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Deep Dive

非エンジニアが20本超のアプリを自作、カスタマーサポートコストを半減 — インドのフィットネス企業がCodexを「全社プラットフォーム」として展開した方法

11月6日、OpenAIが「Cult.fit builds operational muscle with Codex」と題した記事を公開した。インドのフィットネス企業Cult.fitが、OpenAIのCodexを活用してエンジニアリング部門にとどまらず全社的に開発力を展開した事例を詳しく紹介している。

11月6日、OpenAIが「Cult.fit builds operational muscle with Codex」と題した記事を公開した。インドのフィットネス企業Cult.fitが、OpenAIのCodexを活用してエンジニアリング部門にとどまらず全社的に開発力を展開した事例を詳しく紹介している。


非エンジニア部門が20本超のアプリを自作した話

この事例で最も注目すべきは、非エンジニアのチームが自作した社内アプリが20本超に上るという事実だ。HR部門がパフォーマンスレビューの管理ワークフローを自ら構築し、現場の担当者が必要な分析ツールを自分たちで用意する——Codexを「エンジニアのツール」ではなく「全社のプラットフォーム」として展開した結果である。

なお、ここで言う「Codex」は、かつてGitHub Copilotの基盤となった自然言語→コード変換モデル(旧Codex)とは別物だ。OpenAI Codexは2025年にリリースされたクラウドベースのAIコーディングエージェントであり、ChatGPTやGitHub Copilotとは独立した、タスクを自律的に実行するエージェント型のプロダクトを指す。

Cult.fitはインドを拠点とするフィットネス企業で、77都市に708カ所のフィットネスセンターを運営し、有料会員数は約100万人に達する。事業が拡大する中、プロセスや組織の複雑化を避けながら課題を解決する手段としてCodexを選択した。

きっかけの一つは社内ダッシュボードソフトウェアのコスト急騰だ。外部SaaSの費用が大きく跳ね上がったタイミングで、1人のエンジニアが週末だけでCodexを使って同等の機能を再構築した。その結果、年間10万ドル超のソフトウェアコストを削減した。この「エンジニア1人・週末・ゼロから再実装」という事実は、AIコーディングエージェントの実用的な威力を端的に示している。

非エンジニア部門への展開も具体的だ。HR部門はCodex上でパフォーマンスレビューの管理ワークフロー(スケジューリング・フィードバック収集・情報集約)を自ら構築した。直近で非エンジニアチームが自作した社内アプリは20本超に上る。

この展開を支えたのは、ツールを配布するだけでなく、組織的な学習機会を整えたことだ。大規模なハッカソンで全社員に可能性を体験させ、管理職向けには1日セッションで自部門の業務に関連するものをCodexで実際に作らせた。エンジニアリングチームは週2回のオフィスアワーを開催し、アイデアを本番投入まで伴走している。

"Codexはデータ民主化に向けた最大の一歩だ。チームが必要な分析を自分たちでできるようになった。"
— Santhosh Kumar(CTO, cult.fit)


エンジニアリング側の標準化

Codex導入前、開発者はコーディングエージェントやアシスタントを各自が個別に使っており、リポジトリの規約や開発ワークフローがツールごとにバラバラだった。これがナレッジ共有や機能の再利用を妨げていた。

Codexを共通基盤として選定し、リポジトリ構造・テスト・コードレビュー・フィードバックループを統一した。その上でより専門的なワークフローも構築している。

  • SREエージェント: オブザーバビリティプラットフォームとログから情報を集約し、インシデントを調査する。多くのケースで修正案のプルリクエストを自動作成するため、障害対応の初動を大幅に短縮できる
  • セキュリティエージェント: コードベース全体を対象に脆弱性を検出・報告し、対処を支援する。人手によるセキュリティレビューの負担を継続的に軽減する役割を担う
  • オンコールエージェント: 本番環境で繰り返し発生する問題を自律的に調査し、担当者の対応を補助する

また、仕様書(スペック)からプルリクエストまでを一貫して導くスペック駆動開発モデルへの移行も進めている。このワークフローでは、エンジニアが詳細な仕様書を作成すると、Codexがそれに沿ってコードを生成・検証し、レビュー可能な状態のプルリクエストを作成する。cult.fitアプリのソーシャルフィード機能は、このワークフローを使って以前なら1年超かかっていたところを2カ月で出荷したという。個々のエージェントの導入にとどまらず、開発プロセス全体をAIと協調する形に再設計している点が、この取り組みの核心といえる。


メンバー体験とカスタマーサポートへの展開

会員向けにはOpenAI APIを使った「AI Trainer」を提供している。cult.fitのジム利用者の45%超が初めてジムに通う人という特性から、個別指導のニーズが高い。現在はGPT Realtimeを使った音声ファーストの体験に進化しており、双方向の音声インタラクションでコーチングキューの提供やワークアウトのログ記録をサポートする。ジムユーザーの約20%がAI Trainerを利用している。

カスタマーサポートでは、グループフィットネスクラスの欠席ペナルティ免除リクエストの処理を自動化した。AIエージェントが当日の天気データやそのクラスの出席パターンなどを確認した上で、ペナルティを免除するかどうかを判断する。既存のサポートプラットフォーム(Sprinklr)に組み込み、カスタマーサポートコストを50%超削減した。


成果まとめ

指標 実績
非エンジニア部門による社内アプリ自作数 20本超
社内ツール再構築による年間コスト削減 10万ドル超
カスタマーサポートコスト削減率 50%超

CTOのSanthosh Kumarは、次のステップとして個別AIワークフローの集合体から「AIが業務の進め方に組み込まれた組織」への移行を目指すと述べている。オペレーション面では「オートパイロット型の運営組織」、会員体験面では「ポケットの中のトレーナー」を目標として掲げている。

詳細はCult.fit builds operational muscle with Codexを参照していただきたい。