10月26日、My Electric Sparksが「UK AI Biosecurity Lab Gets 100 Million Government Fund」と題した記事を公開した。英国政府がAIを活用したバイオセキュリティ専門ラボを設立すると発表したもので、政府の1億ポンドの公的資金を軸に、OpenAIとAnthropicのクレジット・リソース提供を加えた最大3億ポンド規模のパッケージが組まれる。ただし注目すべきは資金規模だけではない——防衛目的で構築したAIが攻撃側にも転用されうるという「両刃の剣」のジレンマを、ラボは設立当初から抱えている。
AIが生む「両刃の剣」問題をラボ自身が抱える
この取り組みで見落としてはならないのが、ラボ自体が内包するジレンマだ。記事は明示的にこう指摘している——「高性能なAIシステムは新たな生物学的リスクも生み出す。有害な活動への障壁を下げる可能性がある」。
つまり、防衛目的で構築したAIが攻撃側にも応用できるリスクを、ラボは防衛を進めながら同時に監視し続けなければならない。このリスク管理の難しさは、AI安全保障分野で以前から議論されてきた核心的な課題であり、2023年のAI安全サミット(英国・ブレッチリーパーク)以降、英国政府がフロンティアAIのリスク管理を政策の柱に据えてきた背景とも直結する。
政府1億ポンド+OpenAI・Anthropicが計2億ポンドを拠出
英国政府は「英国AIバイオセキュリティ・ラボ(UK AI Biosecurity Lab)」の設立を発表した。政府は、これを「世界初の専門的なAIバイオセキュリティ機関」と位置づけている。
資金規模の内訳は以下の通りだ。
- 英国政府:1億ポンドの公的資金
- OpenAI:コンピューティングリソースおよびモデルクレジットとして1億ポンド相当
- Anthropic:モデルクレジット、信頼アクセス、技術サポートとして最大1億ポンド相当
合計で最大3億ポンド規模のパッケージとなる。ただし、OpenAIとAnthropicの拠出分は現金ではなく、クレジットやアクセス権の形での提供である点は注意が必要だ。
OpenAIはすでに「Rosalind Biodefense programme」を立ち上げており、防衛目的のライフサイエンスAI開発者への支援を行っている。同ラボはこのプログラムを通じてOpenAIの最先端モデルへの信頼アクセスを得る。Anthropicも専任の技術サポートを提供する。さらにGoogle DeepMindの科学者がラボと協働し、**Basecamp Research(生物多様性データを基盤にAI生物学モデルを開発するスタートアップ)**はAI生物学モデルと専門知識を提供する。
ラボの使命:早期検知とワクチン開発の加速
ラボのミッションは明確に2つに絞られている。
- 新興生物学的脅威の早期検知
- ワクチン・治療薬・その他の医療対抗手段の開発加速
フロンティアAI(最先端の大規模AIシステム)を活用して疾病の理解を深め、新たな医療対抗手段の発見を支援する。国内の国家バイオセキュリティセンターやライフサイエンス産業とも連携する方針だ。
ラボは独立した非営利組織として運営され、政府は「フロンティアAI生物学企業のスピードで動く」ことを求めている。学術委員会が設置され、学術界・産業界・第三セクターから知見を集める。
現時点での未決定事項
発表は10月24日にキャビネット・オフィス(内閣府)が行ったものだが、以下はまだ決定していない。
- ラボのディレクター(所長)
- 設置場所
- 開設日
ラボは1億6500万ポンド規模の「国家AIバイオセキュリティ・イニシアチブ」の一部として位置づけられており、そのうち6500万ポンドがバイオサーベイランス(感染症や生物学的脅威を継続的にモニタリングする仕組み)と医療対抗手段に充てられる。将来的にはフィランソロピー(慈善的)資金の調達も視野に入れている。
詳細はUK AI Biosecurity Lab Gets 100 Million Government Fundを参照していただきたい。




