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Deep Dive

AIエージェントは「外部リンクをクリックする」より「チェックアウトする」 — 520万セッション分析で見えた人間との行動の違い

10月30日、Microsoft Clarityが「What AI Agents Actually Do on Websites (Study)」と題した記事を公開した。520万件超のセッションを分析した結果、AIエージェントが最も多く実行していたアクションは「チェックアウト」だった——人間セッションでトップだった「外部リンククリック」を抑えての1位という事実は、エージェントがWebサイト上で単なる情報収集にとどまらず、商業的なタスクを完結させている実態を突きつける。

10月30日、Microsoft Clarityが「What AI Agents Actually Do on Websites (Study)」と題した記事を公開した。520万件超のセッションを分析した結果、AIエージェントが最も多く実行していたアクションは「チェックアウト」だった——人間セッションでトップだった「外部リンククリック」を抑えての1位という事実は、エージェントがWebサイト上で単なる情報収集にとどまらず、商業的なタスクを完結させている実態を突きつける。


なぜエージェントが「チェックアウト」するのか

そもそもAIエージェントがECサイトでチェックアウトまで実行できるのは、Computer UseやBrowser Useといった技術の普及によるものだ。これらはAIモデルがブラウザを直接操作し、クリック・入力・スクロールといった一連のUI操作を自律的に実行できるようにする仕組みで、ユーザーの指示を受けて「商品を買っておいて」「フォームを送信して」といったタスクをエンドツーエンドでこなす。

今回の調査で検出されたエージェントブラウザプロバイダーは、OpenAI・Google・Anthropicの各エコシステムに属するもので、具体的にはOpenAIのOperator、GoogleのProject Mariner、AnthropicのComputer Useに対応するエージェントが含まれる。これらはいずれも、ブラウザ操作を通じてWebサービスを利用することを目的として設計されており、チェックアウトや予約といったコンバージョンアクションに高い頻度で到達するのは、むしろ設計どおりの動作といえる。


AIエージェントは「チェックアウト」を最も多く実行していた

調査期間は2026年8月13日〜9月9日。230,511件のMicrosoft Clarityプロジェクトで記録された5,265,172件のエージェントセッションを分析した。OpenAI・Google・Anthropicのエコシステムで検出されたエージェントブラウザプロバイダーをもとにセッションを分類している。

エージェントセッションで記録された上位アクションは以下の通りだ。

順位 アクション セッション数 エージェントセッション全体に占める割合
1 チェックアウト 306,621 25.21%
2 フォーム送信 241,391 19.85%
3 外部リンククリック 173,655 14.28%
4 予約 102,401 8.42%
5 検索 87,096 7.16%
6 ログイン 83,096 6.83%
7 もっと見る 52,456 4.31%
8 在庫確認 29,274 2.41%
9 カートに追加 28,289 2.33%
10 ダウンロード 20,593 1.69%

チェックアウト・フォーム送信・予約といったタスク指向のアクションが上位を占めており、エージェントがページを眺めるだけではなく、商業的・実務的な操作まで到達していることを示している。


人間との行動パターンの違い

同じClarityプロジェクト群で記録された人間セッションと比較すると、アクションの「種類」よりも「重みづけ」が大きく異なる。

  • チェックアウト:エージェント 25.21% / 人間 14.65%
  • 外部リンククリック:エージェント 14.28% / 人間 26.99%
  • フォーム送信:エージェント 19.85% / 人間 18.56%(ほぼ同水準)
  • 検索:エージェント 7.16% / 人間 4.79%

人間セッションではトップだった「外部リンククリック」が、エージェントでは3位に後退している一方、チェックアウトはエージェントで際立って高い。人間がリンクをたどりながら回遊・比較検討する行動をとるのに対し、エージェントは与えられたタスクの完了を優先するため、コンバージョンアクションに一直線で向かう傾向があると読める。フォーム送信はほぼ同率で、アクション自体が存在しないわけではなく、比率の偏りに特徴があるという整理だ。


注意すべきデータの制約

この調査にはいくつかの重要な留保がある。

エージェントセッションには人間へのハンドオフ(引き継ぎ)が含まれる場合がある。Clarityは現時点でエージェント操作と人間操作を別セッションとして分離できないため、記録されたアクションがエージェント単独で完了したとは断言できない。

また、各Smart Eventのカウントはサイトをまたいだ非排他的な集計である点にも注意が必要だ。「非排他的」とは、1つのセッション内で複数のSmart Eventが同時に計上されうることを意味する。たとえば「ログイン → カートに追加 → チェックアウト」という一連の流れが1セッションで発生した場合、それぞれのイベントが個別にカウントされる。そのため、表の数値を単一のコンバージョンファネルのステップとして読むのは適切ではなく、「どのアクションがどれだけ頻繁に起きているか」という頻度の分布として解釈するべきものだ。

なお、調査期間中にエージェントセッションの件数がわずか3週間で88%増加したことも記録されており、トラフィックの急増自体が分析上の背景として重要な文脈となっている。


Clarityに「Agent Activity Dashboard」が追加

こうした知見を受けて、MicrosoftはMicrosoft Clarity内にAgent Activity Dashboardを一般提供(GA)した。エージェントトラフィックを受けているプロジェクトで利用可能で、AIエージェントがサイト上でどう動作しているかを可視化する。Eコマースや旅行・ホスピタリティ向けにはシミュレーション機能も提供される。

Microsoft Clarityは無料で利用できるWebアナリティクスプラットフォームで、ヒートマップやセッション録画などの機能も持つ。今回分析に使われた「Smart Events」は、チェックアウト・フォーム送信・予約・検索・ダウンロード・ログインといったビジネス上重要なアクションを自動検出する仕組みだ。


エージェントがチェックアウトや予約といったアクションに高い頻度で到達している実態は、サイト設計やコンバージョン最適化を考えるエンジニア・プロダクトマネージャーにとって、見過ごせないデータ点だ。エージェントトラフィックが3週間で88%増という成長速度を踏まえれば、「人間向けのUX最適化」だけを考えていればよい時代は終わりつつある。

詳細はWhat AI Agents Actually Do on Websites (Study)を参照していただきたい。