11月3日、Bala Priyaが「8 LLM Inference Frameworks You Should Try in 2026」と題した記事を公開した。LLMをJupyter Notebookで動かすのは簡単だが、それを本番エンドポイントとして公開した瞬間に求められるものは別次元になる。リクエストのスケジューリング、KVキャッシュの管理、APIレイヤーの整備——これらを自前で実装するのか、それとも実績あるフレームワークに任せるのか。この選択が、スループット・レイテンシ・インフラコストに直結する。本記事では2026年時点で試すべき8つのLLM推論フレームワークの特徴と使い分けを整理している。
Jupyter NotebookでLLMを動かすのは簡単だが、本番エンドポイントは別物だ。複数リクエストが同時に押し寄せ、それぞれがGPUメモリ上のKVキャッシュ(Key-Valueキャッシュ:Transformerが過去のトークン情報を再利用するために保持するメモリ領域)を必要とする。PyTorchやHugging Face Transformersでもモデルは動くが、リクエストスケジューリング・キャッシュ管理・APIレイヤーは自前で実装しなければならない。推論フレームワークはその部分をまるごと担う。
本番サービングの主役:vLLM と SGLang
vLLM ― まず試すべきデファクト
vLLMは、LLMの本番サービングで最も広く使われているエンジンの一つだ。Transformersから移行する開発者が最初に選ぶことが多い。
最大の特徴は**PagedAttentionだ。KVキャッシュをOSの仮想メモリのように小さなブロックに分割して管理することで、同一GPUに詰め込める同時リクエスト数を大幅に増やせる。加えて継続的バッチング**(continuous batching)により、既存のリクエストが生成中でも新しいリクエストをバッチに追加できる。
- OpenAI互換サーバーを標準搭載(既存のクライアントコードをほぼ変更不要)
LLMクラスでインプロセスライブラリとしても動作(オフラインバッチ処理・評価パイプライン向け)- NVIDIA・AMD・Intel GPU、CPU、TPUに対応
- 複数GPUにモデルを分散するテンソル並列もサポート
チャットAPIの提供、バッチ評価、マルチGPUでの大規模モデル運用まで幅広い用途をカバーしており、まず導入を検討すべき第一候補といえる。
SGLang ― 複雑なプロンプトロジックに強い
SGLangはサービングバックエンドとプロンプトのフロントエンド言語を共同設計している点が特徴だ。
**RadixAttention**により、プレフィックスを共有するリクエスト間でKVキャッシュを再利用できる。システムプロンプトが共通の複数リクエストが多いRAGやエージェントワークロードでは、この仕組みがキャッシュヒット率を高め実効スループットの向上に寄与する。ツール呼び出しやJSON形式の出力など構造化出力・制約付きデコードもサポートしており、エージェント系ワークロードと相性がよい。画像・動画向けに拡散モデルの推論(SGLang Diffusion)にも対応している。
NVIDIAに全振りするなら:TensorRT-LLM
TensorRT-LLMはNVIDIAが開発する、自社GPU専用の推論ライブラリだ。フリートがNVIDIA一択ならその恩恵は大きい。
- H100以降でFP8、BlackwellアーキテクチャでFP4の低精度量子化に対応
- INT4のAWQ(Activation-aware Weight Quantization)もサポート
- Triton Inference Serverとの連携で既存のNVIDIA MLOpsスタックに組み込める
セットアップの手間はかかるが、NVIDIA環境での速度を最大化したい場合の選択肢となる。すでにTritonを中心としたMLOpsパイプラインを構築している組織にとっては、既存スタックとの親和性も選定理由になりうる。
量子化重視なら:LMDeploy
LMDeployはC++/CUDAエンジンのTurboMindとPyTorchベースエンジンの2系統を持つ。4-bit AWQやINT8/INT4のKVキャッシュ量子化で大規模モデルのメモリ消費を抑えつつ、継続的バッチングと自動プレフィックスキャッシュを両立している。vLLMとの比較ベンチマークを同一条件で取れるオフラインパイプラインAPIも提供しており、自環境での実測比較がしやすい点も実用的だ。大規模モデルをGPUメモリに収めるために量子化が必須になるケースで、まず候補に挙がるフレームワークといえる。
ローカル・エッジ向け:llama.cpp / Ollama / MLC-LLM
llama.cpp は外部依存なしのC/C++実装だ。コンシューマGPUやCPUのみの環境でも動作し、OpenAI互換のllama-serverを内蔵する。Llama・Qwen・DeepSeek・Mistralなど主要モデルファミリーに対応しており、オンプレミスや閉域網環境での軽量デプロイにも向いている。
Ollama はモデルのダウンロード・バージョン管理・ローカルサービングをシンプルなCLIでまとめたツールだ。OLLAMA_NUM_PARALLELで並列リクエスト数を設定できるが、メモリはこの設定値×コンテキスト長で固定確保される。開発者個人の実験や小規模チームでの評価には適しているが、同時ユーザーが多い場合はvLLMやSGLangへの移行を検討すべきだと記事は明記している。
MLC-LLM はApache TVMベースのコンパイラ型エンジンで、iOS・Android・Webブラウザまで同一ツールチェーンでカバーする。複数プラットフォームに同一モデルを展開するケース向けだ。モバイルアプリへの組み込みやブラウザ内推論など、エッジ展開の要件が明確な場合に強みを発揮する。
クロスハードウェアとカーネルチューニング:MAX
MAX はModularが開発するフレームワークで、カーネルレベルまでカスタマイズできる点が他と異なる。CPU・GPU両対応で、カスタムアーキテクチャへの拡張もサポートしている。特定ハードウェアベンダーに依存せずに推論パイプライン全体を最適化したい場合や、標準フレームワークではカバーしきれない独自モデルアーキテクチャを扱う場合の選択肢となる。
選択の目安
| フレームワーク | 主な用途 | 典型的なハードウェア |
|---|---|---|
| vLLM | 高スループット本番サービング | NVIDIA/AMD/Intel GPU、CPU、TPU |
| SGLang | 構造化・多段プロンプト | NVIDIA/AMD GPU、TPU |
| MAX | クロスハードウェア、カーネルチューニング | CPU・GPU |
| TensorRT-LLM | NVIDIA環境での最速推論 | NVIDIA GPU |
| LMDeploy | 量子化+同時サービング | GPU(TurboMindはNVIDIA向け) |
| llama.cpp | 軽量・ポータブル推論 | コンシューマGPU、CPU |
| Ollama | ローカル実験・小規模チーム | ラップトップ、ワークステーション |
| MLC-LLM | マルチプラットフォームエッジ展開 | AMD/NVIDIA/Apple/Intel GPU、スマートフォン、ブラウザ |
フレームワーク選定の基準はトラフィックパターン・ハードウェア・デプロイ先の3軸だ。最終的には自分のモデルとハードウェアでレイテンシとコストを実測することが重要と記事は述べている。
詳細は8 LLM Inference Frameworks You Should Try in 2026を参照していただきたい。




