立すれば、OpenAIは民間AI企業として最高評価額の座を取り戻すことになる。
競合のAnthropicは2026年5月時点で9,650億ドルの評価を受けており、現在IPO申請書の草稿がReutersなどにより報じられている。同書類によると、AnthropicはIPO時に2兆ドル超の時価総額を目指しており、11月の米中間選挙後の上場を想定している。両社はともに独自のペースで上場前のバリュエーション引き上げを続けており、競争はすでに始まっている段階ではなく、現在進行形で加速している。
Anthropicの財務実態——巨額損失の内訳
上場評価額2兆ドルを目指すAnthropicだが、IPO申請書が明らかにした財務数値には注意が必要だ。2025年の純損失は約420億ドル、売上高は46億ドルと記載されている。この数字は額面どおりに受け取ると極めて厳しい印象を与えるが、損失の大部分(約340億ドル)は転換型ファイナンスに関連する非現金費用であり、実際の営業損失は80億ドル強にとどまる。OpenAIの評価額と比較する文脈では、Anthropicの財務規模感を正確に把握しておくことが不可欠だ。
上場時のバリュエーション基準を先取りする意味
今回の調達規模は3月ラウンド(1,220億ドル)と比べると小さい。しかし、その評価額の設定が持つ意味は小さくない。
OpenAIとAnthropicはともに今後数年間にわたり、数千億ドル規模のコンピュートへの投資を計画している。Anthropicの申請書には、クラウド・インフラへの計画支出として約5,180億ドルが記載されており、その大半はキャンセル不可の契約だ。
こうした巨額支出を抱える両社が最終的に株式市場に上場する際、投資家はどのバリュエーションで評価すべきか判断の拠り所を求める。OpenAIの今回のブリッジラウンドで設定される価格は、その基準点(リファレンスポイント)になると記事は指摘する。つまり、今回の調達は資金調達としての実務的意義にとどまらず、IPO時の株価形成に向けた地ならしでもある。冒頭で触れた「なぜ今これが重要か」という問いへの答えがここにある——民間市場での評価額が、やがて公開市場での株価の出発点を規定するからだ。
詳細はOpenAI Seeks at Least $30 Billion at $1.4 Trillion Valuation as Bridge to Delayed IPOを参照していただきたい。




