10月6日、Browser-useが「The Best AI Agent Frameworks (2026)」と題した記事を公開した。LLMを使ったエージェント開発が実務に降りてきた今、「どのフレームワークを選ぶか」は設計の出発点になりつつある——しかし選択肢が乱立し、どれも「万能」を謳う状況では、比較軸がなければ選べない。記事ではMastra、LangGraph、OpenAI Agents SDK、CrewAI、Pydantic AI、Vercel AI SDKの6つを、用途・制御の複雑さ・言語スタックの観点から整理している。
まず「用途別の結論」だけ見たい人向け
記事冒頭のTL;DRが実用的なので、そのまま紹介する。
| やりたいこと | 使うべきフレームワーク |
|---|---|
| TypeScriptでエージェント・ワークフロー | Mastra |
| 分岐・状態保持ありの複雑なワークフロー | LangGraph |
| エージェント委任とトレーシング | OpenAI Agents SDK |
| 専門エージェントのチーム編成 | CrewAI |
| 型付き・バリデーション済みPython出力 | Pydantic AI |
| エージェント+ストリーミングWebUI | Vercel AI SDK |
エンジニアが一番悩む「エージェントかワークフローか」問題
記事が丁寧に整理している点として、「エージェント」と「ワークフロー」の使い分けがある。
- エージェント:次のステップをモデルが動的に判断する。サポート調査、リサーチ、コード生成など「次に何をすべきか」が事前に確定しないタスク向け。
- ワークフロー:ステップと遷移をコードで定義する。社員オンボーディング、承認フロー、請求書処理など繰り返し可能なプロセス向け。
両者は排他ではなく、ビジネスルールを守るワークフローの中に、オープンエンドな処理をするエージェントを組み込む構成が現実的な選択肢として挙げられている。どちらを軸にするかは「処理の予測可能性」で判断するのが基本だ。
各フレームワークの要点
Mastra ― TypeScriptオールインワン
MastraはTypeScript向けのオープンソースフレームワークで、エージェント実行・ツール連携・メモリ・ドキュメント検索・ワークフローを1つにまとめている点が最大の特徴だ。ワークフローは分岐・並列処理・人間承認待ちをサポートし、ローカル開発用のMastra Studioでエージェントのテストやプロンプト調整ができる。TypeScriptスタックで完結させたいチームに向く。一方、PythonエコシステムのライブラリやMLツールチェーンとの統合が必要な場合は、他のPython系フレームワークを検討すべきだ。
LangGraph ― 複雑な状態管理はこれ
LangGraphはPython・TypeScript対応で、グラフ構造で実行フローを明示的に定義するフレームワーク。永続ストレージと組み合わせることで「承認待ちで一時停止→再開」が可能になる。LangChainとは独立して動作し、トレーシングや評価は別サービスのLangSmithで行う。研究パイプラインや承認フローなど、実行順序に厳密なルールが必要なケースに強い。ただし、グラフ構造の明示的な定義が必要なため、プロトタイプや単純なエージェントを素早く作りたい場面では記述量が負担になる可能性がある。
OpenAI Agents SDK ― 軽量に始めたいなら
OpenAI Agents SDKはPython・TypeScript対応のオープンソースツールキット。グラフ構造を強制しない設計で、既存アプリケーションへのエージェント機能の後付けに適している。エージェント間の委任(ハンドオフ)と組み込みトレーシングが特徴。OpenAI以外のモデルも利用可能だが、機能はプロバイダーの統合状況に依存する。複雑な状態管理や精密な実行フロー制御が必要な場合は、LangGraphのような専用フレームワークのほうが適している。
CrewAI ― 役割分担型の複数エージェント
CrewAIはPython向けで、リサーチ担当・分析担当・ライター担当のように役割を持たせた複数エージェントが協調する設計思想のフレームワーク。タスクは定義順に実行するか、マネージャーエージェントが調整する形を選べる。Flowsという機能で条件分岐や状態保存も扱える。単一エージェントで完結するシンプルなタスクや、エージェント間の協調オーバーヘッドを避けたい場合には過剰な選択肢となりうる。
Pydantic AI ― 型安全な出力が欲しいPythonチームへ
Pydantic AIは、エージェントの出力形式をPydanticモデルで定義し、バリデーションをかけることに特化したPythonフレームワーク。バリデーション失敗時は自動で再試行を要求できる。情報抽出・分類・構造化レコード生成など、出力の型が厳密に決まっているタスクに向く。なお、バリデーションは「形式が正しいか」のチェックであり、「内容が事実として正しいか」は保証しない。複数エージェントの協調や複雑なワークフロー制御が主目的の場合は、CrewAIやLangGraphとの組み合わせを検討したほうがよい。
Vercel AI SDK ― ストリーミングUIまで一気通貫
Vercel AI SDKはTypeScript向けで、バックエンドのエージェント処理とフロントエンドのストリーミング表示を同一のSDKで扱えるのが特徴。React、Next.js、Vue、Svelteに対応し、チャットUIやコパイロットの実装に向く。Vercelへのホスティングは必須ではない。UIを持たないバックエンド専用のエージェントパイプラインや、Python環境が前提のプロジェクトには不向きだ。
フレームワーク選定の4軸
記事では選定基準として以下の4点を挙げている。
- アプリケーション適合性:言語・モデル・データソースとの相性
- ワークフロー制御:分岐・リトライ・人間承認・状態保存の必要度
- 開発者体験:トレーシング・評価ツールの充実度(エージェントはデバッグが難しいため重要)
- コスト:ツール呼び出しの繰り返しや複数エージェントの並走でモデル利用料が膨らむ点に注意
これらの軸を踏まえると、言語スタックで候補を絞り(TypeScript→Mastra・Vercel AI SDK、Python→それ以外)、次に「状態管理の複雑さ」と「UI連携の有無」で最終選定するという順序が実務的だ。各フレームワークの「何が得意でないか」を把握しておくことが、後からの乗り換えコストを避けるうえで特に重要になる。
詳細はThe Best AI Agent Frameworks (2026)を参照していただきたい。




