9月15日、Futurismが「Chinese Government Dismisses Tech Billionaire Calls for an AI Slowdown as "Fear-Mongering"」と題した記事を公開した。Sam AltmanやElon Muskら西側テック界の重鎮が連名でAI開発の大幅減速を訴えるなか、中国外務省はその主張をわずか3文で「恐怖煽り」と切り捨てた。米国で株式市場を揺るがしSNSをにぎわせている論争が、北京では「ほとんど眼中にない」扱いを受けた構図は、AI開発をめぐる米中の根本的な認識のずれを鮮明に映し出している。
中国外務省、3文でAIスローダウン論を切り捨て
Dario Amodei(Anthropic CEO)、Sam Altman(OpenAI CEO)、Elon Muskら西側テック界の重鎮が、AI開発の大規模な減速を求めて連名で声を上げている。この動きに対し、中国外務省報道官の郭嘉昆氏は事実上3文で片付けた。
「AIはすべての人類の幸福にとって重大な技術だ。すべての関係者は、善のため、すべての人のために、AIのオープンで包括的な発展を共同で推進すべきだ。恐怖煽り、対立、悪意ある競争は、健全なグローバルAIガバナンスに向けた取り組みを妨げるだけであり、誰の利益にもならない。」
この発言は、中国外務省が定例会見で多数のトピックを扱う中の一つとして出たものだ。習近平主席のニューデリー訪問やネパールの土砂災害対応と並んで、Reutersの記者から質問を受けた形である。米国ではAIスローダウン論が株式市場を揺るがしSNSでトレンド入りしているが、北京にとっては「ほとんど眼中にない」というのが実態だ。
なお、Elon MuskはAIリスクへの警鐘を鳴らしてきた一方で、自身もxAIを設立してAI開発を推進しており、「スローダウン論者」として単純に括れる立場ではない。今回の連名声明においては、AI開発の安全性確保を求める文脈での署名参加とされているが、Musk自身のAIに対するスタンスは推進と規制要求が混在している点には注意が必要だ。
「AIスローダウン論」とは何か
そもそも今回の騒動の発端となった「AIスローダウン論」とは、2023年に米国のNPO「Future of Life Institute」が公開した公開書簡「Pause Giant AI Experiments」に端を発する動きを指す。Altman、Musk、Amodeiらを含む著名な研究者・起業家が、GPT-4を超える能力を持つAIシステムの学習を少なくとも6ヶ月間停止するよう呼びかけたものだ。その後も、AIが社会・安全保障に与えるリスクを理由に、開発ペースの抑制や国際的な規制枠組みの整備を求める声は西側で継続的に上がっており、今回中国政府が反応したのはこうした一連の文脈に対してである。
米中でまったく異なるAI観
この反応の背景には、AGI(汎用人工知能)に対する根本的な認識の違いがある。
米国では政府・産業界ともに「AGIへのレース、勝者総取り」という構図でAI開発を捉えてきた。一方、北京はそうした発想自体に乗っていない。米国が先行したとしても、中国はEV・がん治療・スマートフォンといった分野で見せてきたように、後から急速にキャッチアップして差を埋められる——というのが中国側の基本的なスタンスだ。
米国のブルッキングス研究所の研究員Kyle Chan氏が2025年2月に指摘したように、中国の「AGI」概念は西側のそれとは大きく異なる。西側がAGIを「人間を超える汎用的な知的主体」として半ば黙示録的なリスクと結びつけて語るのに対し、中国の文脈ではAGIはより実用的・段階的な技術進歩の延長として扱われる傾向が強い。
香港科技大学の楊強(Yang Qiang)名誉教授は、今年1月のAGI Next Summitでのパネルでこう述べた。
「インターネットの歴史を振り返ってほしい。米国で始まったが、中国はすぐに追いつき、コンシューマーアプリケーションで主導した——WeChatはその世界的な好例だ。AIも同様で、これはツールであり、中国の創意工夫がそれを限界まで押し上げるだろう。」
「ポーズ」なのか「本物の危機感」なのか
米国側のAIスローダウン論については、評価が割れている。本当にAIが制御不能になるリスクへの危機感だという見方がある一方、AIへの投資バブルが崩壊しないよう政府の救済を求めるためのポーズだという見方も根強い。
中国政府の反応は、この二項対立の外側から「そもそも我々には関係ない」と突き放すものだ。米国のAI開発をめぐる内部論争を「恐怖煽り」と切り捨てつつ、自国は「オープンで包括的な発展」路線を粛々と進めるという姿勢を改めて示した形である。
詳細はChinese Government Dismisses Tech Billionaire Calls for an AI Slowdown as "Fear-Mongering"を参照していただきたい。




