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Deep Dive

中国AI企業「Moonshot AI」が米中双方の輸出・輸入規制を同時に回避してNvidiaの最新AIチップを調達——「レンタルは合法」という抜け穴と中国当局の黙認が浮き彫りに

7月29日、Bruno Ferreiraが「China's Moonshot AI reportedly used Nvidia Blackwell chips for training Kimi K3」と題した記事を公開した。米国側が輸出を禁じ、中国側が輸入を規制する——その双方向の規制を同時にかいくぐるという前代未聞の構造で、中国のMoonshot AIがNvidiaのBlackwellチップを入手し、最新モデル「Kimi K3」の訓練に使用していたことが明らかになった。

7月29日、Bruno Ferreiraが「China's Moonshot AI reportedly used Nvidia Blackwell chips for training Kimi K3」と題した記事を公開した。米国側が輸出を禁じ、中国側が輸入を規制する——その双方向の規制を同時にかいくぐるという前代未聞の構造で、中国のMoonshot AIがNvidiaのBlackwellチップを入手し、最新モデル「Kimi K3」の訓練に使用していたことが明らかになった。


輸出規制も輸入規制も回避——二重の抜け穴

米国政府はNvidiaのBlackwellチップ(現行世代のAI向けGPUアーキテクチャ)の中国向け販売を禁じている。一方、中国側も自国のAIチップ産業育成を目的として、Blackwellの輸入を規制している。つまり、米中の双方向で取引が封じられた状態だ。

それでもMoonshot AIはBlackwellを使ってKimi K3を訓練したと、The Informationが複数の関係者の証言をもとに報じた。手口は次の通りだ。同社は、それぞれのデータセンターにBlackwellチップを保有する中国企業2社を利用した。ただし両社ともチップの保有数が十分でなかったため、Moonshotは複数の8チップ構成Blackwellサーバーをデータセンターをまたいでつなぎ、Kimi K3の訓練に必要な計算リソースを確保したという。複数拠点にまたがるGPUクラスターを単一の訓練ジョブとして機能させるには、ノード間の通信レイテンシや帯域幅の制約を克服する高度なネットワーク構成が求められる。この種の分散訓練技術は、大規模モデル開発の最前線における実装上の難所のひとつとして知られている。

レンタルは合法——ただし法整備が追いかける

ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のMichael Kratsios局長は先週、Moonshot AIがGB300(BlackwellアーキテクチャのNvidia製サーバーグレードチップ)搭載サーバーを購入し、さらにタイ国内のGB300にもアクセスしているとXに投稿した。

ここで重要なのは、チップの購入は違法だが、レンタル(リモートアクセス)は現時点では合法という抜け穴の存在だ。この穴を塞ぐべく、米国では「Remote Access Security Act(リモートアクセス安全保障法)」が提案されており、リモートアクセスを輸出行為とみなして規制対象にすることを目指している。ただし、他国の管轄下での執行をどう実現するかは未解決のままだ。

米商務省は現在、中国企業がBlackwellなどの高度な米国製チップにアクセスしているかどうかを正式に調査中である。

推論はH20、訓練はBlackwell——役割の使い分け

推論(学習済みモデルを動かす処理)については、Moonshotは中国市場向けに販売が許可されているNvidia HGX H20を使用していると報じられた。H20は輸出規制の対象外であり、米中どちらの法律にも抵触しない。Kimi K3の実行には最低64基のH20 GPUを推奨しているとのことで、その要件の重さからMoonshotの計算リソースはすぐに枯渇し、現在サブスクリプションはウェイティングリストの状態だという。

一方でKimi K3はオープンウェイト(重みが公開されたモデル)として今週リリースされており、他の推論プロバイダーが提供を始めているため、このボトルネックは緩和される見込みだ。

中国AI産業の現状——自国チップでは追いつけない

ある中国大手テック企業のモデル訓練研究者は、Kimi K3が「中国AI業界に新たな軍備競争を引き起こした」と述べている。同研究者によれば、自国製AIチップ(国産アクセラレータ)は現在もNvidiaの現行製品から1〜2世代遅れており、バックオーダーも数ヶ月分積み上がっている状態だ。フロンティアモデル(最前線の大規模モデル)の訓練は、国産チップでは困難か不可能であるという。

こうした状況を踏まえると、Moonshot AIによるBlackwellの調達は単なる規制回避にとどまらず、国産チップでは埋めようのない性能ギャップを補うための実利的な選択でもあったと読める。Kimi K3がどの程度のベンチマーク性能を示したかは本記事の元情報では詳述されていないが、中国国内に「軍備競争」と評される反響を引き起こしたという証言は、その競争力の一端を示唆している。

中国当局の"見て見ぬふり"

中国国内では、多くのAI企業がBlackwellをはじめとする高度なチップを保有・アクセスしていることは公然の秘密だという。貿易規制や国産チップ利用の推進にもかかわらず、中国共産党はAIプレイヤーへの取り締まりを事実上行っていない。Moonshot AIのような企業がAnthropicやOpenAIに追いつけるよう意図的に見逃しているとの見方もある。米中双方の規制がいずれも実効性を欠いた状態で併存しているという現実は、ルール形成と執行の両面で国際的な課題を突きつけている。


詳細はChina's Moonshot AI reportedly used Nvidia Blackwell chips for training Kimi K3を参照していただきたい。