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Deep Dive

NetflixがAI活用300タイトルを公式認定 — 「ヒューマンタッチは不可欠」、それでも韓国映画監督はコスト40%削減を試算する

10月11日、The Hollywood Reporterが「Netflix Has Used AI on About 300 Titles, but "Human Touch Is Critical," Exec Says in Busan」と題した記事を公開した。釜山国際映画祭でNetflix幹部が「約300タイトルにAIを活用済み」と公式に認めた一方、同席した韓国映画監督は現在進行中の新作でAIによるコスト40%削減を試算しているという。「人間の感性は守る」という慎重論と、産業の経済的現実を前にした積極活用論が、一つのパネルで交差した。

10月11日、The Hollywood Reporterが「Netflix Has Used AI on About 300 Titles, but "Human Touch Is Critical," Exec Says in Busan」と題した記事を公開した。釜山国際映画祭でNetflix幹部が「約300タイトルにAIを活用済み」と公式に認めた一方、同席した韓国映画監督は現在進行中の新作でAIによるコスト40%削減を試算しているという。「人間の感性は守る」という慎重論と、産業の経済的現実を前にした積極活用論が、一つのパネルで交差した。


NetflixがAI活用300タイトルを公式に認める

釜山国際映画祭(BIFF)で開催されたNetflixの年次イベント「Creative Asia」において、同社アジア太平洋担当シニアディレクターのSung Q Lee氏が、Netflixがすでに約300タイトルにわたってAIをさまざまな形で導入済みであることを明かした。

Lee氏によれば、AIの活用領域は以下の通りだ。

  • プリビジュアライゼーション(本撮影前に映像をシミュレーションする工程)
  • プロダクションデザイン
  • セットドレッシング(撮影セットの装飾)のコンセプト立案
  • 編集
  • VFX

ただし、Lee氏が強調したのは「AIをどれだけ詰め込めるか」ではなく、「AIの助けを借りてこの作品が何をより多く実現できるか」という問い方の違いだ。人間の創造的判断を守ることの重要性を繰り返し訴えた。

「感情を伝えるという点では、最終的に人間が触れなければならない。AIは多くの仕事をこなせるが、人間の感情に触れられるか?ヒューマンタッチは不可欠だ」とLee氏は語った。


韓国映画監督が語るAIのリアルな経済効果

パネルには韓国の映画監督カン・ユンソン氏(『犯罪都市』シリーズ監督)も参加した。カン氏はAIツールの積極的な採用者として知られており、昨年は自称"AIフィルムメーカー"のクォン・ハンソル氏と共同で、韓国初の"完全AI支援"長編映画『Run to the West』を共同監督した。

しかし同作は興行的に苦戦し、興収は元記事によれば約10万ドルにとどまった。AI映像に対するネガティブな評判が影響したとみられ、カン氏自身も「公開時点ですでに映像が時代遅れに見えた」と認めている。それでもカン氏はAIの可能性に対する姿勢を変えていない。

現在カン氏が制作中のアクション映画『The Gulf of Aden』では、中国のKwai(快手)傘下が開発した生成AI動画ツール**Kling AIを多用している。Kling AIはテキストや静止画から高品質な動画を生成できるツールとして知られ、日本を含むアジア圏のコンテンツ制作者の間でも注目を集めている。カン氏はこの作品でのAI活用によって制作コストを約40%削減**できると試算している。

「節約分を計算すると約40%の削減になった。CGやVFXの代替だけではなく、撮影自体が効率化されて制作期間も短縮された」とカン氏は述べた。予算の制約によって「韓国映画産業の成長を妨げてきた」ボトルネックを、AIが解消しつつあると位置づけている。

この40%という数字はあくまでカン氏個人の試算であり、韓国映画産業全体の傾向を示すものではない。ただ、こうした具体的な経済的試算が第一線の監督から語られること自体、AI活用をめぐる議論が「理念」から「実務」の段階に入りつつあることを示している。


VFXスタジオWētā FXの立場:「補助的AIに留める」

パネルにはVFXスタジオ**Wētā FX**(『ロード・オブ・ザ・リング』などで知られる)のCTO、キンボール・サーストン氏も参加した。同氏はAIの現在の活用を「assistive AI(補助的なAI)」と表現し、「クリエイティブな意図を変えることは許容しない」というスタンスを明確にした。

「監督や撮影監督の視点から、AIが非常に速く視覚イメージを提供してくれるので、誤りを特定して修正しやすくなる。目標は単純で反復的なタスクを減らすことだ」とサーストン氏は説明した。Wētā FXの立場は、AIを創造的意思決定の外側に置きつつ、制作効率の改善には積極的に活用するという折衷的なものだ。


ハリウッドとアジアの温度差

記事が指摘する興味深い点として、AIに対する姿勢のハリウッドとアジアコンテンツ産業の差がある。ハリウッドのクリエイティブコミュニティがAIに強い警戒感を持つ一方、アジア側はおおむね「機会」として捉えている。

この温度差の背景には、労使関係の構造的な違いがある。2023年のWGA・SAGストライキは、AIによる脚本・演技データの無断利用や雇用侵食への強い懸念を主要争点のひとつとしていた。組合組織が強く、権利保護の枠組みが整備されているハリウッドと、そうした制度的背景が異なるアジアの映画産業では、AIリスクの受け止め方が根本的に異なるのは自然なことだとも言える。

NetflixのLee氏は、AIを映画産業がこれまで経験してきた技術革命の延長として位置付けた。「技術変化は"どう作るか"を大いに助けてきた。しかし"なぜ作るか"を決めることは一度もなかった」と述べ、AIもその文脈で捉えるべきだという考えを示した。「どう作るか」の変革を受け入れながら「なぜ作るか」の主体性を人間に留める——この線引きが、今後の業界標準をめぐる議論の核心になっていくだろう。


詳細はNetflix Has Used AI on About 300 Titles, but "Human Touch Is Critical," Exec Says in Busanを参照していただきたい。