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BMOが年間50万件のカード問い合わせにAIエージェントを投入 — 人間が最終承認する「Human-in-the-loop」設計で対応時間30%短縮へ

11月7日、PYMNTSが「BMO Turns to Agentic AI to Resolve Card Issues」と題した記事を公開した。カナダの大手銀行BMOがAIエージェントを活用してクレジットカードトラブルの対応を自動化・効率化する取り組みについて詳しく紹介されている。

11月7日、PYMNTSが「BMO Turns to Agentic AI to Resolve Card Issues」と題した記事を公開した。カナダの大手銀行BMOがAIエージェントを活用してクレジットカードトラブルの対応を自動化・効率化する取り組みについて詳しく紹介されている。


年間50万件の問い合わせを抱えるコンタクトセンターにAIエージェントを投入

BMO(Bank of Montreal)は、カナダ最古の銀行であり、北米でも有数の金融機関だ。個人・法人向けに幅広い金融サービスを展開しており、カナダ国内だけで数百万人規模のクレジットカード顧客を抱える。その規模ゆえに、カード関連のカスタマーサポートは慢性的な負荷を抱えている。

BMOはこの課題に対応するため、クレジットカードのトランザクションに関する問い合わせ対応を効率化する社内向けツール「AI Agent Assist」を2026年11月6日に発表した。

このツールは、BMOのバーチャルコンタクトセンター「Virtual Connect」のオペレーター(従業員)が使用するものだ。顧客が直接AIと対話するのではなく、オペレーターの補助ツールとして機能する点がポイントである。

背景となる数字が具体的だ。BMOのVirtual Connectには、カナダ国内のクレジットカードに関する問い合わせが年間50万件以上寄せられており、1件あたりの対応時間は現状平均12〜14分かかっている。


AIエージェントが何をするのか

AI Agent Assistが提供する機能は以下の3点だ。

  • AIによるトランザクションマッチング:顧客が問題としている取引を自動で特定・照合する
  • ポリシー検索:関連する規約・対応方針をリアルタイムで引き出す
  • ケース準備:対応に必要な情報をオペレーターの画面にまとめて提示する

これにより、オペレーターが複数のシステムを行き来する時間が削減され、顧客を保留にする頻度も下がる。BMOは、問い合わせ解決にかかる時間を20〜30%短縮し、条件を満たすクレジット返金リクエストの約40%を自動処理することを目指している。条件を満たす問い合わせであれば、当日中にクレジットが反映されるケースも出てくるとしている。

Virtual Connectを統括するHolly Jackson氏は次のように述べている。

「クレジットカードのトランザクションについて問い合わせてくる顧客は、明確な説明と迅速な解決を求めている。AI Agent Assistは、従業員がシステム間を移動する時間を減らし、顧客対応により集中できる環境を提供する。」


「Human-in-the-loop」を明示した設計

BMOはこのツールを「Human-in-the-loop(AIの判断プロセスに人間が介在し、最終承認を担う設計)」という原則のもとで構築したと強調している。AIが自律的に判断・実行するのではなく、最終的な承認は人間が行う構造だ。「人間中心設計」と訳されることもあるが、より正確にはAIと人間の役割分担を明確に定め、AIが推薦・補助を行いつつも実行権限は人間が保持する、というアーキテクチャ上の方針を指す。

この慎重な姿勢は、業界全体のトレンドとも一致している。PYMNTS IntelligenceとJPMorganの共同レポート「Time to Cash」によると、財務部門における生成AIの活用(キャッシュフロー管理など)は2025年の16%から2026年には80%へと急拡大した一方、AIが自律的に実行まで行う「Agentic AI」(エージェント型AI:人間の指示なしに目標達成のための計画・実行を繰り返すAIシステム)の採用率は同期間に6%から5%へとわずかに低下している。

分析・推薦までは任せるが、自律実行には踏み込まない――という金融機関の姿勢が数字にも表れている。BMOのAI Agent Assistは、まさにその境界線上に位置するシステム設計といえる。なお、カナダの金融規制環境においては、顧客資産に影響を与える処理への自動介入に対して監督当局が慎重な姿勢を示しており、こうした規制的背景もHuman-in-the-loop設計を後押しする要因の一つとみられる。


エンジニア視点での注目点

金融機関がAgentic AIを本番環境に導入する際のアーキテクチャ選択として、今回のBMOの事例は参考になる部分が多い。完全自律型エージェントではなく、情報収集・整理までをAIに委ね、判断・実行は人間が担うという役割分割は、リスク管理と自動化効率のバランスをとる現実解の一つだ。特に規制の厳しい金融領域では、このような設計が当面のスタンダードになる可能性が高い。

詳細はBMO Turns to Agentic AI to Resolve Card Issuesを参照していただきたい。