10月29日、Eurogamerが「Epic Games further doubles down on gen-AI tools for Fortnite, Unreal Engine 6 and more: "Our engineers are no longer writing the bulk of the code"」と題した記事を公開した。Epic Gamesの開発トップが「エンジニアはもうコードの大半を書いていない」と公言し、生成AIをUnreal Engine 6やFortniteの開発に全面採用していることを明らかにした。大手ゲームエンジンの開発現場でこれほど踏み込んだ発言が出たことは、ゲーム業界のみならずソフトウェア開発全体に波紋を広げている。
「エンジニアはもうコードの大半を書いていない」
この発言は、Epic Gamesの開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるMarcus Wassmerが、ゲーム業界に特化した音声・動画インタビュー媒体「This Week In Video Games」のインタビューで明言したものだ。
「そう、私たちはバイブコーディングをしている。つまり、エンジニアはもうコードの大半を書いていない。ただし、求めるアーキテクチャ的な結果を得るために、ツールをガイドし続けている。エンジンを"ワンショット"(一発生成)しているわけではなく、AIと反復しながら、メモリ・パフォーマンス・スケーラビリティの制約内に収まる形で機能をリリースしている」
「バイブコーディング(vibe-coding)」とは、コードの細部を自分で書くのではなく、自然言語での指示と生成AIの出力を繰り返しながら開発を進めるスタイルを指す。OpenAIのAndrej Karpathy氏が2025年初頭に提唱した概念で、近年急速に普及している。
Wassmerはさらに、AIツールによってアップデートをより速く、かつバグを少なく出荷できると述べた。エンジニアがコードを「書く」役割から「導く」役割へと移行しつつあるという、開発現場の構造的な変化を示す発言として注目される。
UE6・Fortnite・UEFNにまで全面展開
WassmerはUnreal Engineへの生成AI活用を認めたうえで、現在進行中の開発のほぼすべてがFortnite、UEFN(Unreal Editor for Fortnite)、そしてUE6に向けた開発ストリームで行われていると説明した。
Unreal Engineはゲーム業界で広く使われるゲームエンジンであり、その次期メジャーバージョンであるUE6の開発にまでAIが組み込まれることは、エンジンのユーザーである多数のサードパーティ開発者にとっても無縁ではない話だ。Epicが採用したワークフローやベストプラクティスは、UE6を通じて業界全体のゲーム開発手法に影響を与える可能性がある。
「ゆっくり動くリスクの方が怖い」
Epicは生成AI活用への批判を意識しつつも、立場を明確にしている。
「AIへの懐疑論よりも、動きが遅すぎるリスクの方を懸念している。開発においてAIに中途半端なアプローチを取るのは現実的ではないと考えている。自分たちがやっていることをオープンにし、ベストプラクティスを他の開発者と共有し、そのときどきの最良のツールで最高のUE6を作るのが最善だ」
この姿勢は今月初めの言動とも一致する。Epicは最新のEpic Games Launcherをバイブコーディングで開発したことを公言し、「プログラミングは難しい。なので代わりにバイブコーディングした」と公式に述べて話題を集めた。また、Eurogamerの報道によれば、Disney・Marvel関連のシューターゲームの開発においても、生成AIにコードとアートの制作を任せるよう開発チームに指示が出ていたとされる。
CEOも論争に参戦
Epic CEOのTim Sweeneyは、ValveがSteamのゲームページでAI使用の開示を開発者に義務付けているポリシーについて、オンラインで議論を巻き起こした。このValveのポリシーは、ゲーム購入者がAI生成コンテンツの有無を事前に把握できるよう透明性を確保することを目的としている。SweeneyはXへの投稿でこのポリシーに反発し、「開発者に対して政治的な声明を書かせ、ヘイトの標的にさせることは忌まわしい」と批判した。
労働者の雇用不安、開発者間の盗作懸念、AIの環境負荷といった批判が根強い中、Epicは姿勢を変えるどころかさらに踏み込む構えを見せている。大手パブリッシャーがここまで公然とAI全面採用を宣言した事例は珍しく、業界内の議論を一層加速させるとみられる。




