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Deep Dive

AIは旅行の「調べる係」止まり——Expediaが明かす「計画はAI、予約は直接」という利用実態

11月5日、PYMNTSが「Expedia Says Travelers Plan With AI Agents but Book Direct」と題した記事を公開した。旅行者がAIエージェントを旅行計画に活用する一方、実際の予約は依然として直接ブランドサイトで行っている実態について、Expedia GroupのCEO・CFOの発言をもとに詳しく紹介している。

11月5日、PYMNTSが「Expedia Says Travelers Plan With AI Agents but Book Direct」と題した記事を公開した。旅行者がAIエージェントを旅行計画に活用する一方、実際の予約は依然として直接ブランドサイトで行っている実態について、Expedia GroupのCEO・CFOの発言をもとに詳しく紹介している。


AIは「計画フェーズ」には強いが、「予約フェーズ」では弱い

Expedia GroupのCEO、Ariane Gorin氏は第3四半期決算説明会で、「AIエージェントの真価は旅行の"発見"フェーズにある」と明言した。旅行者は目的地や宿泊先のリサーチにAIエージェントを積極的に使っているが、実際に予約を完了する段階になると、「何かトラブルがあったときに守ってもらえる」と信頼できるブランドのサイトへ戻ってくる、という行動パターンが確認されている。

AIエージェント経由のトラフィックは「高いインテント(購買意欲)」を持つユーザーが中心であり、サードパーティーデータでもExpediaは米国における引用シェアでリードしているとされる。ただし、Gorin氏は「エージェント経由のトラフィック量はまだ結論を出すには小さすぎる」とも述べており、このチャネルの経済的な枠組みはまだ交渉・整備の途中だと説明した。

注目すべき点は、AIエージェント経由の流入が直接流入を食っているわけではないという見方だ。Gorin氏によれば、エージェント経由のトラフィックは純増(インクリメンタル)か、または他の有料チャネルから流れてきているもので、オーガニックの直接流入への影響は確認されていないという。


外部AIとの提携:Google、Meta、OpenAI

Expediaは複数の大手AIプラットフォームとの統合を進めている。

  • Google AI Modeとの連携を実施済み
  • Meta Museとの統合を発表。MuseはExpediaの価格・コンテンツにアクセスでき、Muse上で予約を完結させるか、Expediaのサイトへユーザーをリダイレクトするかのどちらかを選べる仕様
  • OpenAIの新広告プロダクトをテスト中

Meta Museは、Metaが提供するMeta AI(同社の汎用AIアシスタント)の旅行特化機能として位置づけられる。Meta AIは会話型のAIアシスタントとしてWhatsAppやInstagramなどのMetaプラットフォームに統合されており、Meta MuseはそのMeta AI上で旅行の提案・検索を行う旅行ドメイン向けの機能を指す。MuseはMeta AI全体のブランドとは別に、旅行体験の文脈で独立した名称として使われている。決算説明会の時点で米国向けリリースが間もなく予定されているとGorin氏は述べた。


社内AIの実績:数字が出始めている

外部連携の話題が先行しがちだが、社内導入では具体的な成果指標が出ていることが注目される。

  • Vrboのボイスエージェント:導入から2ヶ月で着信問い合わせの15%以上を解決。コストを下げながら顧客満足スコアも向上させたとGorin氏は述べた。
  • アクティビティ推薦エージェント:このエージェントを利用した旅行者は、7日以内にアクティビティを予約する確率が2倍に上昇。
  • ホテル契約オンボーディングエージェント:小規模チームが1四半期未満で自律型エージェントを構築。従来は複数の四半期と多人数が必要だった作業を代替。

Vrboはホリデーレンタルに特化したプラットフォームで、Expedia Groupの傘下ブランドだ。ボイスエージェントで問い合わせの15%超を自動解決したという数字は、コンタクトセンターコスト削減の文脈でも具体的な成果として評価できる。


予約フローへのAI組み込み

会話型AIは旅行者の予約フロー内にも組み込まれている。AI比較エージェントと物件専門エージェントがページを離れることなくホテル比較を支援し、より深い購買検討を促す設計だ。Gorin氏はこれにより「ファネルの深部へ誘導でき、より大きな購入につながる」と述べた。


B2B向け:QantasがAgentic Templateの第1号パートナーに

カンタス航空(Qantas)がExpediaの新しい「Agentic Template(アジェンティック・テンプレート)」を採用する初のパートナーとなった。Agentic Templateとは、AIエージェントが自律的にタスクを実行できる仕組み(エージェンティックAI)をB2Bパートナー向けにパッケージ化した提供形態だ。Expediaのコンテンツ・価格・サービス機能をAPIで利用しながら、パートナー企業が独自の旅行体験をブランド上に構築できる。航空会社のような大規模B2Bパートナーが自社アプリやサイト上でExpediaの供給網を活用し、カスタマイズされた旅行提案を自律的に提供できるようになる点が、このB2B展開の核心だ。


業績概要

  • 総予約額(グロスブッキング):前年比11%増
  • 売上:同12%増
  • B2B予約:同19%増
  • 広告収益の成長率は前四半期の13%から7%に鈍化

広告収益の鈍化についてCFOのDerek Andersen氏は、広告主向けのキャンペーンツール改善とAI活用広告の基盤整備のためのプロダクト変更を実施中だと説明した。これは一時的な移行コストの性格が強く、長期的な広告プラットフォームの競争力向上を優先した判断と読み取れる。旅行広告市場でのAI活用が業界全体で加速するなか、ツールの刷新を先行させることで次フェーズの収益基盤を整えているとみることができる。

また、全ブランドで「今すぐ予約、後払い(Reserve Now, Pay Later)」オプションを展開した。


詳細はExpedia Says Travelers Plan With AI Agents but Book Directを参照していただきたい。