10月29日、Mistralが「Mistral Large 4 (Le Chonk) is now open weight」と題した記事を公開した。フランス発のAIスタートアップMistralが、フラグシップモデル「Mistral Large 4」のウェイト(重みパラメータ)を一般公開したことを発表している。
総パラメータ数1兆、推論時のアクティブパラメータ約520億というMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを採用した大規模モデルを、改変・商用利用可能な形でオープン公開するのは現時点でも異例だ。OpenAIやAnthropicのクローズドモデルとほぼ同等の性能を持ちながら、誰でも無償でダウンロードし自前インフラで動かせる。社内ニックネーム「Le Chonk(でかいやつ)」が物語るように、Mistralにとっても過去最大のリリースとなる。
MoEとは、大量のパラメータを持ちながら推論時には一部の「専門家(Expert)」ネットワークだけを活性化するアーキテクチャで、全パラメータを常に使うDense型に比べて推論コストを抑えられる。今年初め、DeepSeek-R1のオープンリリースが業界に衝撃を与えて以降、「クローズドモデルに匹敵する性能をオープンウェイトで」という競争は激化しており、今回のMistral Large 4はその流れを加速するリリースといえる。
コーディングAgent性能でオープンモデル首位、かつトークン数は30%削減
Mistral Large 4は今月初めにパブリックプレビューとして公開され、その後3週間で強化学習をさらにスケールアップした上での正式リリースとなった。特にコーディングとセキュリティ分野で大幅な性能改善が加えられている。
コーディング性能で特筆すべきは、FrontierCode 2.0(Cognitionが提供するプライベートベンチマーク。リポジトリのメンテナーがエージェントの変更を実際にマージするかどうかで評価する)でのスコアだ。Mistral Large 4は**19.7%**で競合モデルをリードしている。
Terminal-Bench 4.0ではプレビュー版比13ポイント改善して**41%**を達成し、オープンウェイトモデルの中でトップに立った。注目すべきは、出力トークン数を30%削減しながらの結果である点だ。コーディングエージェントの実運用ではトークン数がそのままコストに直結するため、この削減は実利面で大きな意味を持つ。
Artificial Analysis Coding Agent Indexでは48%を記録し、トップのオープンウェイトモデルであるGLM-5.3と実質同点ながら、タスクあたりのトークン数は47%少ない。
人間の評価でも裏付けられており、Surge Codeのブラインドペアワイズ評価(評価者がどちらのモデルかを知らない状態で比較)では、GLM-5.3・Kimi K3・DeepSeek V4.1 Flashを上回り、Claude Opus 5.5にのみ及ばなかった。
推論モードの選択でコストを制御できる
性能とコストのトレードオフをコントロールするために、3段階の推論モードが新たに導入された。
| モード | 推奨用途 |
|---|---|
| Low | シンプルなタスク(従来の「推論なし」モードの代替) |
| Medium | 日常的なタスク |
| High(デフォルト) | 高精度・深い推論が必要な難易度の高いタスク |
用途に応じてモードを切り替えることで、精度とコストを柔軟に調整できる。
サイバーセキュリティ:防御寄りに設計、ただし悪用リスクも認める
Mistral Large 4は、Artificial Analysis Cyber Indexで**51%**を記録した。このベンチマークはコードベース内の脆弱性の発見・再現・パッチ適用能力を測定するもので、既存の機能を壊さずにパッチを当てる「防御的なセキュリティタスク」を不必要な拒否なしに処理できる点が評価されている。
一方で、悪意あるサイバーリクエストへの**平均拒否率は96.6%**で、オープンモデルの中で最高水準を記録している。攻撃的な使用と防御的な使用をモデル内で区別する設計だ。
ただし、Mistral自身も「ライブトラフィックの監視で、実際の攻撃への悪用ポテンシャルを確認した」と率直に認めており、ガードレール(安全フィルター)の修正を進めているとのことだ。ペネトレーションテストや脆弱性評価向けの特化バリアントは、Orange Cyberdefenseなどのエンタープライズパートナーに厳格な審査の上でプレビュー提供されている。
エンタープライズ向けの改善も
コーディング・セキュリティ以外の分野でも改善が見られる。
- ファイナンス: スプレッドシートの作成・編集タスクを測定するFinchで**73.3%**(オープンモデル中2位)
- Webブラウジング: BrowseCompで**84.5%**(SFTチェックポイントの75%から改善)
- エージェントセキュリティ: B3 Agent Security Benchmarkでプレビュー版の93.3%から**97.1%**に向上。システムプロンプト漏洩や悪意あるコード注入への耐性を測定するベンチマークで、OSSフロンティアの先頭に立つ
入手方法とライセンス
ウェイトはHugging Faceからダウンロード可能で、vLLMまたはSGLangで自前インフラに展開できる。Mistral StudioやMistral API、OpenRouterからも利用可能だ。NVIDIAのホスト型エンドポイントやNIM コンテナも提供されている。
ライセンスはMistral Ecosystem Open-Weight Licenseで、使用・改変・ファインチューニング・商用利用が無償で可能だ。ただし、モデルをModel-as-a-Serviceとして提供する事業者は別途商用ライセンスが必要となる点には注意が必要だ。
API利用の料金は入力$0.70/Mトークン、キャッシュ済み入力$0.07/Mトークン、出力$2.10/Mトークンとなっている。
詳細はMistral Large 4 (Le Chonk) is now open weightを参照していただきたい。




