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Deep Dive

MiroのCEOが語る「AIを既存チームに乗せるだけでは失敗する」— 生産性を上げたければワークフローを作り直すべき理由

10月8日、The Next Webが「Miro CEO: don't 'put AI on top' of teams to get productivity gains」と題した記事を公開した。MiroのCEO Andrey Khusidが、AIを既存チームや業務プロセスに「乗せる」だけでは生産性向上は得られず、ワークフローそのものをファーストプリンシプルから再設計する必要があると提言している。

10月8日、The Next Webが「Miro CEO: don't 'put AI on top' of teams to get productivity gains」と題した記事を公開した。MiroのCEO Andrey Khusidが、AIを既存チームや業務プロセスに「乗せる」だけでは生産性向上は得られず、ワークフローそのものをファーストプリンシプルから再設計する必要があると提言している。


AIを「上乗せ」するな、という主張の核心

イタリア・トリノで開催されたカンファレンス「Wave by Vento」に登壇したMiro共同創業者兼CEOのAndrey Khusidは、AI導入に関して明確な立場を示した。

「既存チームや業務システムの上にAIを乗せるのではなく、ファーストプリンシプル(第一原理)からワークフローを設計し、その上に人間が価値を加える形にする。これが重要な課題だ」

多くの人が今やClaudeやChatGPTを日常的に使っている。しかし個人レベルの効率化が、組織全体の生産性向上に直結しないのはなぜか。Khusidはその理由を構造的に説明する。

企業の業務は複雑なワークフローで動いており、作業は人から人へと渡っていく。各担当者が文脈の一部を持ち、それが一箇所に集まることはまずない。AIを活かすには、まずその文脈を集約し、チーム全体が共通のベースで動ける状態を作ることが最初の仕事だという。

Miro自身の実践として、同じ業務をAIと並行して処理するチームを別途立ち上げ、そのチームに合わせてプロセスを設計してから全社に展開するという手順を踏んだと明かした。AIありきで業務フローを作り直す実験を、まず小規模で検証したわけだ。


AIが生む「コンテンツの洪水」問題

AIは、普段発言が少ないメンバーが素早くアイデアをプロトタイプ化して共有できる手段を与える。この点はKhusidも肯定的に評価している。

ただし裏返しの問題もある。全員がAI生成のアウトプットをチームに投げつければ、情報量が爆発し、かえって全員の速度が落ちる。「AI workslop(AIが生成する低品質コンテンツの氾濫)」と呼ばれる現象と同じ構造だ(※編集部注:この用語および概念はHarvard Business Review 2024年6月号で言及されているが、元記事への出典記載は確認できていない)。

Khusidの答えはシンプルで、説明責任(accountability)だ。自分がチームに持ち込むものには、一つひとつ責任を持つ。AIが生成したからといって精査を省いていいわけではない、という立場である。


組織の「知性インフラ」を再構築する

Khusidは組織構造の変化についても踏み込んだ。

従来の企業は人間と階層を中心に設計されており、知識は個人の頭の中に分散していた。一方、今のスタートアップは中央に集約された知性(central intelligence)が社内のほぼ全情報を把握し、人はそこにアクセスして意思決定と実行を高速化する構造で動いている。既存企業が個人の頭の中に知識が点在する状態のまま運営されているのに対し、この構造で生まれたスタートアップは文脈を一元管理し、判断と実行のサイクルが格段に速い。それが競合上の脅威となっている、というのがKhusidの見立てだ。

英国の統計(2025年7月公表)では、企業のAI採用率は3倍になったが、大半はまだ軽い使い方にとどまっていると報告されており、「広がっているが深まっていない」状況が続いている。個人が生産性ツールとしてAIを使うフェーズから、組織全体の知識・文脈をAIが扱えるインフラとして再構築するフェーズへの移行が、まだほとんどの企業では起きていないということだ。

Miroのプラットフォームで言えば、チームが共有キャンバス上でリアルタイムに情報を可視化・整理する使い方はその一形態にあたる。Miro自身も、コードの多くがすでにAIの支援で書かれており、AIにより良い文脈を与えるためにシステムの統合も進めている。また今後3年でモデルが何をできるかはすでに見通せるとして、新しいリリースを追いかけるのではなく、その見通しに基づいて製品を構築する方針を明言した。

Miroが目指す近未来像として、人間とAIエージェントが同じキャンバス上で協働し、意思決定の主要手段が音声・会話・ビジュアルになる世界を挙げた。


買収という文脈

なお、Khusidの今回の登壇は、ミラノを拠点とするBending SpoonsがMiroを13億5500万ドルで買収することに合意した1ヶ月後のことだ。Miroの年間経常収益(ARR)は約6億ドルとされており、2022年1月には175億ドルの評価額で4億ドルを調達していた。Khusidは買収の詳細についてはコメントできないとしながらも、イタリアについて「Miroの新たな拠点になるかもしれない」と語った。


詳細はMiro CEO: don't 'put AI on top' of teams to get productivity gainsを参照していただきたい。