10月22日、GBHackersが「Arrakis Security Report Finds 76% of AI Agents Are Dormant but Keep Their Credentials and Connections」と題した記事を公開した。この記事では、AIエージェントの76%が休眠状態にあるにもかかわらず認証情報やトリガーが有効なまま放置されているという、Arrakis Securityの調査報告について詳しく紹介されている。
「誰も削除しない」——AIエージェントが生む放置リスク
AIエージェントの導入が企業に広がる中、その後始末に関するセキュリティ管理が追いついていない実態が数字で示された。
Arrakis Securityは、AIエージェント向けセキュリティ専業のスタートアップだ。同社が公開した「2026 Autonomous Agents Threat Report」によると、稼働中として登録されているAIエージェントの76%が、過去60日間まったく実行されていない。さらに44%は180日以上実行されていない。にもかかわらず、それらのエージェントが保有する認証情報(クレデンシャル)は依然として有効であり、外部イベントに応答するトリガーも生きたままだ。
このレポートは、Arrakisの顧客環境に展開された数千のAIエージェントから収集した12週間分の匿名プロダクションテレメトリをもとにしている。
Arrakis SecurityのCEO兼共同創業者であるTal Baron氏はこう述べている。
「AIエージェントのリスクについては議論が多いが、データはほとんど存在しない。従業員が退職すれば、その日のうちにアクセス権は削除される。しかしエージェントが使われなくなっても、誰も何も削除しない。多くの企業ではエージェントのオーナーシップが曖昧だからだ」
従業員アカウントのライフサイクル管理(オフボーディング)は多くの企業で確立されているが、AIエージェントに対する同等のプロセスがほぼ存在しないという盲点を突いた指摘だ。IAM(Identity and Access Management)の文脈では人間のアカウントに対するプロビジョニング・デプロビジョニングは標準的な管理対象だが、AIエージェントはその対象外として扱われているケースが大半だという。
外部から起動できる、権限を越えて動く
放置そのものが問題なだけではない。休眠エージェントが実際に悪用されうる経路も明らかになっている。
最も深刻な発見のひとつが、外部からの無署名Webhookによる起動だ。 休眠エージェントの24%は、組織外からの署名なしWebhookによって起動可能な状態にある。つまり、正規の認証を経ずとも外部の攻撃者がエージェントを動かせる可能性がある。
さらに以下の問題も確認されている。
- 22%のエージェントが、サードパーティが運営するモデルにコンテンツを送信し、その返答に基づいて行動できる構成になっている
- 20%のエージェントが、異なる権限を持つ別のエージェントにタスクを渡し、自身では取得できないはずの結果を受け取れる(いわゆる権限昇格の迂回経路)
- 70%のエージェントが、クラウドストレージ・AIサービス・マーケティングプラットフォームなどの機密システムに接続可能であり、それらの接続のほぼすべてでDLP(データ損失防止)の検証が行われていない
- 82%のエージェントが少なくとも1つのセキュリティ上の露出(エクスポージャー)を抱えており、そのうち46%は複数の露出を持つ
これらの数字は、エージェントの「休眠」が単なる非効率の問題ではなく、攻撃対象領域(アタックサーフェス)の拡大として直結していることを示している。
Arrakis Securityのアプローチ
Arrakis Securityは、AIエージェントのセキュリティ管理を「エージェントが何であるか」「何をするか」「なぜそうするか」という3層で捉えるアプローチを取っている。同社が用いる以下の略語は、現時点ではArrakis独自の製品・機能カテゴリとして定義されたものであり、業界横断の標準用語として定着しているわけではない点に留意されたい。
- AI-SPM(AI Security Posture Management/AIセキュリティポスチャー管理):実行されていないエージェントを含め、各エージェントの構造・権限・ツール・メタデータを1時間ごとにスキャンし、シャドーエージェント(管理外エージェント)・露出したAPIキー・設定ミスを検出する
- AI-TDR(AI Threat Detection and Response/AI脅威検知・対応):エージェントの行動をリアルタイムで監視し、定義されたルールやポリシーからの逸脱を検知。各エージェントの履歴・ポスチャー・ランタイム・コンテキストから行動モデルを構築し、継続・エスカレーション・介入を判断する
フルレポートはarrakis.security/2026-threat-reportで公開されている。
なぜ今、この問題が顕在化するのか
AIエージェントの普及加速とともに、こうした「ライフサイクル管理の空白」は構造的な問題として広がりつつある。LangChainやAutogenなどのフレームワークを用いた自律エージェントの構築が容易になり、部門横断・担当者個人レベルでのエージェント展開が急増している。その結果、IT部門やセキュリティ部門が全体像を把握しきれないまま、認証情報を持つエージェントが組織内に積み上がっていく構図だ。
従来のIAM管理では「人間のアカウント」を前提に設計されたガバナンスプロセスが中心であり、エージェントという非人間的なアクターに対応するフレームワークは整備途上にある。Arrakisのレポートが示す数字は、この構造的なギャップを定量的に可視化した点で注目に値する。
詳細はArrakis Security Report Finds 76% of AI Agents Are Dormant but Keep Their Credentials and Connectionsを参照していただきたい。




