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Deep Dive

「AI戦略がないなら取引しない」— ハリウッドが生成AI禁止から180度転換、『アバター』VFX会社が語る1年半の変化

11月6日、Varietyが「Hollywood Has Flipped on GenAI, Says 'Avatar' VFX House Weta FX Chief: 'If You Don't Have an AI Strategy, Don't Bother'」と題した記事を公開した。「生成AIを一切使うな」と命じていたハリウッドのスタジオが、わずか1〜2年で「AI戦略のない会社とは取引しない」という真逆のスタンスに転じた——そう語るのは、『ロード・オブ・ザ・リング』や『アバター』のVFXを手がけてきたWeta FXのCEO、Daniel Seahだ。禁止から義務化へ、この急転換の実態を同社幹部が台北で初めて詳細に語った。

11月6日、Varietyが「Hollywood Has Flipped on GenAI, Says 'Avatar' VFX House Weta FX Chief: 'If You Don't Have an AI Strategy, Don't Bother'」と題した記事を公開した。「生成AIを一切使うな」と命じていたハリウッドのスタジオが、わずか1〜2年で「AI戦略のない会社とは取引しない」という真逆のスタンスに転じた——そう語るのは、『ロード・オブ・ザ・リング』や『アバター』のVFXを手がけてきたWeta FXのCEO、Daniel Seahだ。禁止から義務化へ、この急転換の実態を同社幹部が台北で初めて詳細に語った。


「AI戦略がないなら、声をかけるな」

台湾・台北でメディアに語ったSeahの発言が業界に波紋を呼んでいる。ハリウッド主要スタジオの態度変化は、わずか1〜2年の間に3段階で起きたという。

  1. 昨年初頭:各スタジオの法務部門から「いかなる作業にも生成AIを使用するな」という通達が届いた
  2. 昨年中盤:事前承認と特定企業のみを条件に、一部クライアントが使用を許可し始めた
  3. 今年第3四半期以降:スタジオ側がWeta FXにAI戦略の有無を問うようになり、「AI戦略がないなら取引しない」というスタンスに転換した

この3段階の変化が象徴するのは、スタジオ側の姿勢が「リスク回避」から「コスト削減の手段」へと完全に切り替わったことだ。Seahは「主にどれだけコストを削減できるかを知りたがっている」と語った。

なお、この急変には業界の構造的な背景もある。2023年に妥結したSAG-AFTRAとWGAのストライキでは、AIによる俳優・脚本家の権利侵害が主要な争点となり、スタジオは厳しいAI利用制限に合意した経緯がある。その合意からわずか1〜2年での方針転換は、ハリウッドにおけるAI規制の議論が、労働者保護よりも競争上の圧力を優先する方向へ急速に動いていることを示している。


自社モデルの開発と外部モデルの活用

Weta FXのCTO、Kimball Thurstonは、同社がChatGPTのような汎用モデルではなく、映像世界の修正や再構築に特化した独自AIモデルを構築していると明かした。目的は20秒のTikTok動画ではなく、「長尺コンテンツのタイムライン全体にわたってストーリーを洗練させる」ためのツールだという。

外部モデルについては、クライアントが許可する場合に限り、Kling AI(中国・快手が開発した動画生成AIサービス)やSeedance(中国・ByteDance〔バイトダンス〕傘下の動画生成モデル)といったツールを使用していると述べた。「使わざるを得ない。これらのモデルは登場した途端、競合の多くを実質的に駆逐してしまったから」とThurstonは率直に語った。セキュリティ上の制約から、これらのモデルは中国国外でホスティングされる必要があるが、ByteDanceがグローバルに展開しているため対応可能だという。


台湾のMoonshine Studioとの提携

ハリウッドのクライアントから課されていたAI利用制限が、Weta FXの動きを遅らせていた。そこで同社が組んだのが、台湾のアニメーション・VFX会社Moonshine Studioだ。クライアント制限のないMoonshineは、台湾の半導体産業を背景にした国家的なAI戦略のもと、より速いペースで生成AIの活用を進めてきたという。

連携の焦点は、AIの世界で「ハーネス(harness)」と呼ばれるアーティスト向けのインターフェース層になる見込みだ。Thurstonは「ハーネスは業界が選んだ中で最悪の名前だと思う」と皮肉交じりに述べた。

今回の提携はTAICCA(台湾創意内容策進院)と台湾文化部が関与する公的枠組みでもあり、若手クリエイターをWeta FXのウェリントン、メルボルン、バンクーバーの各オフィスへのインターンシップにつなげることも視野に入れている。


「アーティストの代替ではなく、強化」

Seahは、AIがWeta FXのアーティストや従業員の代替手段になることはないと明言した。「ワークフローを強化・拡張するためのものだ」という立場を崩していない。

VFXスーパーバイザーのSheldon Stopsackも、新ツールはモーションキャプチャを含む既存のパイプラインに組み込まれる必要があると述べ、「映画監督が思い描いた世界を形にする創造的なコントロールを最終的に持ち続けたい」と語った。

Thurstonは「人々はまだ大スターの演技を見たいと思っている。それがエイプであれ、ナヴィであれ、AIで生成されたクリーチャーであれ、俳優の演技を見に行く」と付け加えた。


オープンソースの取り組みとデータセンター

Thurstonによれば、Weta FXは約18ヶ月前から「Rongotai Model Train Club」というオープンソースプロジェクトを開始している(Rongotaiはウェリントンの地名)。このプロジェクトはモデルの微調整(fine-tuning)とLoRAトレーニング(Low-Rank Adaptation:大規模モデルを少ないパラメータで効率的に微調整する手法)を追跡し、使用したデータセットを画像メタデータに記録することを義務付けている。AIの学習データに関する透明性確保の取り組みとして、Visual Effects SocietyのTechnology CommitteeやMovieLabsの活動とも連携しているという。

また、同社は過去1年でデータセンター設計賞を受賞した。水を使わず電力効率の高い冷却システムが評価されたもので、Thurstonはデータセンターをガスタービンで動かす企業のアプローチを「悪いエンジニアリングだ」と批判した。


詳細はHollywood Has Flipped on GenAI, Says 'Avatar' VFX House Weta FX Chief: 'If You Don't Have an AI Strategy, Don't Bother'を参照していただきたい。