10月17日、Browser Useが「The Best MCP Servers for Browser Automation (2026)」と題した記事を公開した。ブラウザ自動化用MCPサーバー11種を100タスクで実測比較した結果、スコアに統計的有意差はなく、ツール選定の実質的な決め手はトークンコストだったという。最も効率的なBrowser Harnessと最もトークンを消費するChrome DevTools MCPとの間には約3倍の入力トークン差があり、長時間タスクではこの差がコストに直結する。
Model Context Protocol(MCP)は、Claude CodeやCursorといったAIアプリが外部プログラムのツールを呼び出すための仕組みだ。ブラウザ自動化向けのMCPサーバーは、「ページを開く」「クリックする」「テキストを入力する」「スクリーンショットを撮る」といったブラウザ操作をツールとして公開する。2025年以降、AIコーディングエージェントの普及に伴い、このカテゴリのツールが急増している。
実測結果:スコアは横並び、差はトークン消費量
Browser Useは、BU Bench V2.1から100タスクを使い、同一エージェント・同一クラウドブラウザ・同一評価基準でPlaywright MCP、Chrome DevTools MCP、Browser Harness、agent-browserの4ツールを比較した。
| ツール | スコア(0〜100) | 中央値 入力トークン/タスク | 中央値 コスト/タスク | 中央値 時間/タスク |
|---|---|---|---|---|
| Browser Harness | 60.4 | 2.1M | $0.042 | 9.0分 |
| Playwright MCP | 60.0 | 4.4M | $0.066 | 8.3分 |
| Chrome DevTools MCP | 61.0 | 6.7M | $0.097 | 8.7分 |
| agent-browser | 56.3 | 3.3M | $0.056 | 11.3分 |
スコアに統計的有意差はない。 Browser Harness対Playwright MCPの差は+0.4点(95%区間:-5.7〜+6.6)、Chrome DevTools MCP対Browser Harnessは-0.6点(-6.6〜+5.6)、agent-browser対Browser Harnessは+4.0点(-1.8〜+10.0)。いずれの区間もゼロを含む。
一方、Browser Harnessの入力トークンはPlaywright MCPの約半分、Chrome DevTools MCPの約3分の1だった。長時間タスクではトークンコストが支配的になるため、この差は実運用で効いてくる。詳細なデータはdata fileで公開されている。
ツール選定の4つの判断軸
- どのブラウザを使うか — ログイン済み作業なら自分のChrome。テストなら隔離プロファイル。並列・無人実行ならクラウドブラウザ。
- 低レベルツールか、エージェント丸投げか — ほとんどのサーバーはクリックやページ読み取りを個別ツールとして公開する。Browser Use CloudやBrowserbaseは自然言語の指示を受け取りエージェントが実行するため、生のページスナップショットがコンテキストに入らない。
- コンテキストコスト — ページスナップショットを読むたびに入力トークンが発生し、長いタスクではここが最大のコストになる。
- 料金とライセンス — ローカルサーバーは無料・オープンソース。クラウドサーバーはブラウザ時間課金。
主要サーバー別の使い分け
Playwright MCP(テスト・クロスブラウザ確認に)
Playwright MCPはMicrosoftの公式実装。Playwrightのアクセシビリティツリーでページを読み取るため、ビジョンモデル不要で動作する。--isolatedフラグでセッションをメモリ上に保持し毎回クリーンな状態で起動、--browserでChrome・Firefox・WebKit・MSEdgeを切り替えられる。ライセンスはApache-2.0、無料。
claude mcp add playwright npx @playwright/mcp@latest
Chrome DevTools MCP(パフォーマンス・ネットワーク調査に)
Chrome DevTools MCPはChromeチーム製。パフォーマンストレース記録、ネットワークリクエスト検査、ソースマップ付きスタックトレースでのコンソールメッセージ読み取りが可能。--autoConnectで起動済みのChromeに接続できる。デフォルトで使用統計をGoogleへ送信する点は注意が必要で、--no-usage-statisticsで無効化できる。ライセンスはApache-2.0、無料。
