8月28日、AWSが「Build agentic creative workflows with Amazon Quick and fal」と題した記事を公開した。この記事では、Amazon QuickとfalをMCP(Model Context Protocol)で接続し、ストーリーボード制作やミュージックビデオのコンセプト試作をエージェント型ワークフローで自動化する手法について詳しく紹介されている。
背景:クリエイティブ現場の「断片化」問題
クリエイティブチームが直面する課題は、生成速度だけではない。スクリプト、参照画像、モデル、出力結果がツール間に散在し、コンテキストの手動転送と結果の組み立てが繰り返し発生する。記事では、需要がチームのキャパシティを超えている現状が指摘されており、生成を速くするだけでは根本的な解決にならないとされている。
この課題に対する解として提示されているのが、コンテキストを保持し、長時間の処理ジョブを支援し、重要な承認ポイントで人間のレビューを挟める「エージェントハーネス」の構成だ。
構成要素:4層のアーキテクチャ
このワークフローは以下の4つのレイヤーで構成される。
- Amazon Quick — エージェントワークスペース兼オーケストレーター。クリエイターのリクエストを解釈し、作業を計画・実行する。なお、本記事ではAWS公式ブログがAmazon Quickとして紹介しているサービスをそのまま記載しているが、既存のAmazon Q DeveloperやAmazon Q BusinessといったAmazon Qシリーズとの位置付けについては、元記事内で明示的な区別がなされていない。読者は公式ドキュメントで最新情報を確認することを推奨する
- Skills — 繰り返し可能なプロセスをワークフロー指示としてエンコードした再利用可能な設定。「キャラクターデザイン確定前にパネル生成しない」といったルールをSkillに書いておける
- MCP(Model Context Protocol) — AIアプリケーションと外部ツールを統一インターフェースで接続するオープン標準
- fal — 画像・動画・音声・3Dなど1,000以上のモデルをAPIで提供する生成メディアプラットフォーム。MCPサーバーを公開しており、Amazon QuickのMCPクライアントから直接呼び出せる。falはAWSのサードパーティパートナーであり、今回の構成はAWS公式ブログ上で紹介されているが、falのサービス自体はAWSが直接提供するものではない点に留意が必要だ
接続のセットアップ自体は単純で、Amazon QuickのDesktopアプリから「Add MCP Server: Remote」を選択し、URLにhttps://mcp.fal.ai/mcp、ヘッダーにfal APIキーを設定するだけだ。
ワークフロー1:8パネルのストーリーボード制作
最も具体的で実装イメージが湧くのがこのワークフローだ。マーケティングチームが製品ローンチ用のストーリーボードを作る想定で、従来なら複数回のフィードバックサイクルを要するブリーフ→デザイナー→レビューというプロセスを、1つのインタラクティブセッションに収める。
プロンプトの例として記事に掲載されているのは以下だ:
"Create an 8-panel storyboard for a futuristic racing-prototype launch.
Use an anime style and comic-grid layout. The story follows a young racer
from pre-test preparation and the prototype reveal through a high-speed test drive.
Follow this sequence:
1. Lock the creative direction: Confirm the art style, comic-grid format,
aspect ratio, and restrictions.
2. Approve the story plan: Draft eight story beats, a shot list, and the
character description.
3. Lock the character design: After approval, inspect the available fal models
and generate two labeled character options for comparison. Once I select one,
create its multi-view reference sheet and wait for approval before generating
storyboard panels."
フローの特徴は承認ゲートの設計にある。
- スタイル・フォーマット・ストーリーの確定 — この段階では画像を生成しない。テキストベースの8ビートアウトライン、ショットリスト、キャラクター説明のみ
- A/Bキャラクターデザイン比較 — 2つのモデルが生成したキャラクター案を並べてクリエイターが選択。承認なしに次へ進まない
- マルチアングルの参照シート作成 — 前後・複数ポーズ・クローズアップのキャラクター参照を生成し、以降のすべてのパネル生成に渡す
- 参照ガイドによるパネル生成 — **FLUX.1 Kontext**を使い、承認済みキャラクター参照をすべてのパネル生成呼び出しに渡すことで、シーン間のキャラクターの外見一貫性を維持する
この「承認なしに次のフェーズに進まない」設計が、コンテキスト保持と品質管理の両立につながっている。
Skillへの変換と共有
ワークフローを検証したあと、クリエイターはその会話内容から「AI Storybuilding Skill」を生成するようQuickに依頼できる。Skillはチームメンバー間で共有でき、同じ承認ゲートを持つプロセスを別の人間が再実行できる。キャンペーンごとにゼロから組み立て直す必要がなくなる。
ワークフロー2:ミュージックビデオのコンセプト試作
2つ目のワークフローは、保存済みSkillを再利用する例だ。「60秒のカントリーミュージックビデオのコンセプト制作」という1文の指示からスタートし、Quickはショットプランの作成、falの音声モデルによる楽曲生成、キャラクター参照の作成、リップシンクテスト動画の生成まで一連の流れを実行する。
本番の完全動画を生成する前に短いリップシンクパフォーマンスクリップを先に出力し、顔の動き・タイミング・品質を確認するフェーズが設けられている点が実用的だ。検証済みの素材だけを使って長尺のコンセプトプレビューに発展させる構成になっている。
運用上の注意点
記事では以下の点が明記されている。
- 透過・ロスレス品質が不要な場合はJPEG出力を優先する(MCP経由の転送データ量を削減できる)
- 生成処理の多いワークフローではfalの利用コストと使用量を監視し、承認済みアセットは外部に保存してバッチ処理する
- fal APIキーはコネクター設定のみに保持し、プロンプト・ファイル・スクリーンショット・ログには含めない。falはサードパーティサービスであるため、組織のデータ取り扱いポリシーに従い、出力を共有前にレビューする
詳細はBuild agentic creative workflows with Amazon Quick and falを参照していただきたい。




