10月27日、The Decoderが「Researchers find six patterns that make AI text so exhausting to read」と題した記事を公開した。ニューヨーク大学とテキサス大学オースティン校の研究者チームが、AIが生成するテキストを読みにくくする6つの言語パターンを1,145件のテキストデータから定量的に特定した研究を詳しく紹介している。
LLMが生成する文章には「何かが読みにくい」と感じさせる正体がある。それは印象論ではなく、測定可能な言語的特徴として存在することを、今回の研究はデータで示した。arXivに公開された論文(※編集部注:URLのID部分「2610」はarXivの命名規則〔年下2桁+月2桁〕と照合すると異常値に見えるが、元記事掲載のリンクをそのまま転記している)では、14のLLMが生成したテキスト計1,145件(会話120件、コーディングセッション45件、エッセイ980件)を人間が書いたテキストと比較している。比較対象の人間テキストは映画字幕、StackExchange、学生エッセイから取得した。モデルのラインナップはClaude、GPT-5.6、GLM-5、Kimi K2.5のほか、LlamaやOlmoなどの小規模オープンソースモデルも含まれる。
AIテキストを疲弊させる6つのパターン
研究が特定した6つのパターンのうち、特に注目すべきものを挙げる。
1. 稀な語の組み合わせの多用
「reader-patience budget」のように、人間の文章ではほぼ見かけない語の組み合わせをAIは多用する。意味は通じるが、脳が一瞬処理に詰まる。
2. 主語と述語が遠く離れた構文
Claude Opus 5が生成した「A cat who can always get up and away is a much calmer cat」では、主語と述語の間に長い節が挟まる。ワーキングメモリに余分な負荷がかかる構造だ。
3. 関係詞の省略による曖昧さ
「the book that the professor wrote」を「the book the professor wrote」と書く。1語の節約だが、読者は一瞬、文の構造を解析し直す必要がある。
4. 名詞の連鎖(Noun stacking)
「horror movie soundtrack generator」のように名詞を重ねると、どの語がどの語を修飾しているかを読者が自力で解析しなければならない。
5. 名詞の動詞化
Claude Fable 5は「put it in the calendar」と言うべきところを「calendar it」と書いた。人間なら選ばない動詞化だ。
6. 無生物主語へのアニメート動詞の適用
Claude Opus 5は「The whole conversation is eating its own tail」と書いた。会話には尻尾がなく、食べることもできないが、AIはそうした比喩的な転用を多用する。

6つの言語パターンと研究データセットからの実例。| Image: Clark, Martin & Mahowald (2026)
小規模モデルの方が人間らしく書く
興味深いのはモデルサイズと可読性の関係だ。LlamaとOlmoのベースモデルが人間テキストに最も近いスコアを示した。Olmoファミリーではベースモデル→instructバリアント→推論モデルのOlmo Thinkと段階を追うごとにスコアが上昇し、フロンティアモデル並みの数値に達する。これはポストトレーニング(SFT、RLHFなどの追加学習)が読みにくさの主因である可能性を示唆する。

6つの指標における各モデルの人間テキスト(破線)からの乖離。| Image: Clark, Martin & Mahowald (2026)
Claude Opus 5.5は前バージョンのOpus 5に対して21比較中19項目で改善を示した。Anthropicが意図的に可読性へ取り組んだ結果といえる。
根本原因:情報密度を報酬としたトレーニング
研究者の分析では、現代のLLMが数学・コード・論理推論のタスクで大量にトレーニングされていることが根本にある。これらのタスクでは「正しさ」が報酬になり、「読みやすさ」は報酬にならない。
さらに、RLHF(人間のフィードバックを使った強化学習)からRLVR(検証可能な報酬による強化学習)への移行が、フィードバックループから人間を完全に排除する。RLVRとは、数学の答えの正誤やコードのテスト通過といった自動検証可能な基準だけを報酬信号とする強化学習手法であり、人間の主観的な読みやすさ評価が介在する余地がない。モデルは情報圧縮と複雑な問題解決に適した「方言」を発達させるが、人間読者には不自然に映る。
研究チームはこれを実証するため、短い回答を報酬とするペナルティ項を組み込んで小規模モデルをトレーニングした。特定の条件下でモデルはコンテキストにかかわらず短い語法を優先し、トレーニング中に見たことのない文パターンにまでその傾向を汎化させた。人間は状況に応じて短い形式と長い形式を使い分けるのに対して、だ。
業界内からも同様の証言がある。AnthropicのClaude担当エンジニアであるJackson Kernionは以前の別記事での説明で、Opus 4.6が最後の「良い書き物モデル」になった経緯を語っている(この証言は本研究とは独立した文脈で語られたものだが、研究の示す傾向と符合する)。後続モデルを数学・コード・他のAIモデル向け技術説明に最適化した結果、Claudeは「LLMの心理」に適応したスタイルに寄り過ぎ、人間にとって密度が高く不自然になったという。Opus 5.5ではAnthropicが初めてその方向性を修正し、文の明瞭さと情報過密なブロックに対処した。
「なぜAIの文章はこうも疲れるのか」という感覚は、多くの人が共有しながらも言語化しにくいものだった。この研究はその正体を6つの測定可能なパターンとして定式化した点で広く意義がある。同時に、ポストトレーニングの設計次第でその問題が改善できることも示しており、モデル開発側への示唆も大きい。
詳細はResearchers find six patterns that make AI text so exhausting to readを参照していただきたい。




