10月9日、OpenAIが「How Oracle turns days of work into minutes with ChatGPT and Codex」と題した記事を公開した。Oracleが社内業務にChatGPT WorkおよびCodexを導入し、採用・分析・エンジニアリングの各領域で作業時間を数日から数分に短縮した事例を詳しく紹介している。
10万人超が使う企業内AI活用の実態
Oracleでは現在、10万人以上の従業員がChatGPT WorkおよびCodexを業務で利用している。採用部門、Oracle Applications Lab、IT組織など、部署をまたいで導入が進んでおり、「専門家が数日かけてやっていた仕事を、誰でも数分でこなせるようになった」という状態が複数の部門で実現されている。
なお、本記事に登場するCodexは、OpenAIが提供するコード生成に特化したAIモデルである(OpenAI Codex)。自然言語の指示からコードやSQLクエリを生成する用途に強みを持ち、ChatGPT Work(企業向けに展開されるChatGPTの業務利用形態)と組み合わせる形でOracleの各部門に導入されている。
採用リサーチが「2〜4日」から「15〜20分」に
最も具体的な数字が出ているのが採用部門の事例だ。
OracleのGlobal Head of Talent AcquisitionであるJan Ackermanが率いるチームは、ChatGPT Workを使ってタレントマーケットインテリジェンスツールを構築した。このツールは、求人票を入力すると類似ポジションの調査、報酬水準のベンチマーク、各拠点における人材プールの評価を自動で行う。
「私たちはゼロから百まで変わった。以前は2〜4日かかっていたリサーチが、今ではWorkで構築したツールを使って15〜20分の準備で済む。」
— Jan Ackerman, Senior Vice President and Global Head of Talent Acquisition, Oracle
速度だけでなく一貫性も改善された。以前は担当リクルーターによって採用前の情報収集プロセスがまちまちだったが、ツール導入後はどのリクルーターが担当しても、採用マネージャーに提示されるデータの品質が均一になった。
「SQLを書かなくていい」ビジネスユーザーの変化
Oracle Applications Labチームは、社内システムの構造(オブジェクト、関係、ルール)をオントロジー(※知識の関係性を体系的に定義した構造)として整備した上で、自然言語の質問をCodexが信頼性の高いSQLクエリに変換する仕組みを構築した。ビジネスユーザーは「何を知りたいか」を自然言語で説明するだけで、Codexが適切な内部システムを選択し、データを収集して分析結果やレポートを返す。
Group Vice PresidentのRichard Lamは、あるユーザーの体験を紹介している。通常なら数時間かかる質問を投げたところ、「ツールに入力したらほぼ即座に回答が返ってきた」と報告を受けた。従来の手動プロセスと照合したところ、数値は完全に一致していたという。
「ビジネスユーザーがレポートを探し回る代わりに、欲しいアウトカムを言葉で説明するようになった。これはビジネストランスフォーメーションと呼んでもいい変化である。」
— Richard Lam, Group Vice President, Oracle Applications Lab
SREへの適用——インシデント対応が「1時間」から「数分」に
分析・レポート領域にとどまらず、本番環境のエンジニアリング(SRE)領域でもCodexの活用が進んでいる。
Oracle Applications Labでは、Codexを使ってインシデント発生時の関連コンテキストを自動収集し、適切なプレイブック(※障害対応手順書)を引き出す仕組みを本番稼働させている。「以前は1時間かかっていた単純なインシデント対応が、今では数分で完了する」とLamは述べている。
SRE文脈でのAI活用は、障害対応の属人性を下げる手段として注目されているが、Oracleの事例が示すのはその先——対応フローそのものをAIが補助する構造への移行である。ただしLamは、AIが生成したプレイブックや対応手順についても、最終的な判断と責任は人間のエンジニアが持つべきであると強調している。
「自動化されても人間が責任を持つ」という原則
Oracleの事例で一貫して強調されているのは、AIが作業を担ってもアウトプットの責任は人間にあるという点だ。記事では以下の3つの教訓が挙げられている。
- 適切なガードレールを設ける。 システム設計、アーキテクチャ、セキュリティについての責任は依然として人間が持つ。Codexにコードの構造化方法を任せる際も同様だ。
- 仕様書よりプロトタイプで伝える。 CIOへのテクニカルアドバイザーであるBarry Shilmoverは、「以前はアイデアを紙に書いていたが、今はプロトタイプに落とす」と説明している。これはCodexによってプロトタイピングのコストが下がったことで、ドキュメントよりも動くものを先に示す文化が生まれていることを意味する。
- コードのオーナーシップを持つ。 「Codexと並走しなければ、メンテナンスできないコードが大量に生まれる状況に陥る」とLamは警告している。生成されたコードを理解・管理できるエンジニアが伴走することの重要性は、AI活用が進むほど増すという逆説的な教訓である。
Shilmoverの姿勢はこの3点を体現している。「次に何を解決するかまだわからないが、まず最初にCodexを使うことだけは確かだ」という言葉は、ツールへの依存ではなく、AIを思考の出発点として組み込んだ働き方への転換を示している。
今後の展開
Oracleは採用・分析・エンジニアリングの各領域で、業務の進め方そのものをAIを前提とした形に移行させている。個別のタスク自動化にとどまらず、意思決定プロセスやナレッジ共有の構造までが変わりつつある点が、この事例の本質といえる。
詳細はHow Oracle turns days of work into minutes with ChatGPT and Codexを参照していただきたい。




