11月8日、madrobot.blogが「A US city has banned superintelligent AI, and lifting it would take 95% of its voters」と題した記事を公開した。米インディアナ州ブルーミントン市が超知能AIの配備・利用を全面禁止する条例を全会一致で可決し、解除には登録有権者の95%以上の賛成が必要と定めた前例のない規制について詳しく紹介されている。
解除に有権者95%が必要という異例の設計
インディアナ大学を擁する人口約8万人の大学都市・ブルーミントン市の市議会は、2026年11月4日に条例2026-29(Ordinance 2026-29)を全会一致で可決した。内容はシンプルかつ過激で、市内のいかなる個人・企業も「いかなる目的においても超知能(Superintelligence)を配備・利用してはならない」というものだ。
この条例が特異なのは、禁止そのものより解除条件の厳しさにある。州法が先行して整備されない限り、市議会が条例を廃止するには以下の両方を満たす必要がある。
- 超知能が「99.9999%安全」であるという科学的コンセンサスの確立
- 市の登録有権者の95%以上による承認
通常の条例廃止は単純多数決で足りる。この設計は意図的に撤回を困難にするためのものだ。
条例が禁じる範囲
条例は「超知能」を、「事実上すべての認知タスクにおいてすべての人間を著しく上回る能力を持つ」AGI(汎用人工知能:Artificial General Intelligence)と定義する。さらに、再帰的自己改善型(自身のアルゴリズムを書き換えながら能力を自律的に向上させる設計)のエージェントも対象に含め、具体的には以下の特徴を持つものが規制される。
- 自身のコアアルゴリズムを書き換えられるもの
- サンドボックス外でコードを実行できるもの
- インフラ・金融市場・公共安全に影響しうるタスクを、継続的な人間の監視なしに実行できるもの
適用範囲が広い点も注目点だ。 「市内での配備」は、ブラウザ・アプリ・API・接続デバイスを通じた利用を含む。「サーバーが何千マイル離れた場所にあっても」市内から使えば違反になると明記されている。
違反した場合の罰則は、一般規則に基づき最大2,500ドルの罰金で、違反が続く限り日毎に繰り返し課される。ただし執行は任意であり、市の法務部門や警察が民事制裁や裁判所命令を通じて対応する形だ。
「地方政府が最前線に立つ」
条例を提案したデイブ・ロロ(Dave Rollo)市議は、連邦・州レベルでの規制が存在しない現状を「ガバナンスの空白」と呼び、次のように述べている。
今あるのはガバナンスの空白だ。地方政府が市民を守る最前線に立たなければならない。
ロロ議員の覚書は、ブルーミントンをあくまでひな型(テンプレート)として位置づけている。ブルーミントン程度の規模(人口約8万人)以上の米国都市は約350あり、合計1億人以上が居住する。これらの都市が同様の条例を採択すれば、「超知能を開発する企業に巨大な規制上の負担を与えることになる」と明記している。SAFE AI Forever Instituteなどの非営利団体が他都市への波及を後押しする準備を進めているとも記されている。
これはロロ議員にとって3度目の挑戦だ。2023年に提出したAGIモラトリアムを求める非拘束決議は、インディアナ大学が研究資金への影響を懸念して反対したことで撤回。2026年6月には全会一致で可決した決議でAIの「実存的リスク」に言及し、連邦レベルのモラトリアムを求めている。
現実的な実効性には疑問
地元メディアのB Square Bulletinは厳しい分析を示している。
- 「超知能」に該当するかどうかを判定する基準が条例に存在しない
- 誰が判定するのかも規定されていない
- 市内で誰かが超知能を使ったことをどう検知するかも不明
- インターネット経由で提供されるサービスを市が規制できるかどうか、法的根拠が不明確
- インディアナ州法が95%の住民投票実施を認めているかも不確か
- 将来の市議会が通常の手続きで廃止できないかどうかも未確認
条例の発効には市長ケリー・トムソン(Kerry Thomson)の承認と公布が必要で、11月8日時点では市の条例一覧に掲載されていなかった。
より広い文脈
現時点で禁止の対象となる超知能は存在しない。しかし米国内でのAI規制への圧力は高まりつつある。2026年9月にはバーニー・サンダース上院議員(Bernie Sanders、元記事記載の議員名)とグレッグ・カザル下院議員(同)が、最大20年の禁固刑を設けた超知能禁止法案を連邦議会に提出(AOCも支持)。11月の中間選挙ではAIデータセンター関連の地域住民投票41件のうち40件で反対が多数を占めた。一方ワシントンでは、リークされたAnthropicの草案が州のAI規制を連邦法で無効化する条項を含んでいたことも報じられている。
ブルーミントンの条例は実効性が乏しい可能性が高い。だが、AI規制の空白を埋めようとする地方政府の動きが、シリコンバレーや連邦議会の外にまで広がっていることを示す事例として記録に残る。
詳細はA US city has banned superintelligent AI, and lifting it would take 95% of its votersを参照していただきたい。




