9月3日、Crunchbaseが「Former Apple Engineers' Physical AI Startup Lyte Raises $165M At $1.6B Valuation」と題した記事を公開した。元Apple技術者3名が設立したPhysical AIスタートアップ「Lyte」がシリーズCで1億6500万ドルを調達し、評価額16億ドルに達したことを報じている。
Face IDの父たちが、ロボットの「目」を作る
Lyteの共同創業者3名——Alexander Shpunt、Arman Hajati、Yuval Gerson——は、いずれもAppleで先進センシング・知覚技術を担当した元エンジニアだ。
中でも注目すべき経歴を持つのがCEOのShpuntである。彼はAppleによる買収前、3DセンシングスタートアップのPrimeSenseを共同創業していた。PrimeSenseの技術はMicrosoftのKinectを動かしていたものであり、Appleは2013年にPrimeSenseを買収し、その技術をFace IDの基盤として取り込んだ(なお、買収完了の時期については2013年末から2014年初頭にかけてとも報告されており、元記事では「2013年」と記載されている)。
つまり、スマートフォンに3D顔認証を持ち込んだチームが、今度はロボットの知覚システムを構築しているという構図だ。
何を作っているのか
Lyteはカスタムシリコン、4Dセンシング、RGB、モーションアウェアネス、AIソフトウェアを組み合わせ、ロボットが「自分の位置」と「周囲の動き」をリアルタイムに把握するための知覚基盤を開発している。
ここで言う「4Dセンシング」とは、3次元空間(X・Y・Z軸)に時間軸を加えた4次元的な認識技術を指す。物体の位置だけでなく、その動きの変化を時系列で捉えることで、ロボットが動的な環境にリアルタイムで対応できるようになる。現時点での主な顧客は倉庫・製造業向けだ。
Shpuntはメールでこう述べている。
「Physical AIは全く新しいカテゴリのロボットを生み出す。そのすべてが、周囲の世界を理解する必要がある。それには新しい種類の知覚が求められる——機械が行動の根拠にできるほど精密でリアルタイムなジオメトリとモーションの理解だ。私たちはLyteを、その未来の知覚基盤にするために作った。」
同社は2021年創業、カリフォルニア州サニーベール拠点。今年初めまでステルス運営を続けており、表に出てきた際にはすでにシリーズAとBで1億700万ドルを調達済みだったことを公表している。
資金調達の規模と背景
今回のシリーズCはMaverick Siliconがリードし、フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ(シリーズBリード)、Atreides Management、Key1 Capital、Ora Global(旧Exor Ventures)などが参加。過去のシリーズA・Bで調達した1億700万ドルと今回の1億6500万ドルを合わせた累計調達額(今回分を含む累計)は2億7200万ドルに達した。
Maverick SiliconのマネージングパートナーAndrew HomanはLyteの取締役に加わり、次のようにコメントしている。
「Lyteは幅広いロボットが世界を知覚・理解できるようにする基盤的なセンシングプラットフォームを構築している。初期顧客の需要の幅と多様性が、Lyteがロボティクス時代を定義する企業の一つになるという確信を強めている。」
Physical AIへの投資熱
この調達はPhysical AI分野全体の過熱を背景にしている。Crunchbaseのデータによれば、2026年上半期のグローバルベンチャー投資額は約32億ドル(521件)に上り、2025年下半期の約4倍、2025年上半期比でも約80%増という急拡大が続いている。
Physical AIとは、ロボティクス・自律移動体・製造自動化など、デジタルではなく物理世界で動作するAIシステムを指す。LLM(大規模言語モデル)ブームを経て、次の主戦場として資金が集中している領域だ。Lyteが手がける知覚基盤は、こうしたPhysical AIシステムが実世界で安全かつ正確に動作するための根幹技術に位置づけられる。
詳細はFormer Apple Engineers' Physical AI Startup Lyte Raises $165M At $1.6B Valuationを参照していただきたい。




