10月26日、Devin.aiが「Devin Security 2.0: Built for the new threat landscape」と題した記事を公開した。AIコーディングエージェント「Devin」の新機能「Devin Security 2.0」の詳細で、脆弱性の発見・優先度付け・修正PRの自動生成までを一気通貫で担うワークフローが示されている。AIが攻撃者側の武器にもなりつつある現在、防御側のツールがどこまで自律化できるかを示す事例として注目に値する。
「脆弱性を見つけること」と「リスクを減らすこと」は別問題だ
セキュリティツールが大量の発見を自動化する時代、チームが直面する本当の課題は「発見数」ではなく「何を優先して修正するか」と「実際に直せるか」にある。
元記事によれば、PHPおよびNode.jsのRCE(リモートコード実行)脆弱性として「PHP2Shell」が具体例として挙げられている。この脆弱性の根本的な欠陥は2024年時点ですでに発見されていたが、実際の攻撃経路が実証されていなかったため修正が後回しになっていた。その後、Wizのレポートによれば、フロンティアモデル(最先端の大規模言語モデル)を活用した研究者が数時間でワーキングエクスプロイトを複数のアプリケーション向けに開発・適応させたとされる。
さらにcurlのメンテナーであるDaniel Stenbergはブログでこう述べている。
「現在の課題ははるかに難しい:高ボリューム、高品質(high volume, high quality)」
curlプロジェクトが受け取ったセキュリティ報告数は、2025年の181件に対し、2026年は10月22日時点ですでに356件に達している。AIが攻撃者側の武器になると同時に、報告の質と量も押し上げているという、両面からの圧力を示す数字だ。
最も面白いポイント:「フロンティアモデルによるスキャン」+「自律的な修正PR」
フロンティアモデルでスキャンする
Devin Security 2.0は、元記事でフロンティアサイバーモデルと呼ばれるモデル群を使ったマネージドスキャンを実行できる。エンタープライズチームはDevinを通じてこれらのモデルにアクセスでき、各モデルへの個別契約は不要だ。
スキャンのアーキテクチャとして採用しているのが「Agentic MapReduce」という仕組みだ。名前の通り、MapReduceの発想をセキュリティ調査に適用している:
- Map:リポジトリをルート(routes/信頼境界の起点となるエントリポイント)、認可境界、データアクセスパターン等でマッピングし、脅威モデルを構築
- 並列調査:選別されたコードをバッチに分け、並列で調査
- Reduce:結果を集約し、重複排除、より深刻な攻撃経路を形成する発見同士を結合
- 検証:優先度の高い発見をサンドボックス環境で実際のアプリケーションに対して検証
修正を自律的にPRとして開く
発見された脆弱性を個別または一括でDevinに割り当てると、各発見ごとに独立した仮想マシン上でセッションが起動し、再現→修正→テスト→PRオープンまでを自動で行う。エンジニアはPRをレビューするだけでよい。
「パッチを生成する」だけでなく、独立したエージェントが実際にサービスを動かして問題を再現・修正する点が、単なるコード補完とは異なる。PRはマージ後もDevinが攻撃経路が解消されたかを確認するまでオープン状態を維持する。
優先度付けの仕組み:「バグの存在」より「実際に悪用できるか」
Devin Security 2.0の優先度付けは、二つの問いに集約される:
- その環境で攻撃者は実際に悪用できるか?(到達可能性、認証の有無、設定依存性)
- 悪用された場合の組織へのダメージは?(ユーザーデータ漏洩か、権限昇格か、課金回避か)
この判断を支えるのが、チームとDevinが共同で構築・更新していく「脅威モデル(Threat Model)」だ。サービス、ホスト、ネットワークポリシー、データフロー、信頼境界をすべて定義したリビングドキュメントで、スキャンごとに更新される。
AnthropicのGlasswingレビューでは、1,752件の発見のうち高・クリティカルと評価されたものの90.6%は実際に有効な脆弱性だったが、「高・クリティカル」の重大度が正しかったのは62.4%にとどまったという。バグを見つけることと、適切な深刻度を割り当てることは別の判断が必要だ、という点をこの数字は示している。
外部スキャナーの結果も取り込める
Snyk、Wiz、CSVファイルなど、既存ツールからの発見を取り込み、同じワークフローで再トリアージできる。古いバックログや精度の低いモデルが出力した過去レポートも対象になる。
コンプライアンス対応も自動化
FedRAMPやPCI DSSのような規制環境では、高・クリティカルの発見は「修正クロック」が動き始める。リスクが低いとわかっていても、書面での根拠がなければ対応義務は変わらない。
Devin Security 2.0は優先度を変更した発見ごとに、到達可能性・認証・データ・信頼境界・検証結果を文書化する。その際、元のCVSSスコアを上書きせず並記した上で、人間のレビューを経てPOA&MやGRCシステムへのエクスポートまで行う。
なお、CISAのKEV(既知の悪用脆弱性)カタログに掲載された脆弱性については、Devinが独自に優先度を変更しない設計になっている点も明記されている。
料金と提供体制
Cognitionはエンタープライズ顧客向けに、フロンティアサイバーモデルによる無料スキャンを提供する。
- 新規顧客には最重要脆弱性の修正を支援するリメディエーションクレジットを付与
- Cognitionは「数億ドル相当のDevinクレジット」をこの取り組みに充てるとしている
- 各フロンティアモデルへの個別契約は不要で、Devin経由で一元的にアクセス可能
詳細はDevin Security 2.0: Built for the new threat landscapeを参照していただきたい。




