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Deep Dive

「3体以上の並列エージェントは品質向上ゼロのままコストだけ増える」— OpenAI Codex開発者が$20,000浪費の実例とともに警告

9月17日、Matthias Bastianが「AI agent swarms are a massive waste of tokens with zero quality gain, says OpenAI Codex developer」と題した記事を公開した。OpenAI Codexの開発者がマルチエージェント並列実行の非効率性を実データとともに指摘した内容で、エージェント型アーキテクチャの設計に携わるエンジニアには見過ごせない警告が含まれている。

9月17日、Matthias Bastianが「AI agent swarms are a massive waste of tokens with zero quality gain, says OpenAI Codex developer」と題した記事を公開した。OpenAI Codexの開発者がマルチエージェント並列実行の非効率性を実データとともに指摘した内容で、エージェント型アーキテクチャの設計に携わるエンジニアには見過ごせない警告が含まれている。


「2つ以上の並列サブエージェントはほぼ常に無駄」

OpenAIでCodexの開発に携わるEric Provencherが、Xへの投稿でエージェント型ワークフローにおけるトークン消費の問題を警告している。彼の主張は明快だ。並列サブエージェントを3つ以上動かすと、品質向上ゼロのままトークンだけが燃え続ける

エージェント同士は互いの出力を信頼しないため、「全員の宿題を二重チェックする」状態に陥る。Provencherはこれを「コーディネーション税(coordination tax)」と呼ぶ。並列レーンを多く維持しようとするほど、過剰な検証処理でトークンが消えていくという構造的な問題だ。

なお「コーディネーション税」はProvencherが元記事中で実際に使った表現であり、本記事でもその訳語を踏襲している。


マルチエージェントブームの背景

マルチエージェントシステムへの注目は2024年以降に急速に高まっており、LangGraphAutoGenなど複数エージェントを協調させるフレームワークが相次いで登場した。並列化による高速処理と複雑タスクの分割統治という発想は理にかなっているように見え、多くのプロダクトがエージェントスウォーム(大量エージェントの群れ)型アーキテクチャを採用し始めている。

Provencherが警告を発したOpenAI Codexは、OpenAIが提供するクラウドベースのコーディングエージェント環境であり、バックグラウンドでのタスク並列実行を特徴の一つとしている。その開発者自身が「並列化には限界がある」と指摘している点は、業界的にも重みを持つ。


$20,000を溶かした事例が示す現実

この議論に火をつけたのが、ある実験プロジェクトだ。1,393体のFableエージェントを使って単一のPythonファイルをリファクタリングするのに、トークン費用として2万ドル(約300万円)を費やしたという事例が浮上した。この事例はNous Researchが公開したブログ記事(Refactoring Hermes with 1393 Agents)で詳述されており、元記事もこれを出典として引用している。

これに対してProvencherは、「単一のAstraエージェントなら、その何分の一かのコストで同じことができた」とコメントしている。ここで言う「Astra」はOpenAIの内部エージェント実装を指すとみられるが、元記事では詳細が明示されておらず、Google DeepMindが開発するProject Astraとは別物である点に注意が必要だ。エージェントスウォームは確かに処理時間を短縮できる場面もあるが、トークンコストの観点では「罠」だとProvencherは言い切る。


なぜ無駄が生まれるか

Provencherが指摘するトークン浪費の主な原因は以下だ。

  • サブエージェントへのシステムプロンプトの積み重なり:エージェントを増やすほど、各エージェントへのシステムプロンプトのコストも比例して増える
  • コンテキスト不足による重複ツール呼び出し:十分なコンテキストを持たないサブエージェントが、他のエージェントがすでに実行した処理を再実行してしまう
  • 常時ポーリング:メインエージェントがサブエージェントの状態を頻繁に確認し続けることで、無駄なトークン消費が発生する

Provencherが示す改善の方向性

具体的な対策として、Provencherはタスクを独立したスレッドに委譲し、完了時のみメインエージェントに通知する設計を勧めている。常時ポーリングをやめて、イベント駆動的な通知に切り替えることで、無駄なトークン消費を抑えられるという考え方だ。

一方で彼は、OpenAI自身がこの領域でより良いソリューションを提供する必要があると認めており、現時点での解決策が十分ではないことも率直に認めている。


エンジニアへの示唆

マルチエージェントシステムは、並列化による高速化という魅力から採用が増えている。しかし、APIコストが直接収益に響くプロダクション環境では、エージェント数の増加がそのままコスト爆発につながるリスクがある。

Codexの開発者本人が「3つ以上の並列サブエージェントは品質向上に寄与しない」と明言している点は、設計判断における重要な根拠になりうる。スウォーム型アーキテクチャの採用を検討している場合は、トークン消費の実測値を事前に確認することが不可欠だろう。


詳細はAI agent swarms are a massive waste of tokens with zero quality gain, says OpenAI Codex developerを参照していただきたい。