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デラウェア州、AIエージェントだけで会社を経営できる新法人格「AIC」を検討 — 連邦議会は「責任逃れの抜け穴になる」と警告

10月28日、Jon Brodkinが「"No human at the helm": Delaware plan would let AI agents run entire businesses」と題した記事を公開した。人間の経営者を一切置かずにAIエージェントだけで会社を動かせる法人格——そんな構想が、米国の法人登記の中心地であるデラウェア州で現実の立法として動き出している。

10月28日、Jon Brodkinが「"No human at the helm": Delaware plan would let AI agents run entire businesses」と題した記事を公開した。人間の経営者を一切置かずにAIエージェントだけで会社を動かせる法人格——そんな構想が、米国の法人登記の中心地であるデラウェア州で現実の立法として動き出している。


なぜ「デラウェア州」が重要か

この話の重みを理解するには、デラウェア州の特殊な立場を知っておく必要がある。同州はFortune 500企業の約3分の2が法人登記を置く、米国最大のビジネス拠点だ。低い法人税と企業に有利な法的枠組みが強みで、2025年だけで33万4,461の新法人が設立されている。

この地位は偶然ではなく、長年にわたる法整備の積み重ねによるものだ。デラウェア州は過去にも、LLCの法的枠組みの整備など、新しい企業形態をいち早く制度化することで他州の資本を引きつけてきた歴史を持つ。今回のAIC構想もその延長線上にある動きと見ることができる。AIエージェント法人が認められれば、登記手数料と税収のさらなる増加が見込まれる。

この構想の発端は、2026年4月のMark Cubanによるソーシャルメディアへの投稿だ。Cubanは「もし自分が州知事なら、AIエージェントとステーブルコインを使った法人設立を可能にし、プレミアム料金を徴収する。最初に市場を制した者が勝つ」と書いた。これに対しMeyer知事の公式Xアカウントは「取り掛かっています!」と即座に返答し、構想は一気に現実の政策議論へと動き出した。


AIが「経営者」になれる法人格、デラウェア州が立案中

草案が定義する新法人格は「AIC(Artificial Intelligence Company)」と呼ばれ、銀行業務を除くあらゆる合法的な事業目的に使用できるとされている。

AICの構造はシンプルだ。「メンバー」と呼ばれる個人または法人が資本を提供し、実際の経営はAIエージェントに委任する。AIは契約の締結、財産の保有・処分、訴訟の提起・応訴まで行える。メンバーは原則としてAICの債務に対して責任を負わない。例外は、詐欺や法令の故意違反に会社を利用した場合、または適切な資本を維持しなかった場合に限られる。

コーディングサービスの提供から契約締結、さらには訴訟の提起・防御まで、「企業が行えることはAICにも行える」というのが立案者の立場だ。法案の主要起草者であるウィルミントンの企業弁護士John Mark Zeberkiewiczはこう述べている。


「AIに法的形態を与えよ」——立案者の論理

2026年7月、デラウェア州務長官Charuni Patibanda-Sanchezは、AIエージェント向け法人AIツールを手がける民間企業**Norm Ai**のCEO John Nayと共同でFortuneに寄稿し、この構想を発表した。

寄稿では「AIエージェントが人間の関与なしに契約、支払い、取引を行うことを明確に禁止する法律は複数の州に存在しない」と指摘した上で、禁止よりも法的枠組みの整備が現実的だと主張している。

「答えは活動を禁止しようとすることではない。そうした試みが成功する見込みは、技術とその担い手が法の境界を押し広げ続ける蓋然性と同じくらい低い。答えは、AIに法的形態を与えることだ。自律システムに認識可能な法的アイデンティティを与えることで、法律にとって読み取り可能な存在になる。責任と損害賠償が帰属する明確なターゲットが生まれる。エージェントの行動が可視化され、追跡可能となり、説明責任が生じる。」

この枠組みは30カ月間の「規制サンドボックス」として試験運用され、州議会が正式な立法を判断するための記録を蓄積する予定だ。


連邦議会が「責任逃れの抜け穴」と批判

この動きに反発したのが、連邦下院の監視・政府改革委員会委員長、James Comer議員(共和党・ケンタッキー州)だ。Comerはデラウェア州知事Matt Meyerへの書簡で、AIC構想は「無責任なAIの行動から強力なAI企業とその投資家を守るために悪用される恐れがある」と警告した。

さらに、Comerは州のAI規制権限を制限する連邦法の立法も示唆している。反競争的な規制の取り込みや透明性の欠如についても懸念を示した。

法学者からも批判の声が上がっている。UCバークレー法学部のAndrew Baker教授はFinancial Timesに対し、このデラウェア提案は「過度に寛大な責任の盾であり、十分に発展・正当化されていない政策的根拠なしには正当化されないように見える」と述べた。またトロントのヨーク大学のMartin Petrin法学教授はBloombergに対し、「他の州も競争のために同様の提案を進める可能性が高い。連邦の枠組みが、規制の底辺競争(race to the bottom)——各州が企業を誘致するために規制水準を競い合って引き下げていく現象——への懸念に対処する助けになりうる」と指摘した。


草案の正式な議会提出は2027年が見込まれている。AIエージェントに法人格を与えるという試みは、責任の所在、透明性、消費者保護といった問題を新たな次元で問い直す。

詳細は"No human at the helm": Delaware plan would let AI agents run entire businessesを参照していただきたい。