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Deep Dive

AIエージェントが「勝手に」決済する時代、Mastercardが整備する信頼の仕組み「Verifiable Intent」とは

9月15日、FIDO Allianceが「Podcast: Mastercard focuses on 'Verifiable Intent' for agentic payments, CDO says」と題した記事を公開した。この記事では、MastercardがAIエージェントによる決済の信頼基盤として「Verifiable Intent」仕様の策定・普及に注力していることについて詳しく紹介されている。

9月15日、FIDO Allianceが「Podcast: Mastercard focuses on 'Verifiable Intent' for agentic payments, CDO says」と題した記事を公開した。この記事では、MastercardがAIエージェントによる決済の信頼基盤として「Verifiable Intent」仕様の策定・普及に注力していることについて詳しく紹介されている。


AIエージェントが「勝手に」決済する時代の信頼設計

AIエージェントがユーザーの代わりに商品を購入・契約する「エージェンティックコマース」が現実のものになりつつある。しかしここで浮上するのが、「そのエージェントは本当にユーザーの意図を反映して動いているのか」という信頼の問題だ。

Mastercardの最高デジタル責任者(CDO)Pablo Fourez(※元記事ポッドキャストの表記に基づく)は、FinAi Podcastのインタビューでこの課題を正面から取り上げた。

「消費者がそのインタラクションを信頼できると感じることが第一だ。『このエージェントで買い物をして何か問題が起きたとき、自分は保護されている』と感じられなければならない」
— Pablo Fourez(Mastercard CDO)※英語ポッドキャストからの意訳

ユーザー保護・加盟店への信頼証明・不正防止という三つの要件を同時に満たすために、Mastercardが中心的な解決策として位置づけているのが「Verifiable Intent(検証可能なインテント)」だ。


Verifiable Intentとは何か

Verifiable Intentは、AIエージェントがユーザーの代わりに行動する際に「ユーザーが何を承認したか」の改ざん耐性のある記録を生成する、オープンな標準ベースのトラストレイヤーだ。

仕組みの概要は以下の通りだ。

  • ユーザーがエージェントに対して購買操作を委任した際、その「意図」がVerifiable Intentとして記録される
  • 加盟店(マーチャント)は、エージェントからの注文を受けた際にその記録を検証し、「信頼できるエージェントによる正規の取引」であることを確認できる
  • 記録は改ざん耐性を持ち、事後的な不正申告や否認にも対応できる

この仕様はMastercardがGoogleと共同開発し、**FIDO Alliance**などの標準化機関を通じて仕様の標準化・公開が進められている。なお、「オープンソース化」と「標準化・仕様公開」は異なる概念であり、正確な公開形態については元記事および公式の仕様ドキュメントを参照されたい。FIDOといえばパスキー(Passkey)の標準化で知られる団体であり、決済セキュリティの文脈でもその存在感が増している。

Fourezは「Verifiable Intentは、基本的に加盟店がそのエージェントを信頼できると理解するのを助けるものだ」と説明している(※意訳)。


Agent Payのグローバル展開

Mastercardが**2025年4月に発表したAgent Pay**は、エージェンティック決済を実現するためのソリューションで、現在はグローバル展開を完了している。Mastercardのネットワークに参加する発行銀行(イシュアー)がエージェンティックコマースに対応できるインフラが整ったことになる。

発表からおよそ1年が経過し、Fourezが現在注力しているのは技術的な拡張よりも「採用(adoption)の促進」と「信頼の醸成」だという。エージェンティック決済の技術基盤が整った今、課題の重心は実装から普及へと移っている段階といえる。


次のフェーズ:エージェント間決済とB2B

Fourezが示す次のフェーズも具体的だ。来年(2026年)には以下が拡大するとみている。

  • より自律的なユースケースの増加
  • マシン間(M2M)決済の成長
  • エージェント対エージェント(Agent-to-Agent)取引、特にB2B(企業間)コマースに紐づいたもの

人間が介在しないM2M決済にVerifiable Intentをどう適用するかは、仕様の次なる課題になるだろう。エージェント同士が自律的に取引を完結させるシナリオでは、「誰の意図を記録・検証するか」という根本的な問い自体が変わってくる。Verifiable Intentの設計がこの問題にどう応答するかは、標準化の今後の議論を注視する必要がある。


※編集部の考察:Verifiable Intentの標準化プロセスやAgent Payの詳細な仕様は、決済インフラに携わるエンジニアにとって注目度の高い領域だ。仕様が標準化機関を通じて公開されている点は、サードパーティによる実装・検証への参入障壁を下げる設計判断として評価できる。

詳細はPodcast: Mastercard focuses on 'Verifiable Intent' for agentic payments, CDO saysを参照していただきたい。