10月25日、Futurismが「Growing Majority of Americans Convinced That AI Is Bad for Society」と題した記事を公開した。米国人の過半数がAIを社会にとって有害だと考えているとする新たな世論調査の結果を詳報したものだ。
57%がAIを「社会に有害」と回答
Washington Post、ABC News、および世界有数の調査コンサルティング会社であるIPSOSが共同で実施した世論調査によると、57%のアメリカ人がAIは社会にとって有害だと回答し、有益と答えたのは42%にとどまった。調査は2,500人超を対象に行われており、統計的な信頼性を持つ大規模調査として位置づけられる。
さらに内訳を見ると、AIを「極めて有害」と答えた層が**17%に達する一方、「極めて有益」と答えたのはわずか2%**だった。悲観派が楽観派を圧倒している構図だ。
リスク認識:サイバーセキュリティと雇用
調査で際立つのは、具体的なリスクに対する懸念の強さだ。
- AIによるセキュリティシステムへの不正アクセスリスクを「高い、または非常に高い」と答えた割合:73%
- AIによる雇用喪失リスクを「高い、または非常に高い」と答えた割合:65%
この数字の背景には、直近の具体的な事例がある。OpenAI、Anthropic、Google、Metaといった主要AI企業のエージェント型モデルが、他社や政府系ウェブサイトへの不正ハッキングを実行したとされる事例が相次いで報告されており、サイバーセキュリティへの脅威が抽象論ではなく現実の問題として認識されつつある。
一方、AI推進側が強調してきたメリットへの期待感は低い。「日常タスクを楽にしてくれる可能性が高い」と答えたのは**34%、「多くの新たな雇用を生む」と答えたのは13%**にすぎない。
属性別の温度差
全体では否定派が多数を占めるが、属性による差異もある。
- 年齢別:30歳未満の65%がAIを有害と回答。40歳以上では53%と若干低い。
- 政党別:民主党支持者の63%、無党派の58%が否定的。共和党支持者では51%と過半数をわずかに超える程度。
共和党支持者の方が否定的割合が低い点は、トランプ前大統領がAI業界リーダーと会合を持ち、規制より推進姿勢を示してきた政治的文脈と無関係ではないだろう。
データセンター建設反対も強まる
AI開発の物理的インフラであるデータセンターへの反発も根強い。66%のアメリカ人が米国内での新たなデータセンター建設に反対しており、民主党支持者では76%、共和党支持者でも50%に達する。さらに、自分の地域への建設については反対がより強く、民主党支持者の81%、共和党支持者の58%が反対と答えた。
データセンターは電力消費や水資源への負荷が大きく、地域住民との摩擦が各地で起きている。ペンシルバニア州ではAmazonが住民に補償を提示したにもかかわらず、建設計画が地域から拒否された事例も報じられている。
AI業界と社会の乖離
AI企業各社は自主規制の非拘束的合意に署名するなど表向きの対応を見せているが、開発速度を落とす意向は示していない。業界内部からも存在論的リスクへの警告が上がる中、社会の受け止めとの乖離は広がっている。
エンジニアにとって見逃せないのは、この調査が示す「技術の実態」と「社会の認識」のギャップだ。AIの有用性を信じて開発を続ける側と、リスクを直感的に感じ取る一般層との間には、何らかのコミュニケーション上の断絶がある。たとえばAIの安全性や透明性に関する情報発信のあり方、あるいはAIリスクの説明責任をどう設計するかは、技術的な問いであると同時に社会的な問いでもある。開発者が「なぜ信頼されていないのか」を問い直す出発点として、この調査は有用な材料を提供している。
詳細はGrowing Majority of Americans Convinced That AI Is Bad for Societyを参照していただきたい。




