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Deep Dive

AIを利用した悪意ある侵害が前年比56%増——4件に1件がAI起因、平均コストは世界平均を100万ドル上回る600万ドル

7月29日、IBMが「IBM Study: One in Four Malicious Breaches are AI-Enabled, Costing Companies $6 Million on Average」と題したレポートを公開した。悪意ある侵害の4件に1件がAIを利用したものとなり、そのコストは全世界平均を約100万ドル上回る——数字が示す攻防の非対称は、今年のレポートでも際立っている。

7月29日、IBMが「IBM Study: One in Four Malicious Breaches are AI-Enabled, Costing Companies $6 Million on Average」と題したレポートを公開した。悪意ある侵害の4件に1件がAIを利用したものとなり、そのコストは全世界平均を約100万ドル上回る——数字が示す攻防の非対称は、今年のレポートでも際立っている。


AI起因の侵害が前年比56%増——平均コストは600万ドル

IBMが毎年発行する「Cost of a Data Breach Report」の2026年版によると、悪意ある侵害の4件に1件がAIを利用したものであり、前年比で56%増加した。ここで言う「AIを利用した侵害(AI-enabled breaches)」とは、AIツールを攻撃の実行・強化に直接活用した侵害を指し、レポートではディープフェイクによるなりすましとAIを利用したマルウェアの2種類が主な手口として挙げられている。

こうしたAI起因の侵害が企業にもたらすコストは平均600万ドルで、全世界の侵害コスト平均である499万ドルを約100万ドル上回る

本レポートはPonemon Instituteが実施し、IBMが後援・分析したもので、2025年3月から2026年2月にかけて世界602組織が経験した侵害を対象としている。


攻撃コストと防御コストの非対称が拡大

AI起因の侵害の主な手口は、ディープフェイクによるなりすましAIを利用したマルウェアの2種類だ。攻撃側にとってAIは参入コストを大幅に引き下げるツールとして機能している一方、企業の被害額は数百万ドル規模のまま高止まりしている。

IBM SecurityソフトウェアのVPであるSuja Viswesan氏はこの状況を次のように表現している。

「変わったのは、サイバー攻撃の経済性だ。AIにより攻撃はより速く、より安くなっている一方で、侵害のコストは上がり続けている。発見から修復までの時間が長引けば、そのアンバランスがそのまま侵害コストに跳ね返る」

実際、セキュリティ運用にAIと自動化を活用している企業は、侵害コストを平均約200万ドル削減できている。それにもかかわらず、4分の1の組織はいまだこれらのツールを未導入だという。


重要インフラが最も狙われている

AIを活用した攻撃の62%が重要インフラ分野を標的にしていた。特に金融サービスとエネルギーへの集中度が高く、金融サービスの平均侵害コストは630万ドル、エネルギーは520万ドルに上る。これらの分野への攻撃集中は、サプライチェーンや社会インフラへの波及リスクを高める。


AIモデル自体も攻撃対象に

AI活用が広がる中、AIモデルやアプリケーションを直接標的にした侵害を報告した組織が20%超に達している点も見逃せない。主な原因として挙げられたのは、APIやアプリケーション、プラグインの脆弱性(27%)AIワークロードに関わるクラウドの設定ミス(27%)だ。AIシステムの周辺部分が弱点になっているという構図である。


その他の主な調査結果

  • エージェントの活用格差:脅威の検知・封じ込めにエージェントを使う組織は50%超だが、脆弱性管理に適用しているのは**わずか18%**。AIが攻撃のウィンドウを縮めているにもかかわらず、既知の脆弱性が放置されやすい状況が続いている。
  • 暗号化対応の遅れ:侵害を受けた組織のうち、保存データと転送中データの両方で機密情報を暗号化しているのは37%のみ。暗号資産の可視性を持つ組織も**34%**にとどまる。
  • ランサムウェアの手口が変化:ランサムウェアの報告件数は前年の34%から39%に増加。身代金の圧力手段として、業務停止よりもブランド毀損(41%)、従業員データ(35%)、知的財産(31%)の悪用が主流になりつつある。

フロンティアAIへの対応が意識を変えつつある

IBMは本レポートに加え、2026年5月に456組織を対象としたフォローアップ調査を別途実施している。こちらはIBMレポートの調査設計とは独立したもので、高度なフロンティアAI(研究・開発の最前線に位置する大規模AIモデル)のサイバー能力に関する組織の意識と投資意向を測ることを目的としている。

その結果、高度なフロンティアAIのサイバー能力に関する情報を知った後にセキュリティ支出を増やす計画があると答えた組織が**85%に達した。侵害を実際に経験してから支出増を計画するという回答が64%**だったのと対照的で、「実害が出る前に動く」意識への変化が見られる。

なお、回答者の78%(356組織)は、Anthropicが開発した高度なフロンティアモデル「Mythos」に関する最近の報告を認知していたと回答している。MythosはAxiosが報じたAnthropicの研究用AIモデルで、既知のセキュリティ脆弱性を数時間以内にエクスプロイトできる能力を持つとされ、セキュリティ関係者の間で広く注目を集めた。フォローアップ調査はこうした具体的な事例への認知が組織の投資判断にどう影響するかを測るものであり、メインレポートの統計とは出典が異なる点に留意されたい。


詳細はIBM Study: One in Four Malicious Breaches are AI-Enabled, Costing Companies $6 Million on Averageを参照していただきたい。