claude mcp add chrome-devtools --scope user npx chrome-devtools-mcp@latest
Browser Harness(ログイン済みChromeをエージェントに渡す)
Browser HarnessはBrowser Use製のオープンソースツール。CDP(Chrome DevTools Protocol)経由で手元のChromeに接続し、browser_clickやbrowser_screenshot、browser_js、生のbrowser_cdpなど23種のツールを公開する。トークン効率が最も良く、クラウドブラウザ($0.02/ブラウザ時間)にも対応。ライセンスはMIT、無料。
claude mcp add browser-harness uvx --from 'browser-harness[mcp]' browser-harness-mcp
Browser Use Cloud MCP(並列タスクをクラウドに丸投げ)
Browser Use Cloud MCPサーバーはhttps://api.browser-use.com/v3/mcpでホスト。run_sessionに自然言語のタスクを渡すとクラウド上でブラウザエージェントが実行され、get_sessionで結果・コスト・ライブURLを取得できる。ページスナップショットがコーディングエージェントのコンテキストに入らないのが利点。新規プロジェクトでは最大10ブラウザの並列実行が可能。料金はブラウザ$0.02/時間、モデルトークンはプロバイダー料金の1.2倍、プロキシ通信は元記事記載の料金体系に従う(数値は元記事で要確認)。
claude mcp add -t http -H "Authorization: Bearer YOUR_API_KEY" browser-use https://api.browser-use.com/v3/mcp
そのほかのサーバー
- Browser Use Open-Source MCP — ローカルChrome/Chromiumを起動し、直接ツールとフォールバック用エージェントを公開。自前のOpenAI/AnthropicキーでローカルLLMを使いたい場合向け。MIT、無料。
- agent-browser — Vercel Labs製のRustネイティブCLI。
agent-browser mcpでstdio MCPサーバーとして起動。デフォルトのcoreプロファイルはコンテキストを小さく保つ設計。Apache-2.0、無料。 - Browserbase MCP — Stagehandベース。
act(「ログインボタンをクリックして」)、observe、extractなど自然言語ツールを提供。デフォルトモデルはGemini 2.5 Flash Lite。 - Kernel MCP — PlaywrightコードをKernelのクラウドブラウザで実行。
- Steel MCP — ブラウザをユーザーに渡してログインを手動で完了させるワークフロー向け。
- Hyperbrowser MCP — スクレイピング・クロール・データ抽出を1回のツール呼び出しで実行。
まとめ:スコアではなくコスト構造で選ぶ
今回の実測が示す最大の教訓は、ベンチマークスコアだけでツールを選ぶのは危険という点だ。4ツールのスコアは60点前後に集中しており、信頼区間はいずれもゼロをまたぐ。つまり「どれが最も賢いか」という問いに実測は答えを出せていない。
代わりに実質的な差として現れたのがトークン消費量だ。ページスナップショットをコンテキストに読み込む低レベル型サーバーは、タスクが長くなるほど入力トークンが積み上がる。Browser Harnessが2.1Mトークン/タスクで収まる一方、Chrome DevTools MCPは6.7Mトークン/タスクに達した。同じ成功率でもコストは約2.3倍開く計算になる。
用途別の基本的な選択肢をまとめると:テスト・クロスブラウザ確認はPlaywright MCP、デバッグはChrome DevTools MCP、手元のChromeをエージェントに渡す場合はBrowser Harness、並列クラウドタスクはBrowser Use Cloud MCPとなる。ただし、クラウド型はブラウザ時間・モデルトークン・プロキシ通信の3軸で課金が発生するため、タスクの規模によってはローカル型のほうがトータルコストを抑えられる場合もある。実測データを参照しながら自分のユースケースに照らし合わせるのが現実的だ。
詳細はThe Best MCP Servers for Browser Automation (2026)を参照していただきたい。




