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Deep Dive

「AIで仕事したのに"自分でやった"と言える時代」— 採用面接が問い直されるいま、エンジニアが直面する「使える」と「わかる」の境界線

10月18日、Brent Ozarが「Thoughts on AI After My Panel Discussion」と題した記事を公開した。AIを「使った」と言える人が増えるほど、「本当に理解しているか」を問う手段が失われていく——採用現場で起きているその矛盾を軸に、キャリア・雇用・ローカルモデルの実態まで幅広く論じた読み応えのある一本だ。

10月18日、Brent Ozarが「Thoughts on AI After My Panel Discussion」と題した記事を公開した。AIを「使った」と言える人が増えるほど、「本当に理解しているか」を問う手段が失われていく——採用現場で起きているその矛盾を軸に、キャリア・雇用・ローカルモデルの実態まで幅広く論じた読み応えのある一本だ。


全ブランドのAIを「ほぼ全員が使っている」という現実

記事はOrlandoで開催されたDay of Data Orlandoでのパネルディスカッションの振り返りだ。登壇者はSQL ServerやAzureの著名人であるBob Ward、Kevin Feasel、Rob Volkらで、テーマは「AIはキャリアにとってサイドキックか、ヒーローか、ヴィランか」。

そこで著者が会場に手を挙げてもらったところ、Anthropic・Google・Microsoft・OpenAIの各AIブランドについて、ほぼ全員が全ブランドを使っていると回答した。登壇者も含め、これには誰もが驚いたという。参加者は管理職や経営幹部ではなく、開発者・DBA・BIプロフェッショナル・学生だ。「AIが普及している」というだけでなく、「特定の1社に収束せず、全ブランドが横断的に使われている」という事実が際立っている。


採用現場で問い直される「スキルの証明」

記事の中で最も読み応えがあるのが、採用・面接に関する考察だ。

著者が知人から聞いた話として、「AIで作業したことをあたかも自分でやり遂げたかのように履歴書に書く候補者が増えている」という問題が紹介されている。表面的には「やった」と言えるし、プロジェクト中の課題についても流暢に語れる。しかし「その課題をどう解決したか」を深掘りすると、途端に答えが崩れるという。

著者はこれを「Availability Group(SQL Serverが提供する高可用性・災害対策機能)をセットアップウィザードで構成した人が『設定したことがある』と言うのと同じ」と例える。そして問われるべき質問そのものが変わるべきだと指摘する——「やったことがあるか」ではなく、「既存のセットアップが正しいか判断できるか」「壊れた構成をトラブルシュートできるか」を問うべきだ、と。

ただし著者はこれに明確な答えを出していない。ローカルモデルの性能が急速に向上している現状を踏まえると、「AIなしで作業する環境」がどこまで続くかも不明だからだ。元記事のトーンもあくまで個人の観察・伝聞ベースであり、断定というより問題提起として読むのが適切だろう。


「大手AIがIPO失敗したら?」への現実的な答え

会場から「AnthropicやOpenAIのIPOが失敗したらどうなる?」という質問が出た。Rob Volkの回答は端的で、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻に近い衝撃になるだろうというものだ。景気後退が起き、政府が対応に追われる、と。

これに対して著者は「それでもAIは止まらない」と補足している。Qwen(Alibaba Cloudが開発するオープンソース系LLMシリーズ)やDeepSeek(中国の研究機関が開発した高性能オープンソースLLM)といったモデルは、すでにローカル環境で動作する。著者が言及しているDwarfStarは、Redisの作者として知られるSalvatore Sanfilippo(ハンドルネーム:antirez)が開発したOSSアプリとされており、MacやNVIDIA GPU搭載PCでこれらのモデルを動かすための環境として紹介されている(※リポジトリの詳細は元記事のリンクを参照のこと)。著者自身、ラップトップ上でこれらを使っており、「今後新しいオープンソースモデルが出なくても、もう以前の働き方には戻れない」と明言している。


「リストラされないためにはどうすればいいか」に銀の弾はなかった

会場からは「どうすれば解雇を避けられるか」という趣旨の質問が複数上がった。AIを使って生産性が上がった結果、会社が人員削減に踏み切るのではないかという不安だ。

Tim Radneyの助言が現実的だ。「40時間で全部の仕事が終わるようになったら危険信号」——その状態になったら、次に会社が解決したい問題を先回りして探す必要がある。また、「素早く正確な答えを出せる人物」として社内で可視化されていることも重要だと述べた。

一方、複数のパネリストが強調したのは「会社は従業員のためではなく、オーナーのために存在する」という事実だ。長時間働いても会社はそれを報いない——これはAIが引き起こしたことではなく、以前からの現実だという。

著者は半ば冗談としてr/overemployed——複数のフルタイムリモート職を掛け持ちするノウハウを共有するSubreddit——を紹介しつつも、「ため息が出る」と締めくくっている。


※編集部の考察:AIツールを既に使いこなしているエンジニアほど、次の問いに直面している——「使えること」と「理解していること」の境界線をどこに引くか。採用側も被雇用側も、まだその答えを持っていない。

詳細はThoughts on AI After My Panel Discussionを参照していただきたい。