10月8日、ZDNetが「Can AI fix legacy IT? The 'economics don't hold up,' says former IBM strategist」と題した記事を公開した。AIがレガシーITのモダナイゼーションを本当に解決できるのか、元IBMチーフストラテジストの分析を交えて検証した内容だ。
「経済的に成立しない」——元IBMストラテジストの直言
モダナイゼーションは何十年もCIOの最優先課題であり続けてきた。Webサービス、マイクロサービス、クラウド移行、仮想化——どれも「次の5年で完了する」と言われながら、気づけば新たな課題が積み上がるループを繰り返してきた。今度はAIがその役を担おうとしている。
だが、元IBMチーフストラテジストでThe Field CTO創業者のAndy Thuraiは冷静に斬る。
「ITモダナイゼーションはもはや慢性疾患の様相を呈している。企業の4割は今もメインフレームを動かしており、『モダナイゼーションが最優先』と言い続けながら、ゴールは常に5〜10年先にある」
さらに本質を突く指摘がある。「組織はソフトウェアを買い続けることに依存しており、その下のレガシーシステムはほぼ廃止されない。AIは今、その技術的負債を解消する地道な作業からの、最新の目を引く逃げ道になっている」
そして最も重いのがコストの問題だ。「ベンダーはAIをIT幹部に万能薬として売り込んでいる。しかし経済的に成立しない。AIがインフラの肥大化を招くと、月次コストがブラックボックスになる」とThuraiは述べる。
Thuraiの発言には背景がある。彼はIBMから2021年にスピンオフし独立上場したITインフラサービス大手Kyndrylの戦略部門に長年携わってきた人物であり、大規模モダナイゼーション案件の現場を知る立場からの発言だ。その深刻さは、Kyndryl自身が実施した大規模調査の数字にも裏付けられている。
調査が示す現実——「成功」はまだ少数派
KyndrylはIBMからのスピンオフ後、独立したITサービス企業として2,000人のIT上級意思決定者を対象にモダナイゼーションの実態調査を実施した。結果は厳しいものだ。
モダナイゼーションを進めている組織のうち、ITオペレーションの改善を実現できたのは約半数にとどまり、イノベーションの成果を得られているのも半数以下に過ぎない。とりわけ深刻なのは、18%が「限定的または不明瞭な価値しか得られなかった」と回答している点だ。調査でも、3割のリーダーがすでにAI主導のモダナイゼーションが予測不能なコンピューティングコストに終わることを懸念している。
さらに約半数がスケジュール遅延とコスト超過に直面しており、モダナイゼーションプロジェクトの失敗が常態化しているという業界全体の傾向とも一致する。そして現時点でエージェント型AIをモダナイゼーションに活用しているのは、**わずか10%**のIT責任者に過ぎない。
エージェント型AIへの期待と限界
それでもKyndrylのレポートは、エージェント型AI(自律的にタスクを計画・実行するAIシステム)に一定の可能性を見出している。従来のモダナイゼーションが「メインフレームをより新しいシステムに置き換える」ことに終始していたのに対し、エージェント型AIの焦点は具体的なビジネス能力の拡張にある。
実用面では、以下のような用途で早期の成果が出始めているという。
- システム間の隠れた依存関係のマッピング
- コード自動生成
- ドキュメント自動作成
これらは従来、数ヶ月単位の手作業と膨大なエラー対応を必要としていた領域だ。実際、エージェント型AIを導入していない組織は、導入済みの組織と比べてスケジュール遅延に陥る可能性が顕著に高いとレポートは指摘する。
ただし、Thuraiはここでも釘を刺す。「ボルトオン的なチャットボットを超えた組織」にとっては有効な手段になり得るが、エージェント型AIで構築した今日のアーキテクチャが、いずれ誰かがモダナイズしなければならないレガシー環境になるのは避けられないと述べている。
モダナイゼーションは終わらない——AIはその最新の章に過ぎないということだ。
詳細はCan AI fix legacy IT? The 'economics don't hold up,' says former IBM strategistを参照していただきたい。




