10月20日、How-To Geekが「A developer used AI to build 7 free Adobe alternatives, and subscription software has a new problem」と題した記事を公開した。この記事では、開発者Brandon ThomasがAIを活用してAdobe Creative Cloudの代替ツール7本を数日で構築したプロジェクト「ArtCraft」と、それがサブスクリプションビジネスモデルに与える影響について詳しく紹介されている。
「数日で7本」——AIが変えた開発コスト
ThomasがArtCraftを作った動機は2つだ。1つはAdobeの悪質な解約ポリシー(月額払いの年間プランには早期解約手数料が発生するが、契約時に気づかないユーザーが多い)への不満。もう1つはLinux向け既存代替ツールへの不満で、Hacker NewsへのThomasの投稿には「GIMPやKrita、Inkscapeが最善の選択肢である現状にはうんざりしている」と書かれている。
そこでThomasは小規模チームを組み、AIとRustを使って数日間でPhotoshop・Premiere Pro・Lightroom相当の7本を含むAdobe代替アプリを構築した。現時点ではいずれもアーリーアルファ版だが、Thomasは「数ヶ月以内にAdobeアプリと同等の機能に到達できる」と見込んでいる。
なお、開発言語にRustを選んだ理由として、元記事ではパフォーマンスとメモリ安全性が挙げられている。画像・動画処理のような計算負荷の高い処理においてRustは有利であり、AIによるコード生成との組み合わせで開発効率と実行速度の両立を狙った選択と読める。
Photoshop代替のPhotoCraftを例にとると、UIはPhotoshopに酷似しており、レイヤー・フィルター・PSDファイルのサポートも備えている。ただし、フィルターが期待通りの結果を出さないといった不具合報告も上がっており、開発者側もPhotoshopのエフェクトとの互換性ギャップを認めている。Adobeが数十年かけて磨き上げたソフトウェアとの差は歴然としているが、「数日で動くものが出てきた」という事実のインパクトは別の話だ。


「大きなチームと予算」がなくても戦える時代
PhotoshopやPremiere Proと競合するソフトを作るには、従来は大規模な開発チームと数年単位の開発期間が必要だった。それがAdobeやMicrosoftを競争から守る参入障壁でもあった。
AIツール(記事ではClaudeが例示されている)を使えば、コーディングとデバッグの速度が劇的に上がる。 テスト・バグ修正・継続的なメンテナンスは依然として人間が担う必要があるが、「立ち上げまでのコストと時間」は大幅に圧縮できる。ArtCraftはその実例だ。
Hacker NewsのスレッドではThomasへの称賛の一方、懐疑的な声も出ている。
「外見はPhotoshopそのものだが、プロの現場で使えるレベルになるまでの距離は見た目よりはるかに遠い」
「でも重要なのはそこじゃない。数日前には存在すらしなかったものが、今はダウンロードして試せる。これが今後のペースを示している」
Adobeだけでなく、Microsoftも標的に
ThomasはArtCraftをAdobe代替だけにとどめていない。すでにMicrosoft Word代替のWordCraft、Excel代替のGridCraft、PowerPoint代替のDeckCraftのアルファ版も公開している。Microsoftアプリの代替としてはまだ実用レベルには程遠いが、Adobe代替と同じく数日という短期間でここまで到達した速度感は、記録しておくべき事実だ。
ArtCraftはオープンソースで公開されているが、同じアプローチをとる次の開発者が有料モデルを選ぶ可能性もある。AIによって参入障壁が下がれば、「高すぎる」「ニーズを満たしていない」と感じる商用ソフトに対して、経験ある開発者が次々と対抗ソフトを作り始めるかもしれない。
サブスクリプションモデルが崩壊するとは言い切れないが、「無料で十分使えるものが増える」状況が続けば、企業側は月額課金を正当化する理由をより明確に示す必要が出てくるだろう。
詳細はA developer used AI to build 7 free Adobe alternatives, and subscription software has a new problemを参照していただきたい。